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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第七章 次は私が
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元日 その3

レベッカ視点です。

「着いたよ。ここだ。」

「ああ。」


案内されたのは、領都から少し離れた旧競技場。

ずいぶん昔に領都の中心近くに新競技場が建て替えられ、今では打ち捨てられている。

私の死に場所にしては、上等な場所を選んだじゃないか。


中に入り、建物を進んでゆく。

もうすぐ、もうすぐリシアに会える。

そう思うと気持ちが高鳴り、足取りが軽くなる。


「ここの中でリシアが待っている。準備は良いかい?」

「早くしろ。」


ああ、どれだけこの瞬間を待ちわびただろう。

会えるのだ。再び。

部屋の扉がゆっくりと開く。すると、その隙間から飛び出す人影が一つ――


「お姉さま!」


リシアが私に勢いよく抱きつく。

体力を消耗している私はその勢いについよろめいてしまう。


「ああお姉さま、こんなにおやつれになって!お体、悪いですか?ご飯は食べれましたか?睡眠は?」


リシアが私を抱く力を強める。

手を縛られていなければ、思わず抱きしめ返していたかもしれない。

リシアの体温はこんなにあたたかだったか。あたたかさが体に染みる。


「お姉さま、私、癒しの力についていっぱい研究して。こうやって抱きしめればお姉さまを癒してくれるはずなんです!!どうですか!?体は楽になりましたか!?」


口早にそうまくし立てると、不安げに私を見上げる。

もう視力もほとんどない私だが、リシアがどんな顔をしているかはわかる。

ああ。リシア。そんな辛そうな顔をしないでくれ。

強い痛み止めを飲んだせいか、体の調子は良く解らない。

だが、数日ずっと抱えてきた体の奥底から湧き出るような不快感はかき消える様子はない。


「えっと、その、まだ全然コントロールが出来なくて。どうですか?私、頑張りますから。その。」


解っている。きっと君は、これまでたくさん頑張ってくれたのだろうな。

私をどうにかつなぎ止めようと、手探りで必死に。

一番そばで、私のためにいつだってそうしてきたのを見てきたのだ。

今更解らないことがあろうか。

でも、少し時間が足りなかった。そうだろ?


「本当なんです。だから、だからどうか。」


リシアは更に私を抱く強さを強める。

リシア、エドワード。私はどちらがそれを提案したのかは解らない。

でも、この後何を告げられるのかは、もう解っているんだな。

そうだな、もうこれしか残っていないんだ。

だから、私を嫌って、私を殺して。最期に私の命を意味あるものにしてくれ。


「リシア。いや、リシア・ローエンリンデ。あなたの元恋人、レベッカ・ローエンリンデが決闘を申し入れる。…己の命の為に元恋人にも剣を向ける愚かな女の申し入れ、受けてくれるか。」

「待ってください!私は、あなたを…!」

「エドワード。」

「ああ。」


エドワードは私から無理矢理リシアを引き剥がし、私を別の部屋に連行する。

さようなら。リシア。愛している。






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