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転生社畜の領地経営~異世界で嫁たちとホワイト国家を建設します~  作者: 七生


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第8章  第2話 騎士団採用試験

 ご愛読ありがとうございます。ようやくユファインにも、騎士団ができそうです。



「いくら、私たちが、今までろくに男性にモテてこなかったといっても、これはひどすぎる!」

「いや、スタイン家やギルドはそんなこと、一言も言っていないぞ」

「サラやマリアはともかく、こんな噂を流されては、私たちはお嫁にいけないじゃないですか!」

「ひどいかもですう」

「どうしてくれるんですか、騎士団長になってからというもの、男の人は私から目を逸らすし、女子にばかり言い寄られているんですよ! もしもの時は、責任を取ってください!」


「いや、みんな、こんなにかわいいんだから、嫁の貰い手がないなんて、考えられないよ」


 狼狽して発した俺の一言に、セレンが噛みついてきた。


「ロディオ様。そのお言葉は、ご本心なのでしょうか……」


 俺の目からすると、アイドルグループにいてもおかしくないように見えるセレンが、顔を紅潮させながらぐいぐいくる。


「私は、エルフのくせに7等身。醜くて親からも呆れられ、自暴自棄になって家出して、挙句の果てに冒険者となりました。こんな私の事を、かわいいと? 正直、私は殿方から、“かわいい”などと言われたのは、生まれて初めてなのですが……。失礼ながら、セリアもそうでしょう」

「ご自分の発言には責任を持っていただきたいと思います。です」


 俺は正直にかわいいものを、かわいいと言っただけなのだが、2人は、俺がこの場を取り繕うために、心にもない言葉でごまかそうとしていると思っているようだ。

 何しろ、この世界の美の基準は10等身のすらっとしたスタイルのため、特に、セレンとセリアの2人は、美人の範囲から大きく外れてしまっているのだった。


「もし、今回の事で、私たちが結婚出来なかったら、スタイン家、いやロディオ様が責任を取ってください。もし嫌だとおっしゃられるなら、私たちは実家に帰らせてもらいます」


 顔を紅潮させながら、セレンは小さな拳を握りしめて、俺に迫ってきた。


 俺やギルドは、そこまで悪くないと思うんだが……。



「分かった。善処する。特に***と***には、誤解がないよう、よくよく説明しておくから」


「「はううっ!!」」


 両手で顔を隠して悶絶する2人。サラとマリアもピンときたらしく、ニヤニヤしている。



 ともかく、俺とグランは、ギルドにも頼み込んで、『サラマンダー』に関する一連の武勇伝の火消しに努めることになった。





 第一師団長候補のサラは、無事お母さんとも和解。今では、家族4人で仲良く同居しながら、任務についてくれている。何と休日には、母親から料理を習っているらしい。


「最近、姉ちゃん、きもいっす」


 サドルはそう言うが、サラも本人なりに、花嫁修業に励んでいる様だ。お昼は食堂でとらず、料理の練習も兼ねて、毎日自分でお弁当を持ってきているという。たまたま、ランチの時間にサラを見つけた俺が声をかけると、恥ずかしそうに答えてくれた。


「どうせ結婚したら、毎日作ってあげるつもりですから……」


 普段は勇ましいサラが、ベンチで自作の可愛いお弁当を広げている姿は、シュールと言おうか、あまりにも落差がある分、可愛いさもマシマシ。ハープンさんも惚れるはずである。


 よくよく考えてみると、サラの一家は、騎士団長筆頭・執事見習い・教会手伝い・温泉の中居と、皆、我が領にとって、かけがえのない人材ばかりである。


「実は、サラに折り入って頼みがあるんだが……」


 いいタイミングだったので、サラに騎士団の採用試験に関する相談を持ち掛けると、全力で賛成してくれた。サラが言うには、人の向き不向きは厳然としてあるので、実技や学科だけでなく面接も行って欲しいという。自分が面接官になって、直接合否の判定を出したいのだそうだ。


 俺は、サラに主席面接官として、大きな権限を与えることにした。他には、騎士団からセレンとセリア、そして俺の4人。


 それに加えて、副面接官として、スタイン家よりグランとソフィ。ギルド枠としてハープンさんとララノア。教会からマリーと何故かフミ。バランタイン家枠からはクラークさんと、図らずも大所帯になってしまった。皆どこも人手不足で、騎士団への入団からあぶれたものを、それぞれ自分たちの所で採用したいらしい。


 ギルドを通して求人を出すだけでなく、魔法学院や騎士官学校にも求人を出したせいか、今回の募集には、多くの志願者が集まった。志願者はざっと千人に対して、合格者はわずか30人程度の枠である。


 実は、採用条件として、共和国や王国の騎士団と同等の給金に加え、温泉フリーパスなどの特典を付けたら、学生や冒険者だけでなく、現役の騎士団も募集に応じてくれた。ただし、他国の現役騎士団には注意が必要。スパイを入れるわけにはいかない。


 そして、採用試験の予定日を3日前に控えて、ようやく騎士団本部が完成した。ユファインギルドにも負けない大きな石造りの重厚な建物で、裏手には広い練兵場も併せ持っている。サラをはじめ、騎士団長たちは皆満足顔だ。


 試験は裏手の練兵場で体力試験、大会議室で筆記試験を行う。1次試験の合否はその日のうちに発表する予定だ。


 体力試験はこちらの指定した装備品を身に付けて、練兵場を出発。街の外に出てライリュウのいる運河を渡り、森に少し入るなど、およそ10キロの行程を3時間以内で踏破するというもの。装備一式が重いため、これが中々大変なようだ。受験生の中には運河でライリュウに遭遇してパニックになるものもいたらしいが、それでは我が領ではやっていけない。


