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主人公は悪役令嬢と仲良くなりたい  作者: SST
第七章 次は私が
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今、出来ること。

「お姉さま!」


私は手を伸ばす。

伸ばした先は、天井だった。

誰も居ないベッドの上に一人座り込む。


「夢か…。」


昨日のお姉さまの様々な笑顔が何度もフラッシュバックする。

私のせいで、お姉さまは連れて行かれてしまった。


◆ ◇ ◆ ◇


「お姉さま!離して!私はお姉さまを!」

「落ち着きなさい!」


エドワードたちに連れて行かれるお姉さまを追おうとする私をアランさんが羽交い締めにする。


「エドワード皇子殿下が取り調べの為に最低限の治療はすると約束した以上、それを飲むしかありません。」


お姉さまをあんな奴に任せられるか。あいつはお姉さまを。


「その約束を守るとは限らないじゃないですか!」

「それでも。今の私たちにお嬢様を救う手立てはない。おわかりでしょう?」

「今すぐ医者を呼んでくれば…!」

「エドワード皇子殿下のことです。時間を稼ぐ手段くらいはお持ちのはずだ。リシア様を守って、お嬢様を助ける。その二つを取るのは難しい。」

「私を守る必要なんて…!」

「いい加減にしろっ!」


アランさんは鬼気迫る表情で私を一喝する。


「お嬢様が、あなたを守る為に何をしたのか、見ていなかった訳ではないでしょう!?どうしてそんなことが言える!?」

「…ごめんなさい。」


アランさんの言葉に目が覚める思いがする。

確かに、お姉さまは自分に矢を受けてまで守り抜いてくれたのに。私が間違っていた。


「落ち着いていただけたらそれで構いません。良いですか、あなたは今からローエンリンデの女主人です。お嬢様を取り戻すため、私にご協力いただけますか?」

「もちろんです。なんだってやってみせます。」

「では一旦屋敷に帰りましょう。恐らく、今は何もしてこないはずです。」


◆ ◇ ◆ ◇


こうして、私たちは屋敷に戻ってきた。

昨晩は徹底的にお姉さまを助ける手段を話し合った。

まず、お姉さまを助け出せる猶予は後4日。

つまりは元日だ。

これに関しては、この世界がゲーム通りに進んでいるとすると、お姉さまの死亡する決闘イベントが元日だからだ。


当然、ほかの理由もある。

エドワードの今回の行動は、色々と無茶な点が多い。

つまりは王都ひいては陛下の了承を得られていない可能性が高いのだ。

ここの領地から王都までは最速で二日。そこから王都で話を上げて一日、何らかのアクションがここに返ってくるまで二日。

計五日かかることになる。

つまりは、それまでに決着をつけにかかる可能性は高い。


もちろん王都にローエンリンデから陛下への抗議の使者と、お父様、シンシア様、カイト様へ助けを求める手紙は出した。

だが、間に合うかと言われると難しいだろう。


ベッドから起き上がった私は、素早く身支度を済ませ部屋を出て、領主室へ向かう。

領主室の扉を開けると、既にアランさんが控えていた。


「おはようございます。エドワードから何らかのアプローチはありました?」

「いえ、まだです。」

「今日か明日にはあるでしょう。どうやら向こうの目的は私みたいですから。」

「お嬢様の身柄との交換条件が何かわからない限りには何とも動きがたいですな。」

「私の命が交換条件かもしれませんね。」


原作ではお姉さまとの決闘イベントがこの後行われる。

つまりは、お姉さまを殺すか殺されるか。それしか残らない。

正直、私は油断していた。誘拐イベントでは一度お姉さまの関与は否定されるし、年末の断罪イベントまでに長い調査による証拠集めが行われる。

まさか、こんなに無理やり短期間でイベントが消化されるなどとは思ってもみなかった。

あれほど警戒していたのに。私は愚かだ。


「…もし、そうなった場合は、リシア様。ご自身の命を優先されてください。」

「ええ、そうさせていただきます。では、次に住民の所在調査はどうなっていますか?」

「はい。現状50人単位での住民の減少は見られておらず、ローエンリンデ領から雇われたものではないと証明出来そうです。」

「ありがとうございます。では、次に遠駆けの予定は計画されたものでないという証言を…」


私は今やれることを一つ一つこなしていく。

そうでもしないと、お姉さまの笑顔が頭から離れそうになかったから。






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