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隣の席の佐藤さん  作者: 森崎緩
卒業後の話
71/115

佐藤さんの遊園地リベンジ(2)

 お化け屋敷を歩くうち、徐々に真相が明らかになってくる。

 どうやらこの家では恐ろしい悪魔崇拝の儀式が行われていたらしい。そうして得た富により、裕福な暮らしが可能になったというわけだ。

 だがその代償は当然のように重く、やがて一家に赤ん坊が生まれたことで惨劇が起きた――。


「いるいる! 山口くんそこに何かいる!」

 佐藤さんが指差す先には白い骸骨が倒れている。

 狭い廊下の曲がり角で、向こう側に手を伸ばした格好で伏していた。身体は完全に白骨化しているのに衣服は残っているという仕様のお蔭で、これが一家の主の身体であることは何となく察せた。

 全体的に薄暗いお化け屋敷の中で、こういう怖いものがあるポイントだけちゃんとライティングされてるのがちょっと面白い。お蔭で骸骨は薄闇に浮かび上がって見え、佐藤さんが怯える。

「どうしよう……この先、きっと何かあるんだよ」

 佐藤さんはすっかり腰が引けていた。何か言う度に声が震えているし、僕の腕を痛いくらいぎゅうぎゅう握り締めている。

「あるだろうね、多分びっくりする系の仕掛けが」

 僕が同意を示すと、佐藤さんは暗い中でもわかるほど潤んだ目でこちらを見た。

「何でそんなに落ち着いてるの? 山口くん、すごいね」

「いや、結構どきどきしてるよ」

「本当に? 全然怖がってないように見えるけど」

 そんなことはない。僕だって今みたいに骸骨を見つけたり、室内が稲妻か何かでぱっと明るくなった拍子に怖いものが見える仕掛けとか、こっちに迫ってくるタイプのお化けがいたらさすがに心臓が跳ね上がる。そういうびっくり要素には素直にびっくりできる。

 ただ、性分なんだろう。映画とかでもそうなんだけど、ちょっとでも没入感を削ぐようなものがあると途端に冷めてしまう。

 このお化け屋敷も裕福な一家のものにしちゃあちこち狭いよなとか、白骨化した人がどうしてきれいな服着てるんだとか、そもそも現代日本で悪魔崇拝なんて言われてもなとか――可愛げがないのは自分でもわかってる。でもいまいち乗れなかった。

 そこへ行くと佐藤さんはさすが共感の人だ。どんな設定も素直に受け入れて怖がることができる。

「私、そろそろ限界かも……」

 そう呟いた後で、ぐすっと鼻を啜るのが聞こえた。

「前と違って、頑張れる気がしてたのにな……」

 お化け屋敷はそこまでして頑張るものでもないと思う。佐藤さんらしいけど。

「結構凝った造りだから、怖いのも仕方ないんじゃないかな」

 僕は佐藤さんを慰めにかかる。

「こういうのは年齢とか関係ないって。大人でも怖いよ」

「そうかな……」

「何なら目つむってていいよ、僕が出口まで連れてくから」

 このまま骸骨の前で尻込みしてても埒が明かない。いざとなったら佐藤さんを抱えて強行突破するしかない。

 僕の提案に、佐藤さんはためらいを見せた。

「で、でも、ここまで来たんだし……」

「行けそう? ならもうちょっと頑張ってみる?」

「うん」

 佐藤さんはどうしても高校時代のリベンジがしたいらしい。決意の表情で頷いた。

 それなら僕も佐藤さんの手を握り直して、骸骨が手を伸ばす曲がり角の向こうを目指す。彼女が転ばないよう慎重に、だけど骸骨の顔が彼女の目に入らないよう急いで歩いた。


 廊下の先には、いびつな文字で『こどもべや』と書かれたドアがある。

 佐藤さんが俯いているので、僕はそのドアノブに手をかけた。

「開けるよ」

 確認の問いかけに佐藤さんは答えなかったけど、開けた。

 軋みながらドアは開き、僕らの前に狂気に彩られた子供部屋の光景が広がる。血糊を用いた壁一面の落書き、滑り台の上に関節を捻じ曲げて座らされた人形、積み木の代わりに積まれた頭蓋骨。何もかもが不気味だ。