 この体力試験に合格したのは、全受験者の内、10分の1にも満たなかった。いくら人を襲わないとはいえ、大型のドラゴンが泳ぐ運河を渡らなければいけなかったり、装備として担ぐリュックを重くしたのが原因だろう。中には泳げない者もいたりして、100名以上のリタイヤを出したものの、受験生に大きな事故やけが人が出なくて良かった。


 筆記試験は、体力試験の合格者の中から、文章の読み書きや基礎的な計算が出来るかどうかを試すだけのもので、騎士団学校や魔法学院の卒業生や卒業予定者、及び他の騎士団出身の受験者は免除している。 主にギルドからの冒険者や、一般人に対してだけなので、受験者は50人にも満たず、採点もそれほど手間はかからなかった。



 この1次試験では、受験生、千人余りの内、70名が合格。翌日の2次試験に進む。2次試験は面接で、5日後に合格者を発表することになっている。


 1次も2次も、不合格者は全員、騎士団以外の採用試験を受けることが出来る。今回は、1週間ユファインの温泉と直営店での食事を無料とするカードを受験生全員に配布し、街を満喫してもらうようにした。そして受験生と分かるように、胸に騎士団候補受験生のワッペンを貼る事を義務付けた。


 これで、受験生全員にユファインの良さを知ってもらうと共に、こちらも受験生の素行を見ることが出来る。街の主だった者は全て面接官だといっていい。

 素行が悪かったり、他国からのスパイのように怪しい動きをする者は、すぐに採用試験本部にまで連絡が入るようにしている。


 俺は受験生全員に、あくまで今回は、絞りに絞った選考のため、たとえ落ちたとしても、受験者の実力不足とは限らないこと、さらに3か月後には、2回目の採用試験を行うため、今回縁がなかった人も、興味があれば是非再受験して欲しいということを伝えた。


 30人程度の枠に、受験生が千人以上も集まってくれたのは、採用側からすると嬉しい悲鳴だが、受験生側からすると過酷なことこの上ない。何しろ全受験生の内、合格者は僅か3パーセント未満。当然、大量の不合格者が生まれる。彼らがユファインに対してどのような感情を持つかは、今後のユファインの発展に非常に重要な意味を持つことだろう。


 面接試験では、素行が悪かったり、怪しい動きがあると報告されたものに関しては、情報が共有され、たとえ能力が高そうな人でも「我が領には合わない」という理由で落とすことにしたが、それ以外の人には、出来る限り手を差し伸べることにするつもりである。


 そして、試験は無事終了。受験生が街で過ごしてもらう間、俺たちは、選考会議をすすめた。見事、サラたち3人のお眼鏡にかなったのは、70人中、20人。俺が素行不良者を中心に10人落とした後、彼女たちによって、40人が落とされた計算だ。


 ここにきて急に身を乗り出してきたのはクラークさん。何と、サラたちが落とした40人を、すべてバランタイン家がもらい受けたいという。


「バランタイン家は、相次ぐ引き抜きで、戦力が低下しているものでして……」


 俺としても、それを言われるとつらいものがある。


「いいですよ。それでは、2次の受験生に対して20名を合格。40名に条件付き要相談にして、10名を不合格といたしましょう」


 合格者には早速手続きをしてもらい、条件付き要相談者は、クラークさんから勧誘の説明がなされた。


 結局、クラークさんの説明を受けた受験者は全員、バランタイン家の騎士団への仕官に同意することとなった。待遇はウチの騎士団の方が良いという自信があるが、何しろ騎士団の“格”からいうと、バランタイン家の騎士団の方が上なのだから、当然だろう。


 合格者はその場で宿舎に入ってもらい、翌日から早速、初任者研修に入る。メニューは、先ずは座学でグランからの騎士団概論をみっちり受けた後、街に出て、守衛・巡回・消防・災害救助に関する実地研修。


 その後、サラからの体力トレーニングと格闘術、セリアからは武器や備品の取り扱いの講習に加えて攻撃魔法と、それに対する身の守り方の指導。仕上げにはセレンによる2週間の『竜の庭』でのアウトドアサバイバル実習。



 さすがに、選びに選んだ候補生も、初任者研修が終了する頃には、全員が疲労困憊している様子が見て取れる。


 うちの騎士団は、普通の騎士団とは違い、必要に応じていつでも大森林に入ってもらわなければいけない。それに対する手当は出しているが、彼らにも、十分に心してかかって欲しい。中途半端な者が騎士団に入ると、徒に命を落とすことになりかねないからだ。


 2か月後。研修を終えた新人騎士たちの配属も終わり、ユファイン騎士団が、正式に活動を開始したのだった。



 俺は、騎士団の採用試験応募者には、落ちた者にも、ユファインでの就職口を紹介することにしていた。もちろん、スタイン家で働く者なら、騎士団の採用試験があれば何回でも受けていいし、合格すればいつでも騎士団に入ってもらっても構わないことを告げている。


 こうして、不合格者に対して、様々な形での採用活動が行われ、スタイン家だけでなく、サーラ商会、ギルドの事務職や技能職など、ユファイン全体としては、今回の試験で総勢500人以上の人材を採用することが出来た。スタイン家に採用された者たちは、執事やメイドの見習いから、希望によって、温泉やお土産屋などの店舗スタッフや、直轄農地での仕事、更には守衛や御者や船頭などについてもらった。これで我が領の人材不足も少しは改善されるだろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] アフターケアも大事ですよね!!
[一言] セレンさん、あんなに可愛いのにエルフの基準はオカシイ!
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