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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部一章 運命
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食べ放題はいいもの その3

「良ければレベッカの話についてもっと聞かせてくれませんか?」


始まりはこの一言だった。

オタクに推しについて聞かせて欲しいと言うのは禁句だ。

話し始めたら止まらずひたすら語ってしまうからだ。

例に漏れず、私も長々と推し語りを始めてしまう。

ふつうならそこで嫌な顔の一つでもされて少し落ち着いて話を止めるのだが、麗香さんは本当に楽しそうに聞いてくれるので歯止めが利かない。

食べ放題ラストオーダーのアラームがタブレットから鳴り、初めて少し落ち着く。


「□□さん、デザートどれにします?」

「えっと…」 


麗香さんはニコニコとデザートの欄を開いてタブレットをこちらに向けてくれる。

プリンが良いな、プリンにしよう。


「なんか長々と語ってすいません。」

「楽しかったですよ?またゆっくり聞かせてください。」


本心からかはわからないが、麗香さんは本当に良い人だと思う。


「こう言ったら怒られちゃうかもしれませんが、私とレベッカって顔はよく似てると思うんです。」

「ええ、そうですね。」


一応私の推しともあって控え目な言い方をしてくれる。

だが事実そうだし、何なら少し重ねて見てしまってるくらいだ。


「だからその、コスプレするとなんだか私が本当にレベッカみたいになったみたいで楽しくて…」

「なるほど。」


コスプレはキャラになりきれるのが楽しさの一つだ。

ましてや再現度が高ければそれはとても楽しい。

撮っている側も楽しくなれる。

麗香さんに頼んで良かったなと思っているくらいだ。


「□□さんの作った衣装もとても出来が良かったじゃないですか。すごいなって。」

「いや、自分で見ると悪いとこばっかり見えますよ…」

「そんなことないです!」


麗香さんは目をきらきらさせながらこちらをみる。

むしろ麗香さんの再現度に対して私の衣装がついてけてないくらいなのだが。


「それで、良かったらまた着せてもらいたいなって。ご迷惑じゃなければなんですけど…。」


麗香さんは少し気兼ねするように言い出す。

もちろん歓迎だ。私も色々と推し活が捗る。


「構いませんよ。まだまだ作りたいレベッカの服があるんですが、どんどん麗香さんサイズで作って良いですか?」

「もちろんです!あ、材料費とかって…」

「いいですいいです。そのかわりまたいろんなシチュエーションで写真とか撮らせてくれると…」

「良いですね!是非!」


そうしてキャッキャワイワイと盛り上がっているところにデザートが運ばれてくる。

プリンに口をつける。焼いてあり、ちょっとあたたかい。

しまった、温かいものを食べた後だから冷たいものにすれば良かったなと食べてから思う。

麗香さんの食べるパフェのソフトクリームが魅力的に見える。


「ん?ふふ。冷たいもの食べたくなりますよね。わかります。」

「そうなんですよ。プリンも冷やして出てくると思ったらむしろあったかくて。」

「はい、どうぞ。」


麗香さんはスプーンでソフトクリームを掬うと、こちらに向けてすっと差し出す。

これは、どうしたらいいんだ?スプーンを受け取るのか? 

まさかあーんっていうわけでは…

 

「えっと…」

「あーん」

「え、え…」

「あーん」

「あーん…」


麗香さんの圧にやられておずおずと口を開ける。

冷たい。美味しい。


「美味しいですか?」

「え、ええ。」

「ふふ、良かった。」


麗香さんは嬉しそうに笑う。

私は戸惑いと照れくささが強い。

なんだかプリンの味が解らなくなったような気がした。


◆ ◇ ◆ ◇


「美味しかったですね。」

「あの、お金、払います。」


私も料金を払おうと決めていたのに、麗香さんは席を立つとそのまま店外へ出て行く。

どうやら、御手洗いにたった時についでに会計を済ませてきたようだ。

私は財布を出すタイミングがなく焦る。


「お誘いしたのは私ですし。」

「でも、さすがに…」

「じゃあ、今日のは依頼じゃなくてプライベートな奴ってことで一つ。プライベートで写真を撮って、依頼料じゃなく□□さんが私の焼き肉代を出してくれた。それで良いじゃないですか。」

「良いんですか…?」

「良いんですよ。」


そう言うと麗香さんはまた私の手をとる。


「どうやって帰られるんですか?」

「えっと…電車で…」

「でしたら駅までお送りしますね。」


そういうと麗香さんは歩き始める。

なんだかぐいぐい来るなぁ、これがモデルとか明るい業界のノリなのだろうか…

そんなことを思いながらも、不思議と嫌な気持ちにはならないのだった。






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