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log89.焼痍銃弾軍曹






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「じゃあ、なによ? その、マンイーターってギルドがリュージのことを個人的に狙ってるっていうの?」

「はっはっはっ! まったく信じ難い話ではあるがな! ジャッジメントブルースの調査によると、そうでたらしい!!」


 呵呵大笑しながら併走してくれている軍曹の言葉に、マコは呆れたようなため息を返す。


「あんのバカ……。過去の遺恨くらい、スパッと払い落としときなさいよ……」

「いやいや、マコよ! これはあくまで現段階の情報を統合し、その上で最も高い可能性のある過程に過ぎんぞ! ひょっとしたら、別口のギルドが彼を狙っているのかもしれん!」

「結局、あのバカが個人的に狙われてるってのは変わらないんでしょ? だったら、誰が相手でも変わんないわよ……」

「はっはっはっ! まあ、その通りだな!」


 マコの辛辣な言葉に、軍曹はまた大笑いする。

 突如護衛を買ってくれた軍曹を前に、マコ以外のメンバーは元より、カレンですら微妙な表情で話をしている二人を見ているしかなかった。


「ただまあ、諸君らにとっては好機と言えなくもあるまい? 相手が本当にマンイーターであれば、倒せれば八万ポイントだ! これを狙わぬ理由はあるまい!?」

「かもねぎ、ってんなら素直に喜んだけどね……。賞金額、五万超えるようなプレイヤーが真っ当に勝たせてくれるとは思えないし」

「無策で突っ込んでも、やられるだけか! その通りだな、はっはっはっ!」

「他人事みたいに……はぁ……」


 マコはもう一度ため息をつくと、妙に黙ったままになっているカレンたちの方を向き、怪訝そうな表情を浮かべた。


「っていうか、あんたらさっきからなによ? 妙に黙って」

「あー……いや。その」


 カレンは軽く頭を振り、気持ちを切り替えてからマコに問いかける。


「……アンタ、こっちの焼痍銃弾(ブラック・バレット)となんで知り合いなんだ? というか、こいつが助けてくれるのは、アンタのおかげかい?」

「はぁ? なによ軍曹。あんたずいぶんけったいな二つ名持ってんのね」

「はっはっはっ! 二つ名なんて、しょせん他人の使う呼び名に過ぎんよ! 私は軍曹! それ以上でも、それ以下でもないよ!」


 軍曹は笑ってそういうと、カレンに改めて説明を始める。


「自己紹介は不要かもしれんが、私は軍曹! 今回は、ジャッジメントブルースからの依頼で、異界探検隊の者たちの護衛任務を任されている! 大船とはいかないかもしれんが、よろしく頼むよ!」

「……そうだねぇー。大船ではないだろうねぇー」


 カレンは乾いた笑みを浮かべる。

 そのまま、CIWSとかファランクスだよアンタは、などと呟くカレンはさておき、コータは不安そうに軍曹へと問いかける。


「リュージは、大丈夫でしょうか……。僕たちのように、どなたかが護衛してくれていますでしょうか?」

「うん? 護衛? 彼にか?」

「? え、ええ」


 軍曹はコータのいったことが理解できないとでも言うように、首をかしげる。

 コータも、軍曹の反応の意味が理解できずに首を傾げながら頷いた。

 そのまま数瞬経ち、何かを理解した軍曹が大げさに何度か頷く。


「――ああ、そういえば今の彼は属性解放もまだか! いや、すまないすまない! 以前の彼の印象が強すぎるせいで、護衛の必要性も考えなかったよ、はっはっはっ!」

「強すぎるって……リュージ君、そんなに強かったんですか?」


 レミの質問に対し、軍曹は笑いながら頷く。


「それはもう! アサ……ああ、彼はこの呼び名は好かんのか? ともあれ、ソロプレイヤーの傭兵で彼の名を知らぬ者はいなかったよ! ノンスキルプレイヤーとしても有名だったからな! 余計に目立ったものだ!」

「ノンスキルプレイヤー?」

「スキル攻撃に頼り切らずに戦うプレイヤーのことだ! かつて覇王とも呼ばれたプレイヤーもそうであったが、ステータスをフルに活用して戦うのが特徴だな! 純粋技量と呼ばれる技術の使い手でもある!」

「……カレンも言っていたが、その純粋技量とはなんだ? 何か、特殊なスキルなのか?」


 幾度か耳にした事のある単語に反応し、暗い表情をしたソフィアが顔を上げた。

 リュージのことが気がかりであるが、居場所の手がかりもいまだにつかめぬ状態が続いているせいでだいぶ気分が落ち込んでいるように見える。

 軍曹はそんな彼女の様子を見て、心配そうに眉根を寄せた。


「君! ……気分が悪いなら、ログアウトすべきだぞ? 無理にゲームをするべきではない。VRMMOは、リアルの体調が明確に反映される。逆もまた然りなのだからな」

「……このくらい、なんてことはありません」

「ああ、心配しないで軍曹。ソフィアの気分が悪い原因は全部あのバカだから」

「ふむ?」

「あのバカがどんな目に合ってるか、不安で不安で仕方ないのよ、この子は」

「ふむ」

「いや、わたしは……!」


 マコの言葉にソフィアは抗議の声を上げるが、軍曹はソフィアが次の言葉を放つ前に先の説明を続けてしまう。


「……純粋技量とは、言葉の通り純粋にプレイヤーの技量が発揮された技だ! これはスキルではなく、プレイヤー自身の技術の結晶といえるな! そこのカレン君の“鋭矢”や、リュージ君で言えば“パワークロス”などだな。システムの穴を……否、システムの本来の仕様を越えることで発揮される、強力な技の数々が純粋技量だ!」

