表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
その後のお話
137/321

一年ぶりの、海。 その2

レベッカ視点です。

「ふぅ、疲れたな。休憩しよう。」

「時間も良い頃ですし、小屋で預かってもらってたお弁当、取ってきますね!」

「私も行こうか?」

「いいですよ、お姉さまは座っててください!」


そんなやりとりをして20分ほど経っただろうか。

小屋までは少しあるが、それでも往復20分はかからないはずだ。

心配になって小屋までの道を辿っていくと、遠目にリシアの姿が見える。

隣には背の高い男性が弁当を持っており、リシアはにこやかに手を組んで歩いていた。

まるでとても親しい様な雰囲気は、非常にお似合いに見えた。

その姿に様々な気持ちがわいてくるが、冷静に思い直す。

リシアが私を捨てるはずもない。きっととても仲の良い友人か何かなのだろう。

そう思いながら極めて平静を装って二人に近づいていく。


「あら、お姉さま。お迎えに来てくれたんですか?」

「ああ。遅かったのでな。そちらは…」


私は少し威嚇するように隣の男性に殺気を送る。

どうやら少し年上の様に見える。


「はじめましてローエンリンデ公爵令嬢殿。バルド・エヴァンスと申します。父からお噂はかねがね。」


そういうと男性は深々と頭を下げる。


「あ、頭をあげてくださいバルド殿。貴殿は…」

「ええ、リシアの兄にあたります。」


確かにリシアには一人、エヴァンス家の実子である兄が居ると聞いていた。

城勤めで多忙にしており、年始の事件でも城との折衝役でずっと城に居たようでお会いしたことはないが…。


「これは失礼いたしました。バルド殿も堅苦しい礼は不要です。」

「助かります。」

「お兄さまも休暇で近くに来てたそうで、さっき偶然会ったんです!少し世間話をしたら、お姉さまに会ってみたいとのことでしたので、連れてきました!」

「妹の婚約者に自分一人会っていないというのも仲間外れな気がしまして。」


バルド殿はそういうと快活に笑う。

リシアとは血のつながりはないはずだが、その笑顔は兄妹でよく似ている様な気がする。


「しかし、私は武芸の心得はそこまで無いのですが、先ほどの殺気は私でもわかるほどでした。さすがですね。」

「し、失礼いたしました…。」

「いえいえ、婚約者の横に見知らぬ男が居れば警戒も嫉妬もするでしょう。冷静に振る舞いながら、しっかり妹を守っていただけてありがとうございます。」


どうやらバルド殿はエヴァンス子爵に似て穏やかで実直な方のようだ。

私の先ほどの失礼も鷹揚に許してくれる。


「妹は見た目に寄らず破天荒で後先知らずなところがあります。苦労されているでしょう?」

「いえ、そういうところもありますが…普段は一歩引いて私を支えてくれております。私にはもったいないくらいで。」

「お兄さま!!お姉さま!!私はお淑やかです!」

「「ないな。」」


二人に冷静に反論されたリシアは拗ねた様にそっぽを向く。

身内がいるせいか、その様子がいつもより少し子供っぽくて可愛らしい。


「とても変な子なので心配していたのですが、公爵令嬢殿と恋人になってからは毎日が楽しそうです。感謝しています。」

「私が一方的に幸せにしてもらっているだけです。」

「変な子ってとこも否定してくださいお姉さま…。」


リシアが横でバルド殿の腕をぺちぺちと叩いているが、バルド殿は意に介さない。

兄妹らしく、付き合い方は良く理解しているようだ。


「お会いできて良かったです。公爵令嬢殿、妹をどうかよろしくお願いします。」

「必ず大切にお守りします。」


私が真っ直ぐ目を見据えてそう宣言すると、バルド殿はうれしそうにふっと笑う。


「では私はそろそろ行こう。リシア、弁当は公爵令嬢殿に持っていただきなさい。」

「お兄さま、もう行ってしまうのですか?」

「私にも連れがいるし、恋人同士のデートを邪魔するのも野暮だろう。ではな。」


バルド殿は手に持っていたお弁当を私に手渡すと、一礼して去っていった。

リシアは私の腕に自分の腕をすっと絡めると歩き始める。


「お姉さま、頑張りましたね?」

「何がだ?」

「今思えば、前のお姉さまが見れば嫉妬してよくわからないネガティブに入ってただろうなーって思って。」

「ああ、そういうことか。」


今でも少し、そんな気持ちはよぎった。

でも、今は。


「リシアが毎日愛を伝えてくれるから、嫉妬はしても不安にはならなかった。何かあれば守らないととは思ったけどな。ありがとう。」

「ふふふ。私はお姉さまのこと大好きですよ。」


私の腕に巻き付いたリシアは、それはとても幸せそうにしなだれかかる。


「お弁当を食べたらもう一遊びしましょう、お姉さま。」

「もちろんだ。」

「花火も天体観測も釣りも山登りも流しそうめんも、全部やりますよ!」

「ああ。」

「線香花火、今年は勝ちますから。何か恥ずかしい話してくださいね~?」


私たちはわいわい盛り上がりながら歩いていく。

二人、どこまでも、同じように。





まだしばらくこちらを更新する予定ですが、新作も始めました。

ストックが出来れば新作の方も更新する予定ですので、良ければ読んでみてください。

「恋した相手は武力99の姫でした。」

https://book1.adouzi.eu.org/n5635hh/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