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クレハの異世界冒険記  作者: ヴィヴィ
はじめてのダンジョンアタック
37/57

37話

 





 さて、皆様お元気で新年をお迎えのことと存じますが、この度目出度くダンジョンマスターとなりましたクレハです。って報告したらどうなるんだろうね。しないけどさ。あっ、もちろん、まだ新年じゃない。まあ、もう直ぐだけどね。

 あれから数日が経ち、ダンジョンマスター室でくつろいでいる。


「さて、ダンジョンの初期化も終了したし、使われたDPも戻って来た」


「せやな。それでどないすんの?」


「問題はダンジョンをどんなタイプにするかだよ」


「せやな…………やっぱり、冒険者を招き入れて殺してレベルアップするんが普通なんやろ?」


「そうですね。それがオーソドックスです。他にはモンスターの女性を召喚して妻や性奴隷にして引きこもってるダンジョンマスターもいます。中には獣ランドとか作ってる人もいますね」


 ケモナーは存在しているのか。もふもふ天国…………じゅるり。


「入口は一応、変えられるんやろ?」


「はい。設置したままですから。今はあの扉とこの扉を繋げています」


 ちゃんとダンジョンの看板は降ろして、扉も解析している。出来れば空間移動のゲートが使えると便利だし。


「やっぱ、作ってから人の多い所に移すん?」


「いやいや、そんな面倒な事はしないし、ここに固定しておくよ」


「「?」」


 二人はわからないみたいだ。


「アタシはこのダンジョンのレベルなんて上げる気ないよ?」


「え?」


「いや、この立地から考えて、アタシ達にどんなメリット有るか。これを考えたら、先ずプレイヤーだからダンジョンのレベルを上げなくても外に出れる。ダンジョンのレベルを上げるとステータス強化は確かに入るけど、こっちとらプレイヤーで元から強いし、それほど必要がないでしょ」


「確かにそうやな」


「で、でもっ!! それじゃあいったいここをどうする気ですか!!」


 フィアが焦ってるね。それにここをどうするだって?

 そんな物は決まっている!!


「アタシは魔導技師だ!!」


「わかってますよ!!」


「なら、魔導技師に必要な物はなんだかわかる?」


「技術と知識もそうやけど、やっぱり…………ああ、そうか。そりゃ秘匿した方が儲かるわ」


「でしょ」


 レティシアは気付いたみたいだ。俺が何をしようとしているのかを。


「その他に必要な物…………まさか、資源ですか?」


「そう。つまり、このダンジョンをアタシ達の植民地…………資源採取所にする!! ついでにトレーニングも出来るよ」


「せやな。ダンジョンマスターが自分で増やしたのを狩ってレベルアップしたんやから、うちらもできるのは道理や」


「この人達外道です!! 私のダンジョンがぁ~~~~~~~」


 頭を抱えて泣き出すフィア。そりゃそうだよね。資源の生産地にしてダンジョンらしい事しないんだから。


「大丈夫だよ、フィア」


「?」


「ここは資源地として使うんだから、普通のダンジョンは違う所に作れば良いんだよ。もっと立地の良いね」


「そっ、それって…………」


「有る程度育ってるダンジョンをうちらが攻略してそっくり貰ったらええもんな」


「その通り。それにレティシアは死なないプレイヤーだから、ダンジョンに単身突っ込んで攻略しても問題無いし」


「うわっ、非道い事言われてるけど、その通りやな。むしろ、その為にあげたんやし」


「この人達最低です!!」


「だって、この方法が一番効率良いしね」


 危険もなく、安全に資源を手に入れてお金を稼いで装備を整える。そして、よそのダンジョンを攻略して頑張って成長させた高いダンジョンを貰う。普通なら駄目な行為だけど、こっちが仕掛けるのは生存戦争だ。いかに効率良く利益を上げつつ、相手に悟らせないかだ。


「んじゃ、クレハの欲しそうな鉱石が出るゴーレムやな」


「後は山羊。山羊の悪魔が良いかも」


「バフォメットとか、無理やって。スリープゴウトで諦めとき」


「ちぇ。スリープゴウトってどんなの?」


「なんや、衝撃を受けると催眠効果の有る霧を出すみたいやで」


「面白そうだね。じゃあ、3階まで作ろうか。フィア」


「はいはい、わかりました、手伝いますよ」


 投げやりに言いながらも、作業を手伝ってくれる。御蔭で1階、2階、3階の階段が設置出来た。

 階段が有るのは小部屋で、その部屋の壁は土で出来ている。


「広くしないんですか?」


「うん。レティ、お仕事だよ」


「そうやな。んじゃ、いっちょやりますか。でも、手が足りへんな。クレハ、さっさとヴァンパイアを召喚しとこ」


「そうだね。フィア、召喚はどこですればいい?」


「こちらです」


 案内されたのは隣の部屋。そこには儀式用の魔法陣が壁や床に描かれている。


「そちらでお願いいたします」


「わかった。もしもの為にレティは待機してて」


「せやな」


 一応、こちらもステンノを呼び出して、周りにクトゥグア達5機を呼び出してチャージしておく。


「モンスターカード、ヴァンパイア。誓約によりダンジョンマスター・クレハの名の元に汝を召喚する。我が前に来たれ」


 モンスターカードに書かれた呪文を言うと、魔法陣の中心に風が集まり、次第に黒い霧が湧き出してくる。そして、だんだんと重圧を感じるようになり、それがどんどん跳ね上がっていく。


