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クレハの異世界冒険記  作者: ヴィヴィ
真紅の牙
40/57

40話

 






 機械人形を作っていたら、雪が溶けだして、春の気配が近づいて来る時期になっていた。そんな時期に我が家の方にお客さんがやって来た。


「よう」


 そいつはマルスだ。


「おけおめ」


「何だそれ? まあ、お前らにも住民としての仕事だ。雪かきを行え」


「雪かき?」


「そうだ。村の雪を一箇所に集めるんだ。そこで固めて後々、魚の保存とかに使うんだよ。それはギルドで依頼を受けた奴らがするから、お前は家の屋根と周辺の雪を集めて固めておけ。まあ、溶かせるなら溶かしても良いぞ。明日は村の街道に積もってる雪を処理する仕事が出るから、金が無いならやれば良い」


「わかった」


「これで連絡事項は終わりだ。本来なら次に回せと言うんだが、お前ん家が最後だから、気にすんな。ただ、誰かに回せと言われたら、回してくれ」


 マルスは木の板に乗せた羊皮紙に何かを書いていく。


「それは?」


「ああ、これは生存確認と連絡が出来た確認だな。レティシアって子もちゃんと居るよな?」


「うん、居るよ」


「なら問題無いから。んじゃ、精々気張れよ」


 そう言って、マルスは帰って行った。

 俺は4階層に作った自分の工房に戻って、細胞とタンパク質がちゃんと培養されているのかを確認する。ここに有るのはスリープゴウトのタンパク質とハイ・デイライトウォーカーの細胞だ。


「自動培養で問題無い。良し、次はレティシアの所だな」


 工房を見終わったらダンジョンマスタールームへと向かう。そこでは現在、コタツに入りながら点字が付いた双六で遊んでいるエリザ、フィア、レティシアが居る。


「レティ、仕事だよ」


「なんや?」


「雪かきだって。アタシ達2人でやらないといけないから大変だよ」


「せやな…………でも、まだ勝負が…………」


「いえ、終わりですよ。エリザがさっきゴールして、私も今ゴールしました。ですのでレティシアの負けです」


「なんやてっ!! エリザはまだ後1回有ったはずや!!」


「5と6歩進むで11歩進んでゴール」


「私は普通にゴールしました」


「そんなぁ~~」


「じゃあ、敗者は貰っていく」


 俺はレティシアの首根っこを捕まえてずりずりと引きずって行く。幸い、STRは350も有るので、結構簡単だ。この世界でSTRは単純な力。簡単に説明するとSTR1に付き1kgの重さを簡単に持てる。つまり、350kgまでは簡単に持てるという事だ。よって、体重が50kgも無いレティシアなんか軽い軽い。


「痛いからやめ…………いや、痛くないんやけど衝撃がっ!!」


「はいはい。面倒だからアザトース」


 俺の前に空間の歪が現れる。俺はその中に入って、次の瞬間には屋根の上だ。


「寒っ!?」


 一瞬で移動した為にレティシアは寒がって、慌ててミンクの黒いコートを取り出して着る。俺も赤いミンクのコートを着る。


「んじゃ、いっちょ雪かきするか」


「中から?」


「いや、範囲が広いし面倒だから中と屋根は溶かすよ。外をよろしく」


「了解や。終わったら応援よろしくや」


「わかってる。先ずは村までの道を作ってね」


 レティシアが後ろ向きに手を振りながらシャベルを持って防壁から飛び降りて外に出た。俺は火属性魔法で周りの温度を徐々に上げて溶かしていく。取りあえずコートは脱いで。直ぐに熱くなるし。充分に雪が溶けたら、乾かす所までやってしまう。畑の方も収穫物は無いので問題無い。全て、2階層に移してある。ただ、乾かし過ぎないようにタイミング良く処理する。

 この辺の計算も手早く出来るようになった。INTの影響は魔力量だけでなく、魔法、魔術の威力。そして、何より記憶力が増え、計算速度が上がったりする。VITはそのまま体力、ヒットポイントに直結している。運動すれば下がるし、攻撃されても下がる。もちろん、打たれ強さも上がる。素手で壁を殴ってもグローブをしているように痛くなくなる。DEXは細かい作業も器用に出来るようになるな。技術系には必須。


「良し、こんな感じで良いか」


 コートを着て温度を元に戻してから移動する。この魔法には10点使ったが、直ぐに回復するので問題は無い。

 外に出ると3メートルもの高さで積もった雪が見えた。出入り口である門の前は片付けられている。視界の奥に、雪が舞い上がっている所が有るので、そこにレティシアが居るのだろう。

 俺は全力でジャンプしてみる。すると、5メートルくらいの高さまで飛べた。そして、上から確認すると雪の上にはマルスが通った跡だろうソリの跡が確認出来た。もちろん、村に向かって掘り進んでいるレティシアの場所も確認出来た。

 両手を着いて着地せずに慌ててフロートボードを取り出して浮かぶ。下は乾いていないのだから汚いのだ。

 だが、ついでなので家の周りを移動しながら見てみる。


「海の方は問題無いか…………でも、これは不味いな…………せっかくの防壁が役に立たない」


 雪の上からそのまま侵入出来てしまう。だから、俺は家の周りを掘り進む事にした。

 土を隆起させて、雪を盛り上げる。もちろん、盛り上げた土は斜面を作った。これを繰り返すだけで道が出来る。盛り上げた場所の部分は沈下して、そこに雪が流れ込んでくれるので、その場所に固定しておく。

 取りあえず、100メートルくらい間を空ければ問題ないか。いや、高レベルなら簡単に抜けてくる。

 なら、罠を仕掛けて…………いや、駄目だろ。村人が来たらどうすんだよ。仕方無い、攻撃系は諦めて感知系で良いか。

 仕掛け終えたら、レティシアを手伝いに向かった。



 レティシアとの道作りは順調その物で、道はまたたく間に完成した。むしろ、そこからは面白半分に2人で芸術性を競うというか、雪を固まらせて凍らせ、氷の彫刻を作った。レティシアがドラゴンやケルベロスを作り、俺が猫や豹、妖精を作った。出来がいいので出来れば残って欲しいと思う。


「お前ら…………凄い作品だけど、遊んでいるならちょっと手伝え」


 次の作品を作ろうとしていたら、様子見にやって来たフリオに拉致られてしまった。事情を聞くと、ライサさんのお腹が大きくなっているから、雪かきを手伝わせる訳にはいかないらしい。ライサさんが居ない分、火の魔術が使える人は引っ張りだこで、俺が使えると分かっているから迎えに来たそうだ。


「仕方無いな~フリオ君は~」


「なんか、無茶苦茶ムカつくんだが…………」


「ブッ」


 レティシアはネタが理解できたのか、吹いていた。それから、村でお手伝いをして、ライサさんに食事をご馳走になった。ご飯を食べたら直ぐに戻って、エリザ達の食事を作ったのは言うまでも無い。理解はしていたけど、抜け出せなかったんだ。だから、帰ってみたらエリザの口の中から悲鳴が聞こえいても仕方が無かったんだ。良いよね、死なないし。いや、もちろんライサさんに貰ったデザートを渡したら問題無かった。取りあえず、その日から保存の効く料理を作って置いておく事にした。









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