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クレハの異世界冒険記  作者: ヴィヴィ
はじめてのダンジョンアタック
27/57

27話

 




 盗賊狩りをするとなったら、色々と準備をしなくちゃ行けない。初の人殺しの事も考えて、出来れば完封したい。その為、コートを着て雑貨屋まで出向いたのだが…………しまっている。まあ、雪がかなり積もっているし、仕方無いのだろうけど。


「おい、何をしている」


「ん?」


 上を見ると、屋根の上で雪かきをしているニウスが居た。


「ああ、ちょうど良かった。買い物したいんだけど、いけるかな?」


「買い物か? 別に食料以外なら構わないぞ。というか、それは何だ?」


「これはフロートボードって言って、地面から1、2メートルくらいまでなら自由に動かせるんだ。高度とかは魔力しだいだけど」


「売ってくれ」


「ヤダ」


 フロートボードなんて誰が売るか。独占して販売すれば儲けも大きいけど、数を作るのが面倒だしね。


「ちっ、まあ今度でいいか。それで、何が欲しいんだ?」


「スプリ草をありったけ」


「何に使うんだよ…………まあ、良いぞ。確か、35束なら有った」


「んじゃ、それ全部」


「一つ100Rだから、3500Rだが良いか?」


「良いよ。代金は貰ってない塩の分から引いといて」


「わかった。ちょっと待ってろ」


 ニウスは屋根から室内に入って、少しした後に同じ場所から出て来た。


「ほら」


「確かに。それじゃ、帰るね」


「おう。それと、1階は埋まっちまうから用事があるなら2階に来てくれ」


「は~い」


 フロートボードを反転させて、雪の上を滑って行く。板の方にはスノーボードと同じような細工もしてあるので、滑る滑る。

 帰ったら、早速準備する。作成するのは香炉と風の魔術を込めた魔導器だ。それも術式を刻んだ徹底的な奴。


「ただいまや」


「おかえり。そっちはどう?」


「バッチリや。連中の所在地がわかったで。ギグル山の奥に有る洞窟を改造して住んでるみたいや」


 レティシアが地図を広げてギグル山の奥の方を差した。


「出入り口は何個?」


「1つだけやと思うで」


「了解。でも、保険を打っておくか…………数は4個ずつでいいか。それと、扇風機も欲しいな」


「何する気なん?」


「完全犯罪?」


 ある意味では間違い無い。しっかりと準備して向かう。





 次の日、盗賊を狩りに行く為に俺とレティシアはロシアの帽子であるケーバ帽子のような物を被って、暖かいコートを着ながらフロートボードに乗って、アデール村から出て行く。誰にも見られないように出るルートは自宅裏からチェリム森林を通って行くルートだ。もちろん、雪が降っている為にゴーグルは着用している。


「しかし、ファンタジー世界でスノーボードが出来るとかおもろいな」


「木々の間を縫って高速で滑るなんてあっちじゃ無理だしね」


 俺達は木々の間をかなりの速度…………時速60キロくらいで進んでいる。そう、高い身体能力で無理矢理進んでいる。会話も風の魔術を利用して相手に届けている。気分はどこぞの小学生探偵映画版だ。あの映画はかなり微妙だったが。


「んっ。レティ、前方にアイスグリズリーがいるよ」


「狩ってく?」


「いや、あれって勝てるのかな…………」


「魔物やけど、行けると思うで?」


「なら、やっておくか」


 クトゥグアとステンノ&エウリュアレを召喚する。これだけで魔力が300減った。内訳はクトゥグアが200だ。3階層に放ったクトゥグアの経験値は残念ながら手に入らなかった。


「弾丸は徹甲弾だし、問題無い。レティ、先行するね」


「了解や」


 フロートボードの速度をあげて、木々を縫うように進みながら、アイスグリズリーへと向かう。

 少しするとアイスグリズリーが見えてきた。その姿は一言で言うなら氷で出来た熊だ。全長5メートルで、爪は凶悪なほど鋭い氷の刃だ。情報では大きい物で10メートルの物すら存在するようだ。まさに怪物。


「先ずは先制砲撃っ!」


 アイスグリズリーの背後に回ってから脳天目掛けて、クトゥグアのレーザー(MP100)とステンノ&エウリュアレの銃弾を連射してお見舞いする。流石に二丁拳銃状態ではろくな狙いも付けられないが、的が大きいのだから問題は無い。

 しかし、こちらの魔力の気配に反応したのか、アイスグリズリーは瞬時にこちらに向き直り、氷の腕をクロスさせてガードする。こちらの弾丸はクロスされた手に着弾して、腕の氷を破壊して行く。そして、クトゥグアのレーザーは右目を貫き、頭の一部を破壊出来た。

 しかし、アイスグリズリーの傷口は瞬時に氷が覆って再生していく。それだけならまだしも、アイスグリズリーは周りに飛び散った氷の破片を操って、浮遊させる。そして、当然の如くこちらへと放って来る。


「クトゥグア!」


 俺はクトゥグアを盾にして氷の弾丸を防ぎ、スノーボードを加速させて、ジグザグに退避しながら発砲を続ける。アイスグリズリーは氷の破片が無くなるとこちらに突撃して来る。だけど、その背後から強襲を受ける。


「打ち抜け、アイゼン」


 レティシアがこちらに集中して無防備にさらされている背中へと、ブースターで加速させた一撃を放つ。殴られた瞬間に爆発が起きて、アイスグリズリーの背中を抉り取る。そして、レティシアはもう片方の手で更に殴りつける。その前方には直前にアイゼンより高速で発射された杭が存在する。


「パイルバンカー!!」


 杭は先にアイスグリズリーに命中して、背中を少し貫く。そして、その直ぐ後に杭の底をレティシアが殴りつける。殴られた杭は爆発と殴られた衝撃によって、勢いよく食い込んでアイスグリズリーもろとも弾き飛ばされて来る。


「パスや!」


「了解。来い、ティルヴィング」


 ステンノ&エウリュアレとクトゥグアを送還して、ティルヴィングを召喚する。そして、飛んでくるアイスグリズリーに向かって、フロートボードを突撃させて、アイスグリズリーの横を通り抜けざまに火を纏わせたティルヴィングで斬る。流石に重すぎるが、この一撃がアイスグリズリーの止めとなったのか、倒れて動かなくなった。呼び出すだけで魔力を500も使うだけはあった。そして、即座にティルヴィングを送還する。


「流石というか、ティルヴィングの攻撃力は鞘の状態でも高いな。手が痛すぎるけど」


「STRがたらへんのやね」


 こっちは手が痺れているというのに、至近距離で爆発させたレティシアの手は無傷だ。


「ドロップ回収して行こか」


 恨めしそうに見ていると、レティシアは話しを変えてきた。仕方無いので、ドロップを回収して先を進む。幸い、移動中は手を使う作業は無いので問題無い。












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