54話
さて、馬車の中に積まれた積荷は…………ただの壊れた剣などの装備とかモンスターの素材だった。だけど、だけど、何にも欲しいのが無い。なので、どんどん奥を調べる。
「まあ、言っちゃあ何ですが、俺達は砦に物資を運んで魔物の素材を買い取ってる業者なんで、そんな高い物は有りませんよ。それに今は戻る途中ですから」
「じゃあ、適当に貰う…………」
それから探していると、奥の方に小さな女の子が居た。その女の子にはなんと、黒い猫耳と黒い尻尾が付いているじゃないですか。首輪も付いている事から奴隷みたいだ。
「この子は?」
「それは売れ残りです。その子は砦に戦力や世話をさせる為の道具として売りに行ったんですが、幼すぎるって買ってもらえなかったんすよ。そもそも、こちらとしても買いたくもなかったんですが、付き合いが有って買うしかなく…………」
「喋れるの?」
「にゃあ以外は喋れません。言語機能に障害があるみたいで、狂い猫と呼ばれる子です」
狂い猫。危険な香りがプンプンするけど、この子でいいや。猫耳可愛い!
「首輪外したらどうなる?」
「暴走しやす。それはもう」
「じゃあ、この子頂戴」
「いいんすか? 返品はお断りですよ」
「無料だし、良いよ」
「わかりやした」
猫耳少女…………いや、小学生くらいだから幼女か。取りあえず、その子を貰って、熊を解体してくれていた人から肉を貰う。残りは全部いらないのであげる。
「よーし、ご飯だぞー」
「にゃっ、にゃにゃ!」
熊の肉を焼いて、スライスした物を冷ましてあげると貪っていく。ついつい、猫耳を撫でて感触を楽しむ。モフモフ最高。
ご飯を食べたらブラックライトニングに乗って、移動する。
「んじゃ、気を付けてね」
「ちょっ、夜に移動は危険ですって!」
「平気。じゃあね」
ブラックライトニングに乗せてさっさと離れる。ちなみににゃんこは俺の前に抱きつかせている。
お腹いっぱいだからか、にゃんこは直ぐに眠ってしまった。ホバークラフトの良い所はほぼ揺れが無い所だ。まあ、駆動の揺れは少しあるけどね。
3時間も走れば王都についてしまった。流石に早かった。ギリギリ閉門に間に合ったので、そのまま貴族専用の入口から入る。流石に止められるが、ラセルナ伯爵家の紋章が入ったペンダントを見せれば問題無い。なので、そのまま馬車が通る道をブラックライトニングで進んで行く。すると内門が見えてくるので、そこもまたペンダントで通してもらう。そこからは貴族街になるので、衛兵の一人に屋敷まで案内させた。
流石に屋敷に着くと案内してくれた衛兵が屋敷の人を呼んでくる。なので、アタシはブラックライトニングをアイテムストレージに仕舞う。重量無視なので便利だ。
「お嬢様、お早いお着きで…………そちらの子は?」
出て来たのは執事さんと数人のメイドだ。執事の人とは既に会っている。名前はクラウスだ。
「うん。途中で買った」
「そうですか…………」
この国はヒューマン至上主義だから、亜人って滅多に見ないんだよね。見ても奴隷だったりする。この子も親が奴隷なのだろう。特に王都なんかで下手に開放したら即捕まるか殺されたりする。元の世界で犬や猫のように飼うのは問題無いんだけどね。
「父様は?」
「おられません。帰宅は明日になるかと」
「そう。それじゃあ、お風呂用意して」
「畏まりました」
豚が居ないので、今日は安心して眠れる。なので、お風呂に行ってメイドさんに洗われるのを塞ぎつつ、にゃんこと一緒にお風呂だ。嫌がるけど、徹底的に綺麗にさせてもらう。しかし、難関はこの後だった。
「お嬢様、こちらに着替えて貰いますよ」
「え? それは…………」
「拒否はさせません」
メイドさんに無理矢理ネグリジェを着させられたのだ。抵抗は無駄だった。どうせ、もう少しの辛抱だから構わないと諦める。後は寝室のフリルが着いた大きなベットににゃんこを連れて一緒に眠る。
「ああああああああああっ!!」
女性の悲鳴で起きると、壁が凄い事になっていた。そう、無数の深い爪跡があるのだ。犯人は今も綺麗な壁を台無しにしている。
「はっ! この駄猫、それは駄目です!!」
メイドさんは慌てて壁画を取り外す。にゃんこはそれを見て、キュピーンと目を光らせる。
「ストップ、伏せ」
「ふにゃっ!?」
飛びかかろうとした所で、俺の命令によって強制的に伏せ状態になる。
「メイドさん、爪とぎ用の鉄でも持ってきて」
「畏まりました」
取りあえず、にゃんこにアダマンタイトのボールを与えてみると、それで遊びだした。
「にゃ、にゃ、にゃ!」
その姿は完全な猫である。少しして別のメイドさんがやって来た。
「お嬢様、今日はドレスを決めます」
「えっ」
「王様に謁見するのですから、それ相応の服装になって頂きます」
それから、食事を取ったら、メイドさん達に着せ替え人形にされて色々なドレスを着せられた。結局、赤色のゴスロリっぽいドレスとなった。その途中で豚が帰って来た。
「うむ、似合っておるぞ。直ぐにベットへ連れ込みたいわ」
「約束はまだだろ」
「それなら明日に王へ謁見を申込もう。何、王もクレハがプレゼントを用意している聞いたら、ぜひ早く会わせろと言ってきておるから問題は無いぞ」
「わっ、わかった。それより、例のパーティーは?」
「うむ。金をばら撒いて集めたぞ。公爵様も乗り気じゃ。既にメンバーも集まっておる」
「そっか、わかった。それじゃあ、ちょっと待ってね…………」
俺は自分の影を確認する。影からは靴をコツコツと叩かれた感触がした。
「問題無いけど、謁見した日の晩に顔合わせも兼ねてパーティーしたいから、皆を集めてね」
「うむ。任せるのじゃ」
予定よりかなり早くなっているが、既にレティシアが準備を整えているので問題無い。ああ、本当に楽しみだ。工房に忍び込んできた連中を生贄にして開放したステンノ&エウリュアレの力も思う存分使えるしな。




