ある年のクリスマス
レベッカ視点です。
12/24。
この日は特別な日だ。
それはクリスマスイブだけでなく、リシアの誕生日でもある。
私たちにとって一番大切な日だと言っても過言ではないかもしれない。
「お姉さま、七面鳥はもちろんお食べになりますよね?」
「ああ。」
リシアは夕食に焼いた七面鳥をにこやかに切り分けてくれる。
その姿が今日が特別な日なのだと教えてくれる。
「リシア。誕生日プレゼントなのだがな。」
「はい。」
リシアは驚くくらいに物欲が乏しい。
そのため、いつもプレゼントには悩む。
今回も、これが喜んでもらえるのか、不安になりながら取り出す。
「ワインだ。リシアと同じ20年物の。私もだが、初めての酒だろう?一緒に飲まないか。」
「わぁ、良いですね!私と同じ年ですか。」
リシアはにこにこと喜びながらワインを受け取る。
昨年、私も20際になったが、酒には手を着けなかった。
それはこの日リシアと一緒に初めてを経験出来ればなと思ってのことだ。
「はい。お姉さまの分のグラスです。よろしければ、お姉さまの手で私の分も開けて注いでもらえませんか?」
「構わない。…誕生日おめでとう。リシア。」
「ええ。ありがとうございます。それではお姉さま、乾杯。」
私はリシアとグラスをつき合わせると、ワインを口に含む。
口の中に甘みと香りが広がる。なるほど。ワインとはこういうものか。
まだ慣れぬ味わいを理解するように飲む。
「とっても美味しいですね。やはりお高いのですか?」
「まぁ、それなりには。喜んでくれたなら嬉しい。」
リシアがグラスを傾ける様子はとても様になっており、美しささえ感じる。
どこか手慣れているような感じで、なぜだかこの瞬間私の方が年下なのではという感覚さえするようだ。
「あまり飲んで酔っぱらわないようにな。」
「ふふ、大丈夫ですよ。」
リシアはとても良いペースで一杯目のグラスを空ける。
2杯目を自分のグラスに注ぐと、席を立って私の横に立つ。
「お姉ーさまっ。お膝に失礼しても?」
「えっと…?」
突然のことに反応が遅れ固まる。
その様子を見たリシアは肯定と見たのか、そのまま対面するように膝に座る。
「こうすればお姉さまと近いです。」
「いや、リシア、近すぎる…」
リシアの息さえ顔にかかる距離に思わず顔を背ける。
「もう、こっち向いてください。」
リシアが片手を私の顔に添えるとこちらに向ける。
結果リシアの顔を真っ直ぐ見据えることになる。
「さすがにこれはちょっと不味いんじゃないか…?」
「お姉さまは真面目ですねえ。そこも可愛いです。」
リシアは意に介することなく、じっと見つめてくる。
「睫毛、とっても長くて素敵ですよね。好きだなあ。」
リシアが顔に添えた手の人差し指で一度睫毛を弾く。
もしかして、酔ってる?
「ふふ。素敵な黒髪。キスしちゃいますね。」
その後顔に添えた手を髪にやって取ると、私の髪に口づけをする。
「大好きなんです。お姉さまの髪。凛としてお姉さまらしいじゃないですか。」
「あ、あぁ…」
「それに引き締まった体。とても美しくて素晴らしいです。」
リシアの手が私の体をまさぐる。
突如としたリシアの褒め言葉と動きに固まって、身動きがとれなくなる。
「お背中も、大好きなんですよねぇ。広くて綺麗で。」
「お姉さまの香りは、本当に大好きで。こうして嗅いでいると落ち着くんですよ。」
「それから、姿勢。普段の生活の姿勢がとても綺麗で、つい目で追っちゃうんです。」
「外じゃ強いのに私には一杯甘えてくれるところも。可愛いですねえ。」
「褒めたときの照れ顔も。今もとても良い顔してて。」
「唇もとても厚くて綺麗ですよね。いただきます。」
「ふふ、ワインの味がしますね。」
「ああ、お姉さま。私のお姉さま…。愛してますよ…。」
目が据わったリシアがどんどんエスカレートしていく。
私は恥ずかしいやらどうしていいやらでただされるがままになる。
「お姉さまは私の物ですからね…?わかってます…?」
「ああ、わかってる。わかってるからいい加減…。」
「…」
リシアは私の肩に顎を乗せて耳元で囁くように話していたが、突然会話が途切れる。
どうしたのかと困っていると、すぐに寝息が聞こえ始めた。
「助かった…。」
私は膝の上で寝ているリシアを両手で抱え上げるようにして立つと、寝室へと運んでいく。
「酒は今後飲まさないようにしないとな…。」
ワイン一杯であの酔っ払いようだ。きっと私の身が保たない。
「それじゃあ、おやすみ。」
私は寝室から出ると食事を取りなおした。
翌日、目覚めると布団にくるまって出てこないリシアが居た。
すべて覚えていたようで「恥ずかしさで死にたい…。」と蚊の鳴くような声で悶えるリシアが少し可愛かった。




