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転生社畜の領地経営~異世界で嫁たちとホワイト国家を建設します~  作者: 七生


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第6章  第10話 ドナドナ



「よう、久しぶり!」


 細身のおしゃれなスーツに身を包んだイケメン美丈夫が笑顔で応える。


 俺は久しぶりにレインと再会していた。その場所は、いや、それは、レインが指定したものだから、仕方のないことである。


 ……正直、令和の日本で言うところのキャバクラ店に似ているような気がする。何でもトライベッカでナンバーワンの規模と人気を誇る高級店だそうだ。


「おいおい、レイン」


「何だ?」


「俺は知らんぞ。この後何が起こっても。いざとなったら、俺はレインに連れてこられただけだと自分の身の潔白を主張するからな」


「何だそれ。お前、尻に敷かれすぎ~!」


 ……レインはすでに出来上がっている様である。昼間から飲んでいるようだ。レインらしくもないことだが、何かあったのだろうか……。いや、あったに違いない。


 奥のVIPルームで両脇に綺麗なエルフを侍らせて、満面の笑みで酒をあおるレイン。お前、絶対ストレスたまってんだろ!


 俺とサドルは2人で隅の方で飲んでいる。いや、サドルはこの世界では成人したばかりだが、俺が20歳になるまでは酒類を禁止しているため、飲み物はジュースである。



「本当に大丈夫なんすかねー」


「いいか、サドル。世の中色々あるのだ。今日は社会勉強だ。そしてこのことは、誰にも絶対に秘密だ」


 俺たちは、今後、もし何かあった場合に備えて、レインから距離を取り、店の中でもできるだけ端に寄っていた。息をひそめて目立たないようにしていたつもりだったのだが……。


 そんな努力は、トライベッカでも選りすぐりのエルフ嬢の前では全く役に立ちませんでした……。


 誰だ、エルフなんてタイプじゃないとか言ってた奴は!(反省)





 結局、俺たち3人は夢の様な一時を過ごしてしまった様で、ふと我に返ると、何故か侯爵の屋敷の一室で、マリアの前に正座させられていた。


「レイン様」


 腕組みをしたマリアが静かに口を開く。


「もし、レイン様に何か間違いでもあれば、私は、侯爵様やお父様に何と申し開きをしたらいいか!」


 どこかで聞いたようなセリフである。『何だよレイン、お前も一緒だろ!』と、俺は心の中で突っ込みを入れる。


 ちなみにレインはマリアと婚約を交わしたばかり。レインの羽振りの良さは、マリアの実家からの援助も大きいのだろう。レインがどこか自暴自棄に見えるのも、この婚約と関係があるのかも知れない。


 バランタイン侯爵は、最初はレインに自分の娘を嫁がせようとしたそうだが、マリアが実家をも巻き込んで大反対したのであきらめ、その代わり、マリアを養女として引き取り、自分の娘としてレインと婚約することになったという。


「あんな店に、こんな若い子まで同席させるなんて!」


「あの……俺たちは、レインに案内されて、たまたまあそこにいただけで、悪くないと思うのですが……」


「はい、はいっ! 俺も関係ないっす。むしろ連れていかれた俺は被害者っす」


 マリアはちらりと俺とサドルを一瞥し、ため息を一つ。


「悪くない? 被害者? あんなに楽しそうにしておられたのにですか? これだから男の人は……。もうとっくにフミさんはこちらに向かっています。そろそろご到着の予定ですわ。サドル君の処遇に関しても一任することにしています。サドル君が被害者だというなら、お母さんにでも引き取りに来てもらいましょうか」


「……ひいいいいっ。いいっす、俺は被害者なんかじゃないっす!」


「いっ、いくらなんでも早すぎないか」


「ロディオ様たちがご出発された後、しばらくしてこちらに向かわれたそうですよ。ロディオ様の御身がご心配でたまらなかったそうです。先程、私の所に連絡が入りましたので、現状は伝えておきましたの」





 しばらくして、フミが屋敷に到着。怒声が屋敷中に響き渡り、メイドや執事から使用人に至るまで、俺たちの状況は、あまねく知られてしまった。


 ……。


 ドナ、ドナ、ドーナー、ドーナー……。


 執事やメイドをはじめ、バランタイン家で働く人たちから気の毒そうな目で見送られていた。お願いだから、そんなかわいそうな子を見るような目で見ないで!


 俺とサドルはフミに連行されてトライベッカを後にしたのだった。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん…何か、女の子がみんな可愛げなさすぎる…。
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