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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十六年度、智香子、中等部二年生編〕

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検分

 報告書をまとめる件は急がないとのことだったので、智香子たちはロスト時に入手したアイテム類の検分に入る。

 ようやく、というか、これまでなにかとバタバタしていて、落ち着いてそうしたアイテム類を点検する余裕がなかったのだ。

 特殊階層、ということで、通常の迷宮で入手可能なアイテムとはちょっと違った種類のアイテムが手に入っているはずだった。

 また、〈スローター〉氏も今回、智香子たちの〈フクロ〉に収納したアイテムについては、所有権を放棄する意思を、世良月を通じて表明していた。

 これは、〈スローター〉氏にとってあの時に入手可能な程度のアイテムはあまり価値がないということなのか、あるいは、図らずもロスト事案に巻き込まれた智香子たちに対するお見舞い的な意味合いを持った譲歩なのか。

 判断に迷うところだったが、おそらくはその両方なんだろうな。

 と、智香子は思う。


 全員の〈フクロ〉からあの時に入手したアイテムをすべて出して、委員会が使用している教室前の廊下に並べていく。

 ほとんどが、迷宮内の他の場所でも普通にドロップするような、ほとんど価値がないアイテムだった。

 迷宮内のどこででも、ドロップ・アイテムというのはそうした傾向がある。

 なんらかの特殊な効果を持つ装備品や武器などは、確率からいえば全ドロップ・アイテムのうちにわずかに一パーセント以内に留まり、それ以外のほとんどはクズ鉄同然の、スクラップとしてしか価値がない金属片にすぎない。

 今回はアイテムの内容自体だけではなく、どんなアイテムが実際にドロップしているのか、その傾向を調べたいという気持ちもあったので、短剣や硬貨などのありふれた、無価値なアイテム類も律儀に並べていく。

「多いのは、短剣とか槍、かなあ」

「直立ネコ型は、弓矢や〈杖〉を使っているのもいたね」

「全体から比べればたいした比率ではないけど、目立ってはいたね」

「ああいう武器を使いこなすヒト型、はじめてまともに相手にしたからなあ」

「そういうエネミーが使っていたアイテムも、できるだけ回収して来たけど」

 そういう、エネミーが使用していたアイテム類は、ほとんどがなんらかの形で汚れていたのですぐに見分けがついた。

 純粋な、ドロップしてからすぐに回収されたアイテムとは違い、そうした使用済みのアイテム類は元の持ち主の体液が付着してしまうことが多い。

 そうして回収したすべてのアイテムを並べ終えるだけでも、かなりの時間を必要とした。


「ええっと、硬貨はいくつかな?」

「鉄のが五十三万枚あまり、銅のが百三十万枚あまり」

「金貨と銀貨がそれぞれ百二十二枚と六百五十三枚。

 この二種類だけでも、たいした財産になるね」

「すぐに全部換金しない方がいいよ。

 それやると、税金ががっとかかるから」

 こうした、迷宮内でドロップする硬貨類は、それぞれの種類ごとに大きさと形状が固定されている。

 つまり、種類ごとにまとめて総重量を計測すれば、わざわざ数えるまでもなく正確な枚数を知ることができた。

 松濤女子の探索部は、それ専用の計測器まで用意していて、智香子たちは今回それを借りていた。

 ロスト時、智香子たちは別に部活中というわけではなかった。

 だから、筋からいえばそうした松濤女子の備品を使用するのはおかしいのだが、そこまで細かいことに目くじらを立てる人もいないので、委員会の先輩に声をかけて重量計測器なども使わせて貰っている。

「財産は、それでいいとして」

 佐治さんがいった。

「問題なのは、実用品の方だよなあ。

 割と、使えそうなのが出て来たし」

 つまりは、なんらかの特殊な効果が付与されている、らしい、アイテム類ということだった。

 智香子の〈鑑定〉に引っかかったアイテム類は、一カ所にまとめてある。

〈鑑定〉に引っかかった、とはいっても、智香子のそのスキルは万能でもなんでもなく、読み取れない情報も多かった。

 せいぜい、

「なんか、おかしそうな」

 程度の疑惑を帯びているアイテム類を、とりあえずまとめているだけだった。

 そのすべてが効果抜群!

 ということはなく、おそらくはほとんどは期待外れの結果に終わるとは思うのだが、それでも数百のオーダーの特殊効果持ちアイテムが集まっている光景は、なかなか見る機会がない。



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