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断章・一条の矢
呼吸を整え、弓を構える。
チャンスは一瞬。条件はシビア。
あの女が剣を取り落とす、その一瞬。
あの女も察知できないこの距離から。避ければリシアに当たるように。
必ず、あの女は自分が当たることを選ぶ。
私には、その確信があった。
自分の選択へのツケを払わせる。絶対に。
じっと、そのときを待つ。
まだまだ長丁場になるだろう。
それでも、弓を構え精神を研ぎ澄ませていく。
◆ ◇ ◆ ◇
どれほどの時間が経っただろうか。
場が夕闇に暮れ始めた、その最中。時は来た。
刺客たちが一斉に切りかかるその直前、私は矢を放つ。
あの女は剣を取り落とした。そして、矢に気づく。
さて、お前はリシアを助けることを選ぶだろう。
深々と女の腹に矢が刺さる。矢尻には王家秘伝の毒が塗ってある。
これで終わりだ。レベッカ。
私は、リシアを選ぶ。




