一人の昼食
人で溢れかえる昼間の学食のど真ん中。
ようやっと席を確保した私は一人うどんを啜る。
周囲はみんな集団で食事をとっている。
高校までも一人で過ごしてきたので違和感はないが、なんだか肩身が狭い。
とはいえ、今更友達の作り方もわからず日々こんな感じだ。
なんだか手持ち無沙汰だった私はスマホを取り出すと、メッセージを送ってみる。
『レベッカの次の衣装に取りかかろうと思っているんです。』
そう送って、画面を消して横に置きまたうどんを啜る。
私と違い、向こうは明るく優しい人だ。
たくさんの人に囲まれて食事をしているかもしれない。
もしくはモデルのお仕事をしてるかも。
そんなことを思っていると、スマホの画面が点灯する。
麗香さんからだ。私は急いで端を置く。
『良いですね!どのイベントの時の衣装ですか?』
『冬のイベントの時の衣装にしようかなと。今メッセージ大丈夫でしたか?』
『あー、誘拐イベントのときの。素敵ですよね。大丈夫ですよ!今お仕事の合間にご飯食べながらゆっくりしてたところでした。』
『ただ下半身が映ってるシーンがなくてイマイチわからないんですよね。私もご飯食べてるところでした。』
『あのシーンは領主代理って立場ですし、上と合わせるなら…ちょっと待ってくださいね。私はいただいた仕出し弁当食べてます!肉だんご美味しいです。』
そうして待っていると、一枚の画像が送られてくる。
どうやら手書きのイラストの様だ。
『こんな感じになると思うんですけど…わかります?』
話の流れ的にこれは…ボトムスなのかな?
ん、んー?
ごめんなさい、麗香さん。
私には難しい…
『これはフレアスカートですか??』
『ストレートパンツです。上手くかけたと思ったんですけどね。』
『ごめんなさい、私の理解力が足りてないみたいです…。』
これはストレートパンツなのか…?
『レベッカは性格的に動きやすいのを好むはずなので、パンツスタイルだと思うんですよ。』
『そんな気はしますね。』
『領主代理ということは、男性風の出で立ちのが都合が良さそうなので、男っぽく見えやすいストレートなのかなと。』
『はいはい、なるほど。』
『で、上の服装と合わせるとカラーは… ここに家紋の意匠が…』
私はペンと紙を取りだし、麗香さんの言うままにペンを走らせていく。
彼女の言うことを反映させていくとこんな感じだろうか。
『描いてみました。こうですかね?』
『まさしくそれです!すごい絵が上手いんですね!?』
『そうですかね?ありがとうございます。』
『私の想像なんで、□□さんの解釈とは違うかもしれないんですけど…どうでしょう?』
『いや、とても参考になります。これベースに作ってみようかと。』
『ほんとですか!?楽しみにしてます!』
私は早速必要な素材を頭に思い浮かべる。
デザインはそこまで奇抜な物ではないので、似たものに飾り付けしていくのがいいだろうか。
考えこんでいるとまたスマホに通知が入る。
『では頑張ってくださいね!私もお仕事頑張ってきます!』
実は忙しい中時間を取ってくれたりするのだろうか?
肉だんごは食べきったのだろうか。
先日みたいに肉だんごを幸せそうに頬張る麗香さんを思い浮かべて、少しクスりとなる。
そうだ、私もうどん食べかけだった。
私は慌ててうどんをすする。
伸びきったうどんが、なぜだか先ほどより美味しく感じられた気がした。




