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クレハの異世界冒険記  作者: ヴィヴィ
はじめてのダンジョンアタック
30/57

30話

 





 帰宅した俺達は早速風呂に入って眠りに付いた。プレイヤーと戦うのはほぼ総力戦のような感じだ。連中はかなり強いのだろうから。

 ゆっくりと次の日を丸一日休憩に充てて何とか疲れが抜けた。

 だから、クエストを改めて見ると、生贄の数は51人で止まっていた。殺せなかったのも考えると総勢53人の大所帯だったようだ。御蔭で俺は魔法適性カード3枚とスキル強化カード2枚を手に入れた。使った分もあるので、実際は魔法適性カード2枚、スキル強化カード1枚だ。

 他にも多数の剣と鎧、お金や宝石などを手に入れた。


「剣は量産品の塵芥か…………潰して鉄にしよう」


 柄などを外して抜き身の刀身を溶かして鉄の塊に変える。そして、それを近くに置いておく。

 次に魔法適性カード2枚を取り出して、何が必要かを改めて考える。

 現状で俺の使える魔法適正は火属性と光属性の2つ。先ず、これからを考えると拠点作成などに使えそうな土属性。これが有ればこの自宅を更に強固にも出来るし、防壁を作ってそれを盾にしながら撃つのも楽しそうだ。何より、金属を生成できるのが使えそうだ。あの男も土属性を持っていたしな。という事で土属性を決定。

 残り一つはテンプレでもある時、空から選ぶのもいいかも知れない。これの内容は時が時間を操る属性で、空属性が空間を操る属性だ。後、候補としては雷属性だな。ステンノ&エウリュアレに纏わせて超電磁砲として放つのも楽しそうだ。空間の利点は転移が一番大きい。俗に言うどこでも行けるドアみたいな物だ。だが、ここは悩む。空間でいざという時に逃げるのも便利なのだ。死なないなら雷属性一択なのだが。


「クレハ、ご飯やけどどないする?」


 リビングの方からレティシアの声が聞こえて来る。この頃、食事などの家事は任せっぱなしになっている。


「ん~食べるよ~~お腹すいたし~~」


「じゃあ、手を洗っといで」


「は~い」


 井戸で手を洗った後、瞬時に体温を上げて水滴を蒸発させる。その後、リビングに向かう。


「今日のお昼ご飯は?」


「何が入ってるかわからないおにぎりや」


「…………」


 お皿の上に何個もおにぎりが置いてある。それは均等に並べられて見た感じではわからないようにされている。


「海苔は無いから、手づかみで行くんやで。もちろん、お残しは許さへんで」


「のっ、残したら…………?」


 ニコリと笑ったレティシアは、おにぎりを掴んだ手を上げる。


「こうや」


 手にかかった力で急激に圧縮されるおにぎり。先程までより明らかに小さくなって、一口サイズまでなってしまった。レティシアはそれを口の中に放り込んで粗食する。


「いっ、頂きます…………」


 おにぎりの一つを手に取って、両手で抱えながらかぶりつく。塩加減もいい感じで味事態は美味しい。はむはむと食べて行くと、塩焼きされた魚の切り身の味がした。これは当たりみたいだ。

 もう一つ手に取って食べてみる。途中までは美味しかった。ただ、具材が口の中に入って少しすると急激に舌が痛くなった。そして、まるで口の中が火事の様だ。


「実は外れが一個入っとってな。唐辛子を1個みじん切りにして野菜と炒めた物が入ってるんや」


「かりゃい~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!! みじゅっ、みじゅ~~~~~~~~~~ごくっごくっ」


 急いで水が入ったコップを取って、飲んでいく。それでも足りなくて、水差しから直接飲む。

 何とか収まって来たので、原因である内部が赤くなっているおにぎりを見た後、凶器を作ったレティシアに恨みの篭った視線を向ける。


「クレハは辛いの苦手なんか?」


「げんどがありゅ~~~!!」


 まだ舌がうまく回らない。レティシアはそんな俺を微笑ましそうに見ながら頭を撫でてきた。


「カワエエな~~~」


「撫でるにゃ~~~!!」


「残念や。それと、これはうちが貰うで」


 レティシアは俺がかじったおにぎりを掴んで、信じられない事に自分で食べてしまった。


「うん、美味しいやん」


 絶対味覚が変だ。あんな凶器をうまそうに食べている。


「うちは辛いものが得意や。この頃全然食べてへんかったから、ちょっと食べてみたくなってん。これからはクレハのは別にするから、安心してな」


「こくこく」


 是非そうしてくれと、何度も頷く。それほどにこれは辛い。口の中がだんだんと酷くなってくる。そう、現在も続いているのだ。


「ひーりゅ」


 光属性の回復魔法を使う程にだ。これから生産するというのに、大事な魔力を舌の回復に使うとは思わなかった。しかも、なにげにこれが初の回復魔法だ。


「せや、クレハ」


「…………何…………?」


「ごめんって。機嫌直してえな。これとなんか交換してあげるから」


 レティシアが見せたのは魔法適正カードだった。


「うち、1枚余ってんねん。属性は闇さえとればほぼ近接戦闘のうちには問題あらへんし。スキル強化カードの方が欲しいねん」


「しっ、仕方無いな~~レティがどうしてもって言うなら、交換してあげても良いよ…………」


「じゃっ、やっぱや~めた」


「あっ…………」


 つい、手が伸びてしまう。遊ばれているとわかっているのにだ。くっ、物欲には逆らえないというのかっ!!


「ほんまカワエエな…………はい、どうぞ」


「ん…………ありがと」


 意識に反して口が勝手に動く。時たま2番目の私が出るようだ。ちなみに1番目は前世、2番目は5歳までの私。そして、現在の3番目の内面俺とアタシの外というゴチャ混ぜ状態が続いている。はやく性転換薬を探さないと行けない。


「はい、これ」


「ありがとうや」


 取りあえず、俺はレティシアにスキル強化カードを渡す。そして、俺は空属性適正と雷属性適正を習得した。これでクトゥグアの火属性を除いて4種類の遠隔操作浮遊式小型魔導砲が作れる。それも普通じゃ無い人型タイプのをだ。人の形をする理由は簡単だ。武器が持てるし、何よりその方が俺にとって操作しやすいという事だ。複雑にはなるが、自分の身体と同じでイメージしやすいと思うのだ。


「さて、名前なんにしようかな~~シュブ=ニグラス、ノーデンスとか面白そうだけどさ~~~」


「随分と物騒な名前やな。まあ、頑張ってな」


「うん」


 食事を終えたら、さっそく製作に入った。







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