「これ、真面目に相対してたら死んでたかもね~~~」


「無茶苦茶危険そうやね」


「デコイに引っかかってくれて助かった」


「それはそうですよ。今から召喚されるヴァンパイアは特殊な個体でしたし、思いっきり生贄使って、借金までして強化していますからね」


 現れたのは小さな140cmくらいの金髪少女。ただ、その目には紫色鉄製の拘束具アイマスクに赤い目玉の様な魔法陣が描かれた物を着け、両手両足には手枷と足枷、首には当然のように首輪が嵌められている。そして、裸。


「うわぁ、これは非道いね」


「そやな。酷すぎるわ」


「あっ、同意しますけど拘束具は解かないでくださいね。特に目を開放すると死にますよ」


「どんな危険な存在やねん」


「魔力を吸収する吸魔の魔眼持ちで、ハイ・デイライトウォーカーですから。外した途端、従属の力を無効化して襲いかかってきます。弱点無しのハイ・デイライトウォーカー相手に魔力無しの肉体的な強さのみで打ち勝てるならどうぞ」


「「無理無理」」


 プレッシャーからして半端ない。ハイ・デイライトウォーカーって事は真祖だし、相手にすらならないだろうな~~~。


「外見は?」


「拘束具以外は前マスターの趣味です。この方はヴァンパイアを召喚する際に自棄になって借金をしてまで高価なランクアップアイテムを沢山使って、運が良いのか、悪いのか、封印状態のこの方が現れました。それでも召喚隷属と隷属強化のスキルが無ければ殺されていたでしょうね」


 召喚隷属は召喚した相手を強制的に隷属させるスキルで、隷属強化は隷属している存在の強化と召喚隷属自体も強化している。このダンジョンマスターの召喚隷属と隷属強化はレベル4。チートの伝説レベルで強化しても支配しきれない化け物という事だ。


「ちなみに疑問なんだけど、借金ってどうなるの?」


「え? それはもちろん、クレハ様が支払わなくてはいけませんよ」


「おいっ!!」


「いや、だって…………引き継ぎましたから」


「聞いてないよ!!」


「聞かれてないので、言ってません」


 こいつ、やってくれる。システムの事なんてわかるか。まあ、ちゃんとこんな事もあろうかと、言い訳も考えてますよ。


「まあ、払わないけどね。だって、そんなの知ったこっちゃないし、アタシとアイツは別の存在。端末が同じ? こっちは初期化して受け取るって言ったんだし、モンスターカードはクリア報酬だからね。それも引き受けさせられるなら、ダンジョンマスターやめればいい」


「では、この方を売って…………」


「え? この子は貰ってくよ。報酬だもん。アタシの物。というか、そもそも借金なんて無いよね。有るならダンジョンを初期化した時点で戻って来たDPがマイナスになってるなら、まだ分かるけど、それすらなかった。つまり、そっちとしてはアタシから存在しない借金を回収しようとしている事だよね?」


 鎌を掛けてみる。


「はいはい、そうですよ。前のマスターの借金は私が立て替えさせられるだけです。まあ、評価がその分下がるだけですけど…………あ~あ、せっかく借金で考えを直させようと思ったのに…………まあ、いいです。来年中にダンジョンをもう一つ支配してくれれば問題有りませんし」


「支配できなかったら?」


「私が神様に消されます。ええ、役立たずの烙印を押されて殺されますとも」


「クレハ、攻略したげよう。今からウジウジされたり、仕事に身が入ってくれへんと迷惑やし、うちらの目的にもそってるしね」


「まあ、元からそのつもりだしね。っと、召喚が完了したか」


 魔法陣を見ると、完全に終わったのか、魔法陣が沈静化している。そして、ヴァンパイアの少女が立ち上がってこちらを見てくる。


「貴方が私の新しいマスターか?」


「そうだよ」


「なら、従おう。だから、私に血をくれ」


「じゃあ、うちの血をあげるわ」


「良いの?」


「どうせ死なへんし、ええよ。はい」


 レティシアが少女に近づいて、腕を差し出した。少女はその腕に噛み付く。普通なら牙なんて通らないのに、少女の牙は何事もなかったかのように突き刺さる。少女はそのまま血を飲んでいく。そして、瞬く間にレティシアが干からびて死んだ。


「レティシアっ!!」


「大丈夫やで」


 瞬時に横に現れたレティシア。こっちは何事もなかったようにピンピンしている。


「まだ、足りない…………もっと、もっと、くれ…………」


「後どれくらい欲しいん?」


「5回」


「復活できる回数って指定あんの?」


「外で死ぬのならまだしも、ダンジョンマスタールームですので無限です。経験値も入りませんけど」


「じゃあ、あげるわ」


 それから、レティシアは死んでは生き返ってを繰り返した。


「良いの、レティ?」


「いや、吸われれば吸われる程力が強化されてんねん。問題あらへんよ」


「あっ、そ」


 呆れた表情をして、レティシアを見送る。それって、ちょっとずつとはいえ吸血鬼化してるって事だからな?


 落ち着いたようで、プレッシャーも何もなく満足気な雰囲気を出す少女。


「そういえば、名前は?」


「エリザ。前のマスターはそう言った。昔のは覚えていない」


「なら、エリザでいいか」


「それでいい」


「じゃあ、お腹もいっぱいの所で最初のお仕事は…………部屋掘りです」


 それから、俺達は部屋を掘って掘って掘りまくる。DP節約の為に自分でダンジョンを広げるのだ。エリザはエリザで楽しそうに掘っていた。









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