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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
10万pv記念 二部一章 運命
156/321

事の始まり その1

新章になります。遅くなって申し訳ありませんでした。

しばらくの間、毎日21時更新でやっていければと思います。


新章はとある年末年始編の世界線のお話になります。まだとある年末年始編を未読の方はそちらから読んでいただければ。


麗華視点です。


この出会いは、運命なんかじゃなかった。


◆ ◇ ◆ ◇


「よし、オッケーです!撮影お疲れ様でした!」

「そちらもお疲れ様でした。またよろしくお願いします。」


私はポーズを解き、帰り支度を始める。


「麗香ちゃん、次の撮影なんだけど…この日とかどう?。」

「ちょっと待ってくださいね。…この時間なら授業がないので大丈夫ですよ。」

「じゃあ、それでお願い!」

「解りました。」


違う世界のリシアを幸せにするため転生して、二十年。

私は日本という国で、ファッションモデルになっていた。


◆ ◇ ◆ ◇


初めて私がレベッカ・ローエンリンデであったということ、そして何故この世界に来たのかということを思い出したのは、10歳の頃だったと思う。

その頃、私は親のない子として施設で育てられていた。

世間一般的に不遇とされるようなことはなく、施設では大変良くしてもらっており、この世界にも慣れてきはじめたタイミングだった。

前の世界と今の世界は大きく文明が違う。だから、おそらく意図してこのタイミングになったのだと思う。

だが、目的を思い出したのは良いが、肝心のこの世でのリシアに関する情報を一切持ち合わせていない。

いや、正確には私は知っているはずなのだ。この世に転生させた神とやり取りした時に情報を教えて貰ったのを覚えている。

しかし記憶にもやがかかったように思い出せないのだ。


私は途方にくれた。この世界は私の知っている世界より大きい。

特定の人を探すことが大変なのは想像に難くない。

そこで私はひとまず自分の持っている記憶から考察していくことにした。


まずは生まれた国。これは同じ日本であろうとすぐに思い至った。

理由はリシアが白米を使った料理をよく作っていたことに尽きる。

前の世界では珍しい食材であったが、ことこの日本では主食だ。

世界各地を探し回らなければいけない可能性が減り、ひとまず安堵する。


性別。これは同じ女性であろう。

記憶の中のリシアの持つ感覚はとても女性らしい。

肌を晒すことにあまり抵抗がないところには違和感があったが、これも今の世ではそこまで珍しいことでもない。

きっと女性であるとあたりをつける。


そこで私は壁にぶち当たる。

それ以上何も特定出来ないのだ。

私はリシアのことを知らなさすぎる。

だが諦めるわけにはいかない。私は長い時間を掛け、一つのことに思い当たる。


それは、リシアは前の世界についての情報を何かしら持っていたのではないか、ということだ。

思えば、リシアは海でのことだったり、初めて領地に来たときのことだったり、これから起こるであろうことを予知していた上で回避しようとしていた節がある。 

これはこの世界で知り得た前の世界の情報ではないだろうかと思う。

つまり、この世界と前の世界には何かしらの繋がりがあるに違いない。

私はそう結論づけた。


そこからは私はとりあえず「リシア・エヴァンス」と「レベッカ・ローエンリンデ」について調べてみることにした。

しかし、これは空振りに終わる。

何も出てこなかったのだ。


そこで私はとにかくたくさんの情報を集めることにした。

一つでも取りこぼさぬよう、そのために必死に勉強した。

前の世界で学園でいろんなことを学んだのも助けになったのだろう、見る見るうちに学力があがる。

気がつけば有名な大学に奨学金で通うようになった。


それから私の容姿。これは前の世界の私と良く似ていた。転生だと言うのもあるかもしれない。

前の世界と似たこの容姿で何か前の世界に関わる情報が手に入る可能性もある。

そう思い、私の容姿について広く発信できればと考えた。

幸い、私の容姿は良いと判断してもらえる世界だった。

トントン拍子に雑誌のモデルの仕事をもらい、学生ながらそれなりに生計を立てられている。


だが、まだリシアには会えていなかった。

そんなある日、私に一通の仕事依頼のメールが届く。


「コスプレ撮影のお仕事を依頼したいのですが。」

本日22時にもう一話更新します。

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