元日 その7
…いや、私が一番わかっているんだ。
この力は、全てを癒し治す聖女の力は。
お姉さまが死なないと、目覚めない。
そんなことは、許されない!
私は競技場のどこかに居るエドワードに向けて叫ぶ。
「良いかエドワード!今から、お姉さまが勝利する。そうすればお姉さまに解毒薬を渡し、罪は私の狂言になる。そうだな!?」
「リシア様!」
競技場の控え室からアランさんが声をあげる。
ごめんなさい。アランさん。
「アランさん!私は今から賭けに出ます!もし失敗したら、エドワードから解毒薬をもぎ取り、医者へ!必ずお姉さまの命をつなぎ止めてください!」
これで良い。思い残すことはもう無い。
私の癒しの力はお姉さまの死でしか、発動しない。
それは本当だろうか。身近な人、救いたい人の死であれば、発動するのではないか?
私は原作で、他のルートでは違う悪役令嬢の死によって発動するというところから、そう考えた。
これは一種の賭けだ。どうなるかは解らない。
でも、賭けに負けても、目的さえ達成できればそれで良い。
私は、私の死によって癒しの力を発動させる!
「お姉さま。今お助けしますね。」
「り…りし…あ?」
私はお姉さまからもらった剣を、自分の胸に突き立てた。
痛い。胸を突けば一気に死ねると思ったが、掠ったのか何なのか、そんなことはないらしい。
体を起こしてられず、お姉さまの上に覆い被さる。
お姉さまの肌に残る事件の凄惨な傷跡が急速に消えていくのを見て、私は自分が賭けに勝ったことを確信し、そのまま意識を手放した。




