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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
その後のお話
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二人の日常 その2

「ううん、後要る物はあったかしら…」


私がローエンリンデに来てからはこの家の一切を任されている。

購買、手配、使用人の管理はもちろん、お姉さまたちの認可はあれど屋敷内の予算を組むところまでだ。

そのため日々の業務は予想以上に多く、忙しい。

お姉さまの服だって私が予算を申請していつどれほど買うのか決めるのだ…


「あっ、お姉さまのドレス!」


季節の変わり目だ。新しいドレスを仕立ててもらう必要もあるだろう。

予算申請書に額を添えて追加する。


「と、もう良い時間ね…行かないと。」


ひとまずの目処がついたところで私は仕事を切り上げ、部屋を出た。


◆ ◇ ◆ ◇ 


「思ったより時間がかかったなぁ。お姉さまたち、待ってるだろうな。」


私はオムライスを三人前作って、いつもの場所へ持って行く。


「ごめんなさい、お待たせしましたか?」

「いえ、私たちも業務がずれ込んで今来たところですよ。」

「ああ、その通りだ。」


先に待っていたお姉さまとアランさんは気を使ってそう言ってくれる。

私はありがたく思いながら、オムライスを三人前並べる。


「「「いただきます。」」」


私たちは川を眺めながらオムライスを食べ始める。

ここはローエンリンデの庭園内にある川横の東屋だ。

お姉さまが昼食は学園の時みたいに川沿いでのんびりと食べたいと望み、川から作ることになった。

今では冬以外はだいたいここに昼食を持ってきて共に食べている。

また、昼食は大抵私が作るようにしている。

面倒なのだけど、お姉さまが寂しがるから仕方ない。


「そういえば奥方様。予算の申請書の件ですが。」

「それであれば、昼前に完成したので後ほど提出します。」

「ちゃんと奥方様の分の予算も入ってますか?」

「えーっと、欲しいものがなくて…」

「困ります。お嬢様の物だけでなく、ちゃんと奥方様の分もご購入いただかないと。見栄も重要ですから。」

「あはは…はーい…」

「では、私がリシアに着せたい服を選ぼう。予算に入れておいてくれるか?」

「そうしましょう。嬉しいです。」


お姉さまとアランさんとの昼食は和やかに進む。


「朝言ってた通り、昼食後少ししたら時間に余裕が出来そうだ。付き合ってくれるか?」

「ええ、構いませんよ。」


昼食を片付けて、すぐ予算の追加だけ書こう。

そんな算段を立てながら私はオムライスをかき込んだ。


◆ ◇ ◆ ◇


昼食からしばらく経ったのち、私は鍛錬場に居た。

お姉さまが静かに剣を振るのを眺める。

元気になって以後のお姉さまの剣はさらに冴え渡っているのが素人の私にもわかる。

ただ自分の思うまま制約なく剣が振れて楽しそうなお姉さまを眺めているだけで楽しい。

そんなことを思いながら見ていると、お姉さまが一つ深い息を吐く。

終わりの合図だ。私はタオルを持ってお姉さまに差し出す。


「お姉さま、タオルです。」

「ああ。ありがとう、」

「お茶もありますし、厨房からクッキーをいただいて参りました。どうですか?」

「良いな。いただこうか。」


私たちは端っこに座り、お茶とお菓子を食べる。

私はクッキーを咥えながら、座り込んだお姉さまの後ろに回り、マッサージを始める。


「気持ち良いな…。ああ、幸せだ…。」


この一連の流れも日常と化した。

お姉さまは特にこの時間が好きなようで、日々の業務をすごい勢いで終わらせては時間を作っているようだ。

かく言う私も好きなのだが。


「ふふ、もういいぞ。ほら、おいで。」


ひとしきりマッサージし終えると、お姉さまが私に向かって手を広げる。

私はそれを見て、お姉さまの足の間に座ると、後ろからギュッと抱きしめられる。


「ああ、癒される…。」

「お姉さま。今はどこも悪くないでしょうに。」


癒しの力の本体は私の血にあるみたいだが、血が流れているこの体自体にも緩い癒しの力があることがわかっている。

お姉さまはそれにかこつけて、私を抱きしめるのは健康法の一種と言い張り、暇あればこうしている。

避暑地でのあの夏から続くいつもの体勢で、私もこれが大好きだ。

なのであまり拒否することもない。

鍛錬終わりのお姉さまの大きい体に包まれると、心安らぐ香りがしてくる。

少しうとうとしてきた私を見たお姉さまは、そのまま横になると、私の頭に腕枕を差し込んでくれる。

横になったことで眠気に抗いがたくなった私は素直にそのままお昼寝を始めた。



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