「まあ、早い話がものスゲェ必殺技って解釈で間違ってないよ。ステフル活用なら、人間やめた動きが出来るからね、このゲーム」

「まあ、リュージは現実でも割と人間やめた動きするときあるけど。この世界だと、それが常ってことか」


 マコは一つ納得するように頷く。


「……でも、あたしらと同じ程度のレベルで、マンイーターとやらに襲われて勝てるほどのもんなの? その純粋技量ってのは?」

「はっはっはっ! ……それはわからんが、だが案外何とかなるのではないかな?」


 軍曹は先ほどまでとは打って変わった、静かな笑みを浮かべる。

 どこか遠くを見つめながら、軍曹は呟いた。


「銃弾を避けるなどと、戯言だと思っていたのだがね。刀剣一本で制圧されてしまっては、認めざるを得まいよ」

「……アンタも、あのバカの被害者の一人?」

「被害者というのは心外だな! 私も彼も、真剣に戦った! 被害者などと、まるで私が一方的に殺されたかのようではないかね!?」


 マコの言葉に憤慨した様子の軍曹。何か譲れないものがあるようだ。


「結果として私が敗北することとなったが、次はそうはいかんよ! 必ず撃ち伏せてみせようじゃないか!!」

「ああ、うん。あたしが悪かったわよ」


 マコは頭痛を抑えるように軽く額を押さえる。

 そんな、どっちが被害者だとか加害者だとか、或いは対等かどうかなどといったことはまったくどうでも良い話なのだ。そんなことより、今はリュージのことだ。


「……それで、リュージが今どこにいるかは分かっているんでしょうか?」


 軍曹が少し落ち着くのを待ってから、コータが一つ問いかける。

 その言葉に対する軍曹の返答は、思わしくないものであった。


「申し訳ないが、現在も捜索中でな! そちらは別の者が対応するという話だが、まだ返答が返ってこんのだ」

「そう、ですか……」


 軍曹の返答に、コータは俯いてしまう。

 今も一人で戦っているはずのリュージが、一体どんな目にあっているのか……。

 今や、白組のほとんどすべてが敵といえる状況では、想像もし得ないほどの苦境が彼を向かえているに違いない。


「っ! 見つけたぞぉ!!」

「ム!」


 だが、まずは自分たちの安全を確保せねば、ここでリュージに会うことすらままならない。

 ソフィアたち異界探検隊の者たちを発見した白組のプレイヤーたちが大挙を為して押し寄せてきた。


「「「「「ウォオオオオォォォォ!!!」」」」」

「……思ったんだけど、あたしらと戦ったって向こうにゃ何の利益もないのに、どうしてあたしら狙われてんの?」

「リュージ君のギルドメンバーだからだろう! 捕まえて人質にする魂胆ではないかね?」


 軍曹はマコの疑問に答えながら、右手の義手を構える。


「その良し悪しに関わらず、あらゆる手段を使いたいというものは、星の数ほどいるものだよ!!」

「あ、あれは……!?」


 軍曹が叫ぶ間に、鋼の義手は大きく展開し、その中に秘めていたガトリングガン機構を展開する。

 軍曹の姿、ガトリングガンの威容を見た白組の一人が恐れおののいたように叫び声を上げる。


焼痍銃弾(ブラック・バレット)っ!? 何であいつがここに……!?」

「ハッハッハァー!!」


 叫ぶ暇もあればこそ、その叫び声すらかき消すほどの轟音が軍曹の右腕ガトリングから放たれる。

 ガトリングから放たれた銃弾たちはそのまま白組たちの体にぶち当たり、まるで花火のように真っ赤な炎を炸裂させた。


「ギャァァァァァァァ!?」

「グアハァァァァァァ!?」

「ハッハッハッハッハッハッ!!!!」


 軍曹のガトリングが火を噴くたびに上がる、悲鳴。

 異界探検隊の者たちの行く手は、瞬く間に火の海に包まれ、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。


「………」

「……焼痍銃弾(ブラック・バレット)。ガトリングガンで、炸裂するタイプの銃弾を多用することから、焼け野原軍曹とも呼ばれてる、銃火団(ファイアワークス)一のトリガーハッピーだよ」


 目の前の光景に唖然となるコータに、ソフィアは嘆息付きながら説明してやる。

 ひと様撃ち終え満足し、敵がいなくなったのを確認した軍曹は右腕を元通りに戻して振り返った。


「はっはっはっ! あの程度の雑兵ならわけもない! さあ、進もうか! 足を止めていては、狙い撃ちだぞ? はっはっはっ!」

「……そうね、そうするわ」


 マコは軍曹に引きつった笑顔を返しながら、行く先の方向を変えてアスガルド市街の中を進む。

 ソフィアたちは、そんなマコの背中についていくだけで精一杯であった。




なお、軍曹は錬金術系スキルにSPをガン振りしているため、それほど資金難ではない模様。

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