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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
その後のお話
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離れ離れになったら その1

私が年に数度の王都での公務を終えてローエンリンデ領に戻ってきている時のこと。

普段は必ずといっても良いほどに大抵の公務とスケジュールを解決してついてくるお姉さまだが、今回は居ない。

どうしても外せないアポイントメントが期間中にあり、領地を離れることが出来なかったのだ。

それでもついてこようとするお姉さまを必死にアランさんが羽交い締めにしてる間に領地を出発したのは記憶に新しい。


ほぼ毎日ちゃんと顔を合わしているのに、もしくはだからか半月もお姉さまと会えなかったのは精神的にちょっと来た。


「お姉さま、私と会えなくて干からびてませんかね…?」

「その可能性は否めないのが怖いところですね…。」


王都と領地の行き来の際にはシンシア様の領地に宿泊することになる。

そこでシンシア様とこうしてお茶をするのが慣例になっているが、今日はその場にもお姉さまはいない。


「お二方の仲むつまじさには口から砂糖が出そうと常々思ってましたが、二人組でいないとそれはそれで違和感があるものですね。」

「そうなんですよ。私もついつい居ないお姉さまを呼ぶことがあって。というかシンシア様、そんな風に思ってたんですか?」

「リシア様たちを見てそう思わない人のが珍しいと思いますが?」

「開き直りましたね…。」  


その日のお茶会はとても楽しかったが、どこか締まらなかった。


◆ ◇ ◆ ◇


そして今日はついに帰り着く日だ。

お姉さまのことだ、もしかしたらすぐ近くまで迎えに来ているのではないか?

そんなことを思いながら進んでいくと、遠目に馬車群が見える。

案の定迎えに来てくれていたようだ。

私は逸る気持ちを抑えて向かう。

間近まで来ると、見慣れた人影が立っているのが見える。

私は馬車を降りて歩く。


「公爵様、お久しぶりです。」

「リシア、会いたかったぞ…。それから私のことはお姉さまと…」


相変わらず公爵様呼び論争は続いている。使用人も最近は慣れた様なのでもうお姉さまでもいいかと思い始めているが。

というか、お姉さま痩せた?顔も赤いような?

そんなことを思っていると、お姉さまが私に覆い被さる。


「公爵様、すごく熱いんですが!?」


抱きついてきたお姉さまの体温に驚愕する。

かなりの高熱である。

お姉さまのそばに控えるアランさんに目をやると、困ったように口を開く。


「実は昨日から高熱を出されているようで…今日は大人しく寝ているように言ったんですが…」

「リシアを迎えに行く方が大事に決まっているだろう…。」

「公爵様、バカですか?本物のバカですよね?」


体調が良くないのにこんなところまで馬車に乗って迎えにくる奴がいるか。

私は呆れながらお姉さまを支えるとアランさんに、声をかける。


「とりあえずこのバカを馬車に運ぶのを手伝ってもらえますか…?」

「かしこまりました。」

「歩くくらい出来る…」

「はーい公爵様は黙っててくださいねー」


私たちは息も絶え絶えなお姉さまを連れて領主用の馬車へ向かう。

ここでは私とアランさんとお姉さまだけだ。


「お姉さま、横になれますかー?」

「…ひざまくら。」

「はい?」

「膝枕して欲しい。」

「はいはい、今しますからね。」


横になったお姉さまの頭の下に膝を挟んでやると、満足げに目をつむる。


「どうしてまた体調を崩されたんですか?私が出て行ったときはとても元気だったじゃないですか。」


私の血には癒しの力があり、その血が流れているこの体にも微弱な癒しの効果がある。

毎日私を抱きしめて寝るお姉さまは、基本的に病気知らずなのだ。

事実、結婚してからお姉さまは病気をした試しがない。


「規則正しい生活はしていましたか?お姉さま。」

「ま、まぁ…?」 

「本当ですか、アランさん。」

「いえ、されてませんでしたね。」

「どういうことですか、お姉さま。聞かせて貰っても?」


全くこの人は。

お小言を言う私がいないからって夜更かしでもしていたんじゃないか。

体調が悪い中可愛そうだが、もしそうなら後でしっかりお説教しなければならない。


「その、夜リシアが居ないじゃないか。」

「はい。それで?」

「そうすると、いつもより広いベッドが何だが違和感で、寝れなくて。仕方ないから、リシアが帰ってきたときに余裕が作れるようにと思って執務室に戻って明かりを点けて公務を済ませて。」

「え、待ってください。ってことはこの半月、ろくに寝てなかったりします?」

「途中からはちゃんと寝たぞ…?」

「とりあえずそれは良かったです。それで?」

「お昼ご飯、リシアが持ってこないとなると後で良いか、と公務をやっていたらお昼も抜きがちになって。」

「はぁ…。」

「しまいに、公務ばかりしているものだから、やり過ぎてやることがなくなって。これは良くないなと思ったんだ。」

「そうですね。それでどうしたんですか?」

「空いた時間で鍛錬をして自分を追いこんでいたら、寝れるようになった。」

「えぇ…?」

「でも疲労でそのまま寝落ちることが増えて、晩御飯もまちまちになって。気づいたら体調不良で寝込んでいた。」

「それ、私が居ないとまともに生活出来ないってことじゃないですか…。」


この人は私無しでは生きていけない。その事実に思わずゾクッとして顔がにやけそうになるがこらえる。


「そうだな…。申し訳ない…。」

「過ぎたことは責めても仕方ないですが、今後はもう少しちゃんとした生活を心がけてくださいね…?」

「あぁ、わかった…。」

「リシア様、もう少しちゃんと叱ってくださらないと困ります。」

「まぁ、それはお姉さまの体調が良い日に…。」

「はぁ…。」


膝にあるお姉さまの頭をそっと撫でてやると、とても快適そうな顔になる。

静かに撫でながら、私たちは帰途についた。


最近若干体調不良のため、しばしば更新がない日があるかもしれません…

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