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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
その後のお話
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50000pv記念・赤髪の快男児と銀髪の魔女 その5

シンシア視点です。

「リシア、欲しい景品はあるか?どうせ私が一位だから、何でも貰ってきてやるぞ?」

「おい俺もいるからな。レベッカ嬢、負けねえぞ?」

「そもそもカイト、貴様は私と競えるところまでいけるのか?」

「は?去年は二番手だったんだが?」

「所詮二番手だろうよ。」


カイト様とレベッカ様は相も変わらず喧嘩しているようだ。

顔を合わせればすぐこれだ。


「んー、特に欲しいものないんですよね…」

「リシアには私があれば充分だものな?」

「勝手に解釈広げるのやめてもらえます?」


カイト様の相手に飽きた様子のレベッカ様はリシア様に抱きつき始める。


「シンシア様は何か欲しいものはおありですか?」

「私ですか?」


リシア様の顔を見返すと妙ににやにやとしている。

カイト様が居る内に欲しいものがあれば言っておけということだろう。


「そう…ですね…似合わないかもしれないですが、この髪飾りが欲しいです。」


私が指さしたのは、サファイアのあしらわれた髪飾りだ。

意匠がシンプルで好きだなと思ったのだが、美しすぎて私には似合わないかもしれない。


「良いですね、この髪飾り!シンシア様にとっても似合うと思います!」

「なるほど、シンシア、プレゼントしてやろうか?いだっ!」


レベッカ様はリシア様から思いっきり足を蹴られている。


「シンシア様のきれいな銀髪にとてもあうと思いますよ。色も落ち着いていてシンシア様らしいです。」

「そうでしょうか…?」

「ええ。贈ってくださる方がいらっしゃればいいですね!」


そう言うとリシア様はカイト様の方に目をやる。

さすがにちょっとあからさますぎないかと心の中でツッコミを入れた。


◆ ◇ ◆ ◇


「さて、そろそろ一度帰ってくるころですかね?」

「ですね。用意を始めましょうか。」


私たちは狩猟組を送り出した後、セッティングしたテーブルでお茶を飲みながらゆっくりと談笑した。

時が経つのは早く、もう昼休憩の支度を始めた方が良さそうな時間になった。


テーブルに料理人の料理、リシア様の手料理に私のポテトサラダも並べて貰っていく。

冷えたお茶も用意して出迎えの準備は完璧だ。


「ちょうどいいタイミングで帰ってきたみたいですよ!」

「お迎えいたしましょうか。」


帰ってきたレベッカ様とカイト様を迎える。


「おかえりなさいませ!」

「はぁ、狩りをして帰ったらリシアが待っている。もう死んでも良い…。」

「ダメですよ!?」


「おかえりなさいませ。」

「ああ。ただいま。シンシア。」


カイト様は素っ気なく答えるが、どこか嬉しそうにしている。

まぁ、良しとしましょう。


「お茶も冷やしてありますし、昼食も並べてありますよ!いただきましょう!」


リシア様の音頭で席に着き、食事を取り始める。


「うーむ。これはリシアの味だな?」

「どれが私の手作りか言ってないのに全部わかるのちょっと気持ち悪いです…。」

「リシア嬢は相変わらず料理が上手いな。」


話はリシア様の手料理で持ちきりだ。

リシア様の料理は贔屓目抜きに上手い。当然のことだろう。


「ん?」


レベッカ様がポテトサラダに手を着けた瞬間、少し悩んだような顔になる。

その後すぐさまちらと私を見てニヤっと笑う。

私が作ったのもわかるのか。確かにちょっと気持ち悪いかもしれない。

でも、カイト様にはわかってもらいたいような。


「そういえば、狩りの調子は如何ですか?」

「鹿を三頭しとめて来たぞ!リシアが喜ぶと思ってな。」

「わぁ、嬉しいです!また鹿肉食べれますね?」

「俺は鹿は一頭。狐を結構取ったのと、鳥も少し。」

「大したことないな。」

「レベッカがおかしいんだよ!!」


確かに、カイト様の成績は去年ならぶっちぎりのペースくらいだ。

レベッカ様の勢いがおかしい。


「成績って、どうやって決まるんですか?」

「まぁ、基本は重量だよ。珍しいもんにはオマケがつくがな。」

「つまり、鹿さんを三頭取ってるお姉さまはかなり良いと。」

「そうだぞ、リシア。褒めてくれ。」 

「はい、よくできました。」

「普通デカいのは数がすくねえからそんなに取れねえんだよ…。」

「カイト様も頑張っておられますよ。」

「そうだよな!?」


和気藹々と昼食の時間は過ぎ、午後の部が始まる。


「では行ってくるぞ、リシア。」

「はい、鹿さんをお待ちしています!」

「そうだな。鹿料理がたのしみだ。」


「行ってくるわ。」

「はい。ご武運を。」 

「ああ。ありがとうな。」


私たちは再び二人を見送る。


「そういや、シンシア様?」

「なんでしょう?」

「カイト様、たぶんお気づきになられてましたね。」

「え?」

「途中からシンシア様のポテトサラダばかりお食べになってたじゃないですか。ほら。」


リシア様が空っぽになった皿を私に見せる。


「本当だ…。」


カイト様がたくさん食べてくれた。

その事実に心の底が、ぽかぽかするような気がした。


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