20
「ちょっ!!あなたっ!!それは困るわ。エレノアは皇太子妃にならなければならないのよ。侯爵家を出ていけだなんて……。皇太子妃の件はどうなさるおつもりですのっ!!」
お父様の縁を切って侯爵家から出ていけ発言を聞いて、お母様がお父様に詰め寄りました。
お母様の顔には必死さが色濃くでております。
「……オフィーリアがいるだろう。エレノアがこんなにも我が儘だとは思わなかった。オフィーリアには皇太子妃として苦労をかけさせたくはなかったが、エレノアがダメな以上仕方がない。」
「そ、そんなっ……。ダメです!ダメですわ!!オフィーリアは伯爵家に嫁ぐのです。オフィーリアに皇太子妃の重責を背負わさせるだなんて、そんなことできませんわっ!」
「まあ、なんてことなの。お父さま、そうよ。私こそ皇太子妃に相応しいのよ。エレノアお姉さまではなくって私を皇太子妃にしてくださいませ。」
「……。」
お父様とお母様とオフィーリアの様子を私は他人事ながらに見つめていた。
正直、もう皇太子妃の座なんてどうでも良いのだ。
今まで皇太子妃になるしかないと思い込んでいたけれど、皇太子妃になることだけがすべてではないとオフィーリアに教えてもらった。オフィーリアと一緒に観劇に行ったのが忘れらない。
「エレノアは侯爵家から切り離すっ!今までだって、皇太子妃になるから仕方なく教育費を出していたんだ。皇太子妃にならないのなら、エレノアは不要だ。」
「そんなっ!!お考え直しくださいませ!エレノアが皇太子妃にならなければ、我が侯爵家の借金が返済できないではありませんかっ!」
「オフィーリアがいるだろう。オフィーリアが皇太子妃になれば良い。」
「それはなりませんっ!オフィーリアにいばらの道を歩ませるなど……。オフィーリアには裕福な伯爵家に嫁がせる予定ですわ。」
「私は皇太子妃になることに賛成だわ。お父さま、私が皇太子妃になってみせますわっ!」
……借金?
オールフォーワン侯爵家には借金があったというの……?
確かに潤沢な資金はなかったが、借金までしているとは思わなかった。
借金をしているから、私はドレスを一着しか持っていなかったというの?
借金があるから、私は外出できなかったというの?
借金があるから、私はお茶会を開くことも参加することも出来なかったというの?
「……借金とはなんでしょうか?お父様。少なくとも3年前に見せていただいた資料では我が侯爵家に借金などはありませんでしたよね?」
「……っ!おまえの教育費に金がかかっているのだろう!!口出しするなっ!」
「お父さま、お母さま。実は私知っていますのよ?お父さまがギャンブルにハマって資産を食いつぶしたということを。」
「なっ!!」
「なぜそれをっ!!」
オフィーリアの突然の告発に、お父様もお母様も驚きを隠せず声を上げました。
「エレノアお姉さまが皇太子妃になるのが秒読みだから、と羽目を外しましたね?お父さま。」
オフィーリアがそう言うとお父様は「ぐっ……」と何も言えなくなった。
どうやら図星のようである。
オフィーリアは一見遊んでいるように見えるが、侯爵家のことを良く把握していたようだ。
「それに、エレノアお姉さまが外出用のドレスを一着しか持っていなかったのも、エレノアお姉さまにかけるお金を少しでも減らしたかったからではないですか?」
「そ、それは……。」
「オフィーリアにはエレノアのことなど、関係ないでしょう。」
お母様は開き直ったのか、ふいっとオフィーリアから視線を反らした。
「私は、ずっとずっと不思議だったのです。なぜ、お父さまもお母さまもエレノアお姉さまにだけきつく当たるのか。その反面、エレノアお姉さまには皇太子妃になることを強要していた。なぜです?エレノアお姉さまのことを気に入らないのに、どうしてエレノアお姉さまにお高い教育費を払ってまで、エレノアお姉さまを国の女性代表たる皇太子妃にしようとしたんですか?」
オフィーリアは、無邪気さを隠して真剣な瞳でお父様とお母様のことを見つめる。その姿はオフィーリアが13歳の少女にはとても見えなかった。
確かにオフィーリアがお父様とお母様に投げかけた疑問は私も気になるところだ。
だが、お父様もお母様も口を噤んでしまう。
「はあ。言えませんの?まあ、いいですわ。エレノアお姉さまは侯爵家と縁を切ってこの家を出ていくのは決定事項でよろしいですわね?そして、私は皇太子妃になる。よろしいですわね?」
「オフィーリア、皇太子妃だけは……お願いだから……。」
オフィーリアの発言にお母様は涙を見せながら懇願する。
このようなお母様の姿は初めてみた。
「エレノアお姉さま。エレノアお姉さまも言いたいことがあればこの際にはっきり言った方がいいわよ?」
オフィーリアは私の方を振り返りながら言った。




