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転生社畜の領地経営~異世界で嫁たちとホワイト国家を建設します~  作者: 七生


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第8章  第9話 大森林




 大森林の行軍において、敵は決してドラゴンだけではない、藪の中や木の上には肉食獣が潜んでいるし、毒を持った昆虫や植物も多い。触手で人間を絡めとって消化して捕食する植物もいる。

 誰とは言わないが某有名パーティーに所属していた騎士官学校出のエリート冒険者でさえ、これらの植物に捕まって衣服を剥がされ「くっころ」状態にされたことがあるくらいなのだ。


 しかも、大森林におけるそれは、動植物ほぼすべてが他の地域の同じ種類の物よりも一回り以上大きい。


 他には、蚊に似た虫を媒介とした伝染病まである。俺たちは、そういったジャングルにおけるアウトドアの知識をセレンから教わりつつゆっくりと進む。


 運河のおかげで直接襲われることはないが、もちろん、ラプトルやディラノらしき鳴き声はよく耳にする。巨大な足跡や遠くに姿を見ることもある。


 エリは今日から、俺やフミと一緒に行動してもらう事にした。まず最初にエリがウインドカッターで木々をなぎ倒してから脇に寄せ、俺とフミで道路と運河を造る。仕上げをセリアをはじめ、何名かの騎士団員たちに任せ、残りの者が警戒に当たる。


 作業がサクサク進むので、うっかり忘れていたが、そういやハープンさんの甥っ子はあれっきりになってしまっていたな。


 この日、俺は昼食後に、ボアを呼んでみた。


 ボアによると、魔法は4種類すべて初級ながらある程度は使えるらしい。瞳も髪の毛も黒に近いダークブラウンなので魔力量もかなりありそうだ。


「ボアが一番得意な魔法は何だ?」


「はい、魔法は4種類使えるのですが、器用貧乏と言いましょうかどれも初級止まりです」


「土魔法はどうだ?」


「はい、土魔法は、使っていて一番楽な気がしますが、使えるのはストーンウォールくらいです。ただ、あまり使う機会がなかったので、自信はありませんが」


 俺は期待で高まる鼓動を隠しつつ、ボアに、道を造らせることにした。


「ストーンウォールさえできれば、あとはそれの応用だ。この道の先を、造ってみてくれ」


 俺は、ボアに付きっ切りで、土魔法を教え込む。まる半日かかって、ボアは道路、舗装、運河造りをマスターしてくれた。


 この日は結局、5キロ進んだだけ。手持無沙汰の騎士団は、備品の整備と点検を繰り返すはめとなった。



 翌日、俺はエリを呼び、ウインドカッターをどこまでできるか試させることにした。


「いいか、エリ、全力でたたき込め。この後、お前が失神するくらいの魔力をすべてだ。いいな」


 俺の言葉に発奮したエリは、大森林の木々を次々と伐採していく。大森林の行き止まりである、丘陵地帯のあたりまで、木々を伐採し、木々を両脇に除けた後、エリは気絶。エリは少ない魔力量を制御して、効率よく発出しているとのことだった。この子は俺よりセンスがあるだろう。今後、魔力量が増えれば大変楽しみである。


 次はボアだ。エリが伐採してくれた距離はおよそ50キロ。真ん中の道路を整地し石畳で舗装させる。

ボアは、20キロの道を舗装しきったところで、気を失った。おそらく、最後の何キロかは、気力でしてくれたに違いない。2人ともなかなか根性がある。


 俺はフミと共に、両脇に運河を造り、仕上げを騎士団に任せる。ここまでの工事を終えた俺たちは、今日は15キロ進んだ地点で泊まることにした。工事をしながらの旅というだけでなく、訓練を重ねながらの“行軍”のため、進むペースは遅いが、騎士団の皆は、思いの外、大変そうである。



「やれやれ、ようやく終わったな」

「ウチの団長、人使いが荒いよ」


「しっ、聞こえるぞ」


 



「なあ、サラ」


「ロディオ様、何でしょうか」


 俺の言わんとしていることをなんとなく感じているようなサラが、少し嫌そうな顔をして答える。俺も、騎士団のことは、サラたちに任せている以上、あれこれ口出ししない方がいいような気もする。


「……いいや、何でもない。ご苦労様」






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