39話
ヘイゼル
保険金の手続き中で、自殺するまでに余った時間を潰す為に始めたのだが、どうせならと残金を全て使い切ってやった。家にある物だけで2、3日は平気だ。その後はどうせ死ぬのだから。手に入ったアイテムはばら撒いてやればいいと思って、ガチャガチャを回した。
ガチャガチャで手に入れたのは種族カードと魔剣ダーインスレイヴと魔剣アンサラーの他にも色々と面白いのが当たった。
それらを使って私が作ったキャラクターは特殊種族である悪魔と竜族の混血だ。クラスも多めにしてある。そして、作ったキャラそのままで転生した訳だ。身長は現実より少し高めの160cmの人型と設定していたので助かった。
さて、産まれた場所だが、そこは魔大陸と呼ばれる場所で、産まれたその日から大量の下級悪魔と殺し合い…………バトルロイヤルをさせられ続けた。
生きるか死ぬかの世界だが、幸いガチャガチャを大量にしただけあって、かなりの強さを手に入れているので生き残れた。攻撃予測線をアンサラーの力で更に絞り、ほぼ確定させた未来にし、ダーインスレイヴで斬り殺す。天賦の才と潜在能力覚醒というスキルによって、はなっから高いスペックを持つ私にとって、下級悪魔など敵では無かった。
この世界に転生して数年はこの馬鹿げたスペックを持つ身体の扱いに苦労したが、慣れればなんて事はない。
こんな殺伐とした生活を送っている。
「ヘイゼル様、魔王様が呼んでるよ?」
先日喧嘩を売ってきた上級悪魔殺したのがバレたか?
「わかった」
使い魔が報告して来たので、私は魔王の元に向かった。
魔王が居るだけ有って、豪勢な城だ。本来は下級悪魔である私が来るような場所ではないのだけどね。面倒だが、ルールに従うしかない。
「ヘイゼル」
竜の角や尻尾を持つ少女、魔王レヴィアタン様が声を発した。
「はっ」
「お前さ~~今日から大悪魔だから」
「はぁ?」
魔王の口から有り得ない言葉が聞こえてきた。下級から中級、上級を飛ばして行き成り大悪魔なのだから、私は悪くない。
「いや~~なんだったかな?」
「アジ・ダハーカです、陛下」
大悪魔がレヴィアタン教えている。
「そうそう、そいつが死んじゃったんだって。老衰とか寿命とか言ってたけど、どうでもいいから放置ね。んで、肝心な事だけど、アンタ、そいつの血を引いている悪魔なのよ。で、血を引いてる奴らは他にもいて、アジ・ダハーカの後釜を狙う訳よ。それだったら、人間が治める大陸で戦わせようって事が決まってね」
「人間界に向かうのは大悪魔じゃないと認められないって事で、大悪魔にして送り出しちゃえって事。それと、あっちに着いたら好きにしていいわよ。私達の敵になるのも、他の候補を殺して力を得るのも、悪魔は自由だから。元々アンタは知り合いから押し付けられただけの預かりもんだし、私の眷属じゃないから」
「分かりました。それでは人間の大陸に行かせて貰います」
「じゃ、手続きはよろしく」
「はい」
それから、宰相の悪魔と手続きしている間、私はウキウキしていた。何故ならここの食事はゲテモノ過ぎるからだ。ああ、アイスが食べたい、パフェが食べたい。クレープも良いな。
「では、これで大悪魔です。それでは行ってきなさい」
「お世話になりました」
こうして、私は魔大陸から転移した。その途中で結界が展開されていた。恐らく、これが大悪魔でないと入れない理由だろう。だが、私にはガチャガチャで手に入れたスキル、結界破壊を所持しているので関係ない。全ての攻撃が結界を破壊出来る。
だから、破壊する。そして、そのまま転移した。
人間の大陸に来てから数年が過ぎた。私は現在、資金稼ぎの為に真紅の牙という貴族の私兵団に所属している。理由は簡単だ。連中の訓練施設に身体を子供化させて入団したからだ。お金が無くって彷徨っていた所を団長に拾われた。その時、エネルギーの節約の為に子供モードだったが、時が経つに連れて成長させ、実力をだんだんと出してきたので怪しまれていない。その途中も色々な仕事をこなしたし、成功率100%だから問題は無い。今は160cmの普通の身体だ。
今は男女合同の宿舎にある食堂でご飯を食べている。
「注目!! 冬が明けたら直ぐに伯爵からの仕事に取り掛かる。実働部隊は準備しておけ。目標はクレハという小娘だが、伯爵側から情報が入り次第動くぞ。これが資料だ。各自、目を通すように。以上だ」
回された資料を見ると、対象の情報が書かれている。年齢は14歳、髪の色は赤色、瞳の色は水色、肌の色は白色、身長は148cm、体重は40Kg。孤児院での身体測定のデータとの事だ。
「…………」
書かれている情報に多数のジョブを所持している可能性が有る。と、明記されていた。戦闘能力はレベル1から20以下。だが、セカンドジョブなら基礎は別としてもその倍は有る。つまり、レベル2から40と考えた方が良い。サードジョブならばレベル3から120だ。
「有り得ないか…………」
条件は生きたまま確保。足は無くても問題なく、手は無くすなとの事だ。面倒な仕事だ。転生者の可能性が有る存在を生きて捕えろというのだから。まあ、私は様子見と行こうか。転生者かどうかで判断しよう。




