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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第七章 次は私が
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元日 その1

レベッカ視点です。

誰かが入ってくる物音で目覚める。

一時期は激しい痛みで長く眠れなかった私だが、少し前から痛みよりも眠気が上回り寝ている時間が増えた。

今では目覚めている時間のが短いのではないか。

どれほどの時が経ったのか解らないが、本当は状況から予測するに数日も経っていないのだろう。

頭で考えるとそうなるのだが、自分にはどうしてもそう思えないほどの時間だ。


「レベッカ、生きてるかい?」


おそらくエドワードが自分のそばに立つ。

もう、目も霞んで見えないのだ。

だが、あの声はエドワードだろう。


「ああ、もう目も見えていないのか。大変だね?」


見えずともわかる。

きっとエドワードは勝ち誇ったような目でこちらを見下ろしている。

リシアならきっと「殴ってやりたいですね!」くらいは言っているに違いない。


「もうすぐ初日の出だ。今日は君とリシアの決闘の日だよ。」


今日は元日か。

初日の出、リシアと見たかったな。

大晦日の夜は、共に時を数えながら過ごし、新年を祝い、初日の出を見に行きたかった。

来年こそ…と思ったところで、もう自分の命は幾ばくもないと言うことに思い当たり、自然と笑いが出る。

こんな状況でも、リシアとの未来を考えてしまうんだな。


「僕のアドバイス、覚えてる?リシアがレベッカを忘れて幸せに生きるには、君が悪役になればいいんだ。」


そうだな。私はもう、リシアとともには歩めない。

リシアはきっと、任されたローエンリンデを上手く建て直して自分の使命を果たした後、私を追って死ぬくらいはするだろう。

でも、私はリシアに幸せになって欲しい。

私と共に死ぬくらいなら、私を忘れて生きてくれた方がずっといい。

そんなことを痛みの中、数日考えていた。

こんな押しつけ、リシアは怒るだろうか。これも怒るだろうなあ。

怒って、嫌いになって欲しい。お姉さまなど、もう知りませんと見捨てて、他の人と幸せになってほしい。

私が嫌われて死ねばローエンリンデも残せる。リシアも幸せになる。

私の最後のわがまま、許してくれなくていい。


「さて、じゃあ一度手足を拘束させてもらうよ。それから痛み止めをあげる。恋人と会うのに動けないんじゃ寂しいだろう?」


そう言ってエドワードは私の体に拘束具をつけはじめる。

女性の体に無許可で触れるデリカシーのなさは、リシアの嫌っていたエドワード像と一致していて、らしいなと思う。

こういう人間だったのか、私の婚約者は。

自分も彼を理解するということを止めていたのだな。

たとえ相容れないとしても、理解することをやめてはいけない。

それが少し心残りだった。


「じゃあ、痛み止めの薬が効いてきた頃に迎えにくるよ。」


そう言ってエドワードは部屋を後にする。

私はこれからやるべきことを考えながら、時を待った。



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