26 Side:ロイド・オールフォーワン侯爵
Side:ロイド・オールフォーワン侯爵
「なぜだ……なぜだ、なぜだなぜなんだ……。」
牢屋に入れられた私は壁に両手を打ち付けながら自問自答する。
すべては順風満帆だったはずだ。
父が亡くなり、多額の資産と領地を受け継いだ。
領地経営は信頼できる者に頼んであるので今後も安定した収入を得ることができる。
つまり、私は仕事をしなくても優雅な生活を保障されていた。
厳しい父は仕事をしなくても暮らせるのにも関わらず私に仕事をすることを強制した。仕方なく私は、王宮で文官として仕事をしていたが、父が亡くなると同時に辞職した。
仕事なんぞしなくとても生活できれば問題ないのだから。
文官時代の先輩に教わったギャンブルは私の気分を高揚させた。
少ない元手で大きな利益を産むのだ。
一度大当たりを経験してからというもの、いくら負けても、次は勝てる、次こそは……と負ければ負けるほど掛け金も増えていった。
お金ならいくらでもある。
使い切れないほどの財産があるのだ。
それに、使ったとしても収入はあるのだ。お金は使ってもどこからともなく湧いて出てくる。
だから私はお金の心配などまったくしていなかった。
気の赴くままギャンブルに明け暮れた。
娘のエレノアは皇太子妃としてお金をかけて育ててやっている。
エレノアさえいなければ、もっとギャンブルにお金をつぎ込むことができたのに。アネモネはエレノアを皇太子妃として育てるときかない。
どれだけの教育費がかかっているというのか。もったいない。
仕方がないから、エレノアには教育費だけをかけることにした。それ以外のものはすべて最低限にするようにと言い伝えている。
エレノアがドレスを欲しがろうとも外出したいと言おうともすべて却下するようにと伝えてある。これ以上、エレノアに金をかけていたら私がギャンブルする金がなくなってしまうからな。
ギャンブルする金はあればあるほど良い。
そして、エレノアはもうすぐ皇太子妃になるはずだったのだ。
皇太子妃になれば公費として莫大な金額が皇太子妃に割り当てられる。それを今までかかった養育費としてエレノアからもらう予定だった。
それなのに、それなのに、だ!!
なぜ、エレノアは皇太子妃になることを拒むのだろうか。
今まで金をかけて育ててやったのに、こんなに恩知らずな娘だとは思わなかった。
私は今まで仕方なく金をかけてきたエレノアが自分の思い通りにならないことに腹が立った。
エレノアの教育に多額な費用がかかっているというのに、さらに外出用の豪華なドレスをねだるとは、厚かましいにもほどがある。
侯爵家が傾きかけているのだって、エレノアの教育費用の所為だ。そうに決まっている。
私は侯爵家として害にしかならないエレノアを追放したはずだ。
追放したはずなのに……気づけば私は牢の中だ。
私がなにをしたというのだ。
私はなにも悪くないというのに。
悪いのはすべてエレノアなのに……。
そう訴えかけても誰も彼もがそっぽを向いてエレノアの味方をした。
そして、誰も私の言い分になど耳を貸してくれぬまま、私は鉱山での強制労働をすることになった。
私の人生は順風満帆だったのに、すべてエレノアに壊されたのだ。
だが、人は私に自業自得だという。
解せぬ。




