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女子中高校生が部活で迷宮に入るだけ。 東京迷宮_2015~  作者: (=`ω´=)
〔二千十六年度、智香子、中等部二年生編〕

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異変

〈スローター〉氏は、つまり、エネミーの数を問題がないくらいに間引きした今の状態で、後の始末を智香子たちに任せ、実戦経験を積む機会を与えてくれているわけだった。

「ええっと」

 智香子はその場で即答することができず、ざっと周囲の状況を確認してから答えた。

「ここはもう、わたしたちでも対処できると思います」

「では、少し離れます」

〈スローター〉氏は静かな声でそう告げて、直後に駆けだしてあっという間に姿を消した。

 実際、カエル型エネミーの大半はすでに倒されており、生き残りのエネミーもほとんどが麻痺か負傷して、まともに動けない状況だ。

 これから智香子たちが行うのは、エネミーとの対戦というよりは残務処理に近く、手間はかかるものの危険はほとんどない。

 別の場所からエネミーの群れが近づいている以上、〈スローター〉氏が提案してきたように、ここでいったん別行動をするのは悪い考えとは思えなかった。


 残ったカエル型を残らず始末し終えるまでに、さらに数分間を要した。

 エネミーの側はほとんど抵抗らしい抵抗もできない状態だったが、智香子たちの手際が悪かったため、そこまで時間がかかったのだ。

〈ライトニング・バレット〉が命中して感電していた、あるいはなんらかの〈投擲〉スキルを受けて、身動きが取れなくなっていたカエル型を、六人で手分けをして一体ずつ始末していく。

 たまに、見た目以上に健在で、飛び跳ねて体当たりをしようと試みる個体もあったが、手負いでありその勢いは弱く、智香子たちの誰でも簡単にたたき落とすことができた。

 始末をするべき対象が大量に存在したので、智香子たちはなによりも効率を優先した。

 具体的には、地面の上に転がって身動きができなくなっていたエネミーを、片端から踏み潰していった。

 お世辞にも気分のいい作業ではなかったが、こうしないとこの戦闘が終わらない。

 カエル型の血肉が保護服のそこここに付着し、六人全員が酷い外見になった。

 おまけに、迷宮の掃除屋、スライムまでもが屍肉狙いで大量に発生し、生死を問わず地面の上で身動きができないエネミーを透明不定型な体で包んで消化をしはじめる。

 智香子たちとしては、確実にエネミーの命を奪わないと経験値にならないわけで、途中からはそうしたスライムとカエル型を奪い合う、競争のような感じになった。

 気が滅入る仕事だったから、その最中の六人はほとんどおしゃべりをしなかった。

 六人は、黙々と手足を動かし続ける。


 カエル型エネミーをすべて始末し、ポップしたアイテムもほぼ回収し終えた頃、姿を消していた〈スローター〉氏が戻ってきた。

「こちらは、異常なかった?」

 戻ってくるなり、〈スローター〉氏は真っ先にそう確認してくる。

 静かな口調だったが、どこか焦っているようにも聞こえた。

「異常は、特になかったと思います」

 智香子は即答した。

「ところで、アイテムはどうしますか?」

「全部、そちら持ちでいい」

〈スローター〉氏は、心なしか早口になってそういう。

「それよりも、一度娑婆に戻ろう。

 ちょっと様子が変だ」

「なにかあったのですか?」

 智香子も、表情を引き締めて確認した。

「その、異常なことが」

「イレギュラーが出た」

〈スローター〉氏は、はっきりとした発音で答える。

「この階層には出てこないはずのエネミーだ。

 それも、たくさん」

「強いやつ、ですか?」

 即座に、智香子はその点を確認する。

「わたしたちでは、足手まといになるくらいに」

「実力差はともかく」

〈スローター〉氏は、そう答える。

「心理的な抵抗が強いと思う。

 相手は、二本足歩行をする、いわゆるヒト型だ。

 君たち、ヒト型の相手はまだしてなかったろ?」



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