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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第七章 次は私が
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剣戟の先に

目を覚ます。

周囲を見るとどこまでも白い何かが広がっている。

ここはどこだ?確か私はお姉さまに癒しの力を使うために自殺しようとして…ということは天国か?


「違うんだな、これが!」


唐突に誰かに声を掛けられる。

びっくりした。

誰だ?


「んー、君が聖女やってる宗教では神って呼ばれてるねえ。」


神、神ってあの神?

私は疑いの目を向けながら風貌を観察する。

なんというか、男性とも女性ともいえない、けど全く印象にも残らない、そんな見た目だ。

あれ、目の前に居るのにどんな見た目かもう思い出せない。


「それが神って奴なんだよね。少なくともこの世界では。」


神を名乗る人間はそう語る。

あれ、さっきから私口に出してたっけ?


「出してないよ!思考が読めるだけ。」


なるほど、しゃべらなくていいのは便利だ。


「話してくれてもいいんだよ?ところで、どうしてあんなことをしたんだい、リシア。いや、□□のがいいかな?」


□□?そこだけ聞こえない。でも懐かしいような。


「別の世界での君の名前だよ。」


ああ、そういう。

でも、私はもうリシアだから。リシアで良いです。


「ではリシア。改めてどうしてあんなことを?」


えっと、だって癒しの力を使おうと思うと誰かが死なないとダメなんでしょ?

なら、私が死ねば良いと思って。


「あー…なるほど。そういう…。君、エドワードルートのエンディングのテキストすっ飛ばしてたやつ?」


一度はエンディングを見たけど、レベッカロスで全然頭に入ってこなくて。

その後はレベッカが死ぬのが見たくなくて、エンディングを見てないから。


「実は君の癒しの力は、誰かの死がきっかけで発動するものではないんだよ。」


えっ、じゃあ一体…?


「血だよ血。そもそも神託の聖女というのは、特殊な癒しの力を持つ人間が産まれた時にそう決まるんだけど、リシアの場合はその血液に癒しの力があった。」


神託の聖女だから癒しの力が発動するんじゃなく…?


「違うね。リシアは産まれたときから血液に癒しの力があった。そして、どのルートでも悪役令嬢と血を流すような争いをし、相手が死んだときに君が死体を抱いて、君が流す血液に触れて死後に癒しの力が発動するんだ。」


つまり、お姉さまが私を本気で攻撃するつもりがあれば、何もせずとも発動していた可能性があった…?


「まぁ、そうなるね。皮肉だけど。」


そんな、私死に損じゃないですか…。まぁ仕方ないか。


「仕方ないで済ませる君もすごいけど、死んでないんだよ、君は。」


えっ、でもここは天国って奴では?


「違うんだよ、さっきも言ったけど。良いかい、リシア。君は生きている。」


そうなんですか?じゃあどうしてここに。


「君が胸に自分の剣を突き刺した瞬間、自分の血が自分の体を癒し始めた。でも、傷がひどかったものだから、一旦仮死状態になっているわけだ。」


では、私はもう少しすれば生き返る…?


「とりあえず刺さった剣を引き抜いて貰えれば生き返るんじゃないかなあ。刺さってる間はずっと傷が開き続けるから、それまでは仮死状態だと思う。」


剣が刺さったまま火葬されたら…?


「それはさすがに死んじゃうなあ。いや、どうなんだろ?焼かれながら自分を治癒し続けるのかな?何せ僕も血に強い癒しの力を持つ聖女を初めて見るものだから。」


怖っ!それだけは避けたい。


「まぁ、たぶん大丈夫だよ。たぶんね。」


いい加減な神様だなあ。


「で、リシア。これが一番聞きたかったんだけど。君はこの世界に来て楽しめてるかい?」


ええ、とっても。お姉さまと過ごす日々は最高でした。

時折、エドワードルートに引き戻されるのが面倒だったけど。


「それはねえ、この世界の仕様だから…」


仕様で何でも片づける神様って嫌だな…

この後もこういう事態は起こるんですか?


「いや、起こらないよ。君は自らの力でレベッカとのエンディングを勝ち取った。ここから先は、物語にはないから。自分たちで作り上げて行くと良い。」


本当ですか?嬉しいな。

これからは二人憂いなく歩めるんだ。


「ああ。頑張っておいで。リシアも君を連れてきて良かったと思っているだろう。」


どうだろう。二人混ざってわからないけど、でも私が嬉しいということはそういうことなんだろう。


「さて、君の胸から剣が抜かれたみたいだ。もう向こうの世界では一時間以内には目が覚めるだろう。行ってらっしゃい、剣戟の先に。」


行ってきます!



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