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転生社畜の領地経営~異世界で嫁たちとホワイト国家を建設します~  作者: 七生


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第5章  第5話 ユファイン


 俺たちは、トライベッカを出発しユファインに向かう。この旅路は、ドラゴンや猛獣、盗賊たちに襲われることも、嵐やしけに見舞われることもない快適な船路だ。

 たまにライリュウに出くわすこともあるが、彼らは大人しく友好的。どうやら運河に住み着いているらしい親子もいる。

 俺たちのことを、ラプトルやディラノなどの肉食獣から守ってくれる、セーフティースペースの提供者として、尊重してくれているようである。


『アイアンハンマー』の皆さんも、ライリュウたちの迫力に興奮気味だ。


「今度、孫を連れて来たいもんだな」


 ボルグさんがつぶやくと、後の4人も笑顔でうなづいていた。


 そうこうするうちにユファインに到着。おおよその時間しか告げていなかったにもかかわらず、船着き場にはグランが出迎えに来てくれていた。


「旦那様、フーミ様、お帰りなさいませ」


「そちらは、名高い『アイアンハンマー』の皆さんですか。父からお噂はかねがね聞いております」


 俺たちはグランに案内され、『一の湯』へ。久々にユファインのお湯を堪能した後、グランから、開発状況に関する説明を受けた。


 グランは俺たちがいない間に、ユファインの開発をかなりすすめてくれていた。『アイアンハンマー』の皆さんに寛いでもらっている間、俺とフミはグランに案内され、領内を見て回る。俺たちが基礎工事をし終えた場所には、多くの建物が並び、亜人の職人たちが、多数入っている。彼らは期間工として、農閑期に来てもらっているそうだ。


 グランは素晴らしく完璧な執事っぷりで、俺の留守を十二分に守ってくれていたと思う。正直、領主や貴族をグランに丸投げして、俺は毎日、温泉とエールの生活がしたい。フミにそんなことをふと漏らすと、


「それも素敵ですね、でも……」


「でも?」


「こんなに目まぐるしい毎日なのですから、いきなりのんびりとした生活になっても、すぐに飽きてしまわれると思います」


 確かにその通りだと思う。俺が感心して頭をなでてやると、フミは少し顔を赤らめて嬉しそうだ。


「これも、内助の功というものですね」


 フミは「やーん」と両手を頬にあてて、自分の言ったセリフに一人照れている。



 ユファインで俺が考えている税収は、商業も農業もサービス業もすべて売り上げの1割。それとこれは税と言うのかわからないが家賃収入を考えている。つまり、ユファインで商売したい商人は、あらかじめ整備された店舗に入居し、家賃を支払ってもらう。

 

 住む場所も基本は賃貸。2階建ての集合住宅や1戸建てを建築中だ。自分好みの店や住居がいいという人は、区画された土地を借りてもらう。借りた土地の上にどの様な建物を造ろうが自由だが、建設する前と完成後には、俺かグランの許可を必要とするようにした。それに伴いこの世界で広く行われている人頭税なるものは廃止する方向で考えている。


 そして基本、不動産の売買は認めていない。俺の領地でバブルが起こるのは嫌である。


 俺がかつていた元の世界。日本という国には不動産の高騰が一因となったバブルの崩壊と失われた20年とも言われる時代があった。


 その真っただ中で辛酸をなめ尽した院卒文系ロスジェネ世代の俺は、どうしても自分の領地であのような悪夢は二度と起こしたくない。


 グランの話によると、ユファインで店を開きたい商人はかなり多いらしい。俺はまず、その中でも特に優秀な6つの業者に許可を与えることにして他を認可待ちとした。


 最初の商人はこの領地でのスタンダードとなるため、選びに選んで厳選した。何事も最初が肝心なのだ。


 そして、待望のユファインギルドの建物が完成。俺は、ハープンさんとも相談し、ギルドの職員には、人間、エルフ、ドワーフ、獣人をバランスよく採用するようにしてもらった。

 

 俺とフミが新しく完成したギルドに足を踏み入れると、早速ララノアが飛んできた。


「お久しぶりですロディオ様! 私、ここで精いっぱい頑張ります! ですからその……その!」


 セーラー服と、CAを合わせたような、丈の短いユファインギルドの制服が、華奢でちっぱいララノアには良く似合っている。そんな彼女が、両手を握り締めて一生懸命頑張っている。


 いや、こんな衆人環視の中で、ララノアよ、君は何を言おうとしているんだ!


 俺は、生まれて初めて告白されようとしているのだろうか。しかし、もう少しシチュエーションを考えていただきたい!


 フミは、少し距離を取り、じっと俺の方を凝視……。


 どうすんだ俺!


「ララノア」

「はい」

「今度、ララノアが休みの日、クルージングにでも行かないか?」

「はい♡」


「……はあ?」


 顔を紅潮させて俺の腕をつかみ、うれしそうにピョンピョン飛び跳ねるララノアと、眉間にしわを寄せて怪訝な顔をするフミ。そして、ただただ冷汗をかいている俺。


「……ロディオ様、御正気なのですか」


 静かに、しかし着実に怒りの沸点を越えそうなフミ。


「いやいや、フミやグランも一緒だから。ユファインの新しい観光の目玉について、オープン前にララノアの意見を聞きたいだけだから」


 実は、昨日、エルとロイの3人で『キッチン☆カロリー』で食事をした時、俺は彼女たちからエルフについての話を色々と聞いていたのだ。

フミは女の子の日らしく、少し辛そうだったので、部屋でゆっくり休んでいてもらっていた。だからこそ、俺はエルフ女子に関して、色々と突っ込んだことを聞くことができた。


 ただ、あまりにも楽しくて、ずいぶん長い間2人と話し込んでしまった。考えてみれば俺がエルフと一緒に食事なんて考えられない。しかもこんな美人姉妹と共になんて。


 しかし、そこで俺は、エルフに課せられた厳しい掟を聞くこととなる。


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