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第3話 バドラ村

 つんつんとぽっぺを何かで突かれる感触。


「誰だよ?」


 良い気持ちで寝てたのに。


「クロエだよ」


 幼い女の子の声に目を開けると、レンガ造りの家が立ち並ぶ村だった。

 俺はたしか自爆したんじゃないのか。

 何だよ?

 何が起こった!

 起き上がって服の汚れを落とす。


 ああ、勇者召喚陣の暴走で転移したんだな。


 見渡して気づいた。

 普通の村だな。


 電柱もないし、自動車もない。

 畑の作業している人達は、トラクターなど使ってない。

 まだ。異世界らしい。

 長閑だ。


 クロエちゃんの髪は栗色で目は緑。

 歳は6歳くらいだろう。


「ここはどこ?」

「ラフート、バドラ村だよ。お兄ちゃんは行き倒れ?」


 ええと、ガルー国が、侵略予定のラフート国。

 となると敵の敵は味方。

 味方の国で良かった。

 だが、安心はできない。


 俺はガルー国で召喚された勇者。

 この国から見たら敵だ。

 皆殺しにして逃げてきたことなど関係ない。

 ガルー国の裏切り者、それがいまの俺の立場だ。


 この状況で生き残る事が最優先だ。

 まず、この女の子の問いにどう答えよう。

 田舎を題材にしたテレビ番組を思い出した。

 昔は巡礼がよく通っていたらしい。

 それで、行き倒れなんてのもあったが、親切に食事の世話なんかしてやったと番組で言っていた。


「巡礼だよ」

「巡礼? 分かんない? 聞いてくる」


「ちょっと、待って。俺も行く」

「じゃ行こう」


 女の子に手を引かれ、ある家の前まで連れて来られた。


「お母さん! 巡礼だって!」


 しばらくして扉が開き、俺と同じぐらいの年齢の女性が現れた。

 俺が25歳だから、二十代半ばぐらいというところだろう。


「まあ、巡礼者なんて珍しい。聖地までの旅ですか?」


 ここは話を合わせておいた方がいいだろう。


「そうなんだ」


 さてここからが勝負だ。


「光と共に飛ばされたら、この村だった。どうやら記憶が怪しい。何なんだろうな」

「たぶん、魔法事故に巻き込まれたんじゃないかしら」


 魔法事故か、魔法陣の暴走だから、あながち間違いでもない。


「魔法事故か。そうみたいだな。記憶を失って、やらなくちゃいけないのはなんだろう」

「巡礼者だと戸籍は要らないから、スキルと魔力量を調べる事ね。ステータス・オープンって言ってみな」


 魔力か。

 無いとは分かっているが、期待してしまう俺がいる。

 異世界なら、魔力を使う魔法とかやってみたい。

 覚醒イベントであって欲しい。


「【ステータス・オープン】」


――――――――――――――――――――――――

名前:タイセイ・コガネイ

レベル:6


残金:0円

魔力量:0/0


攻撃力:86

防御力:79

瞬発力:74

持久力:85

知識力:1246

ユニークスキル:

 スマイル100円通販

――――――――――――――――――――――――


 がっかりだ。

 レベルが6になってるのに魔力がない。

 魔法を使ってみたかったな。

 あれっ、スキルがユニークスキルだな。

 チートってことだろな。


「どうかしたのかい?」

「どうやら、魔力が無いみたいなんだ」

「くよくよ、しないことさね。村人だって、スキルはあるけどね。魔力が少ないから、ひんぱんには使えない。無いようなものさ」


「クロエちゃんは魔力がたくさんあるの?」

「うん、ちょびっとだけ」


 平民は少ないのだな。

 レベルで魔力が成長するなら、村人は少ないだろう。

 あと聞いておくことは。


「お金はどういうのを使っているのかな」

「鉄貨と銅貨」


「こういうのかい」


 俺は財布から10円玉を出して見せた。


「大きさと模様が違う」


 そうだよな現地通貨と同じな訳ないよな。

 お金は使えない物として考えた方がいいだろう。


 そうだ、自己紹介しないと。


「俺はタイセイ。もし差支えなければ、親切にしてもらったお礼に、仕事を手伝いたい」


 仕事はお駄賃を貰いたいからだ。

 善意からではない。

 異世界人が全員敵だと思いたくないが、俺は異分子。

 どうなるかは分からない。

 ウインウインで利用し合う。

 このぐらいの気持ちぐらいで良いだろう。


「私はジェシーさ。仕事なんていいよ。巡礼者は助ける決まりだからね」

「そう言わずに」

「そうかい。じゃ、薪割りをやってもらいましょうか」


 俺はクロエちゃんに案内されて、家の裏にある切り株の前に立った。

 錆が少しある年季の入った斧が置いてある。

 薪は納屋にあるようだ。

 クロエちゃんが運んできてくれた。


 薪を切り株の上に立てて斧を振り下ろした。

 薪は割れずに斧が刺さり、コテンと横に斧が倒れた。

 餅つきで同じようになって、お辞儀してらぁとからかわれた事があったな。


「私とおんなじ」

「力不足って事か」


 腰をいれて、餅つきの要領で。

 薪は割れた。


 柄の端っこの方を持つと威力が上がるが安定しない。

 短く持つと安定はするが、威力が出ない。

 まあ、ちょうどいい所を模索すれば良いだけだ。


 薪割りは二時間ほどで終わった。

 握力がもうない。

 手が震える。

 これでもう今日は他の仕事が出来る気がしない。

 クロエちゃんがジェシーさんを呼んできてくれた。


「ご苦労様。随分と時間が掛かったね」


 ジェシーさんの労いの笑顔。

 ぴこん。


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


「ご苦労さま。えへへ」


 クロエちゃんがはにかむ。

 ぴこん。


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


 とりあえず、200円獲得。

 武器は買えそうにないが、何か物は買える。


「薪割りはなにぶん初めてなんで」


 スマイル100円通販って何だ?

 笑顔を貰うと100円が貯まる。

 それで日本の物が通販できるのは知ってる。


 問題は買った品物だ。

 レーザーポインターを買ったが、どこから見ても日本でありそうな品だった。

 レーザーポインターの威力が、凄かったのはなんなんだろうな。

 物理法則の違い?

 それとも何かあるのか?


 本当に、逃げ出すことができて、良かった。

 召喚した奴らに日本で売ってる商品が知られたら、一生部屋に閉じ込められたかも知れない。

 日本製品は便利だから。

 物を生む金のガチョウみたいに、奴隷待遇でな。

 そして最後は殺される。


 ちっ、お駄賃はなしか。

 まあ、スマイルで200円がお駄賃だな。

 笑顔なんて、感謝でも失笑でも同じ値段。

 所詮他人事だ。

 俺が楽しくて、笑ってるわけじゃない。


 感謝の気持ちの100円と、失笑の100円で同じとはけち臭い。

 そこら辺を加味してくれても良いのに。

 もっとも、おれはどっちでも気にしない。

 気にするのは金額だけだ。


 さて、村での初めての買い物はなんにしよう。

 残金も少ないし、大事に使わないと。

 大事するのは、けっして感謝の笑顔でもらったスマイル100円だからではない。


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