 そして部屋の隅に立つ子供のお化け――稲光を模した照明が窓を照らした瞬間、お化けはかっと目を見開き僕らを見た。

 佐藤さんは勢いよく僕に抱きついた。

「わあっ! やだ、やだよおっ!」

 急に飛びつかれて息が詰まる僕を、彼女は泣きながら見上げてくる。

「お願い、助けて山口くん!」

「わかった、任せて!」

 こうなるのも半ば予想していた。ぶっちゃけちょっと待ってたかもしれない。

 僕は佐藤さんを抱きかかえ、悪夢の子供部屋を足早に脱出した。獣みたいな唸り声が追い駆けてくるのを、とにかく必死で振り切った。幸いそこから出口まではあまり歩かずに済んだ。


 佐藤さんが泣いているのを見たのは、高校の卒業式以来だった。

「ご……ごめんね……」

 屋外にあるフードコートの隅っこの席で、佐藤さんは涙をそっと拭う。

 悲しさや寂しさで泣いているのとは違い、お化け屋敷から出た後も泣き続けるということはなかった。でもよっぽど怖かったんだろう、ハンカチを持つ手はまだ震えている。

「気にしなくていいよ」

 僕も日差しの下へ出てきたら、正直ほっとしてしまった。お化け屋敷は暗い上に狭くて息苦しい。まあ、快適空間なお化け屋敷ってのも何か違うだろうけど。

「やっぱり、いくつになっても怖かったかも」

 佐藤さんが溜息と共に呟く。

 僕にもC組の女子達が怖がって目をつむってしまった経緯がわかった。リアリティがないと冷めてしまうタイプの僕でさえ、あの子供部屋の演出には鳥肌が立った。

「とりあえず一息つこう。はい、佐藤さん」

 買ってきたジュースを差し出すと、佐藤さんはぺこぺこしながら受け取ってくれた。

「ありがとう。山口くんは怖くなかったの?」

「割と怖かったよ」

「そんなふうには見えないなあ……やっぱりすごいね、山口くん」

 ジュースを少し飲んでから、彼女は力なく続ける。

「大人になったら怖いものなんてなくなる、って思ってたの」

 そう語る佐藤さんはあと一ヶ月もすれば二十歳になる。僕より何ヶ月か先に成人になる。どうしようもないんだけど、先を越されるのは何となく悔しい。

 でも、僕の目の前で涙を浮かべた佐藤さんに大人っぽさはあまりない。いつもの可愛い佐藤さんだ。

「僕は、佐藤さんを助けられて嬉しかったけどな」

 正直に告げたら、佐藤さんは泣いた後の顔でぎこちなく微笑んだ。

「本当? お化け屋敷で私を抱えて歩くの、大変じゃなかった?」

「いや、ヒーローになった気分で最高だった」

 好きな女の子の前で格好よく、華々しく活躍したいっていうのは男ならだれでもある願望の一つだ。僕だって例外じゃない。

 佐藤さんが相手だとどういうわけか、上手く格好つけられないから――彼女自身はしょっちゅう僕のことを誉めてくれたりするけど、僕は彼女が言うほどすごくもないし、何でもできるわけじゃない。だからこそこういうチャンスは見逃せなかった。

「山口くんって優しいね」

 佐藤さんはぽつりとそう言ってから、今度はちゃんと笑ってくれた。

「確かにあの時、すごく格好よかったよ」

 僕も単純な方だから、その言葉と笑顔だけですごく幸せになる。

「いつでも頼ってくれていいよ」

「うん。お化け屋敷はしばらく行きたくないけど」

 怖くて泣いた後なのに『しばらく』なのか。またいつかリベンジする気なんだろうか。この先何年経っても、佐藤さんがお化け屋敷に打ち勝てる日は来ないんじゃないかって気がするけどな。

 もちろん、誘われたら僕は二つ返事で付き合うつもりだけど。

「じゃ、落ち着いたら違うの乗りに行こう」

 僕が促すと佐藤さんは、

「次はあれがいいな」

 向こうに見えるサスペンデッド型コースターを嬉しそうに指差した。

「佐藤さん、絶叫マシーンは平気?」

 確認の為に一応尋ねたら、佐藤さんは頬を赤らめながら答える。

「もちろん。お化け屋敷みたいにはならないから、大丈夫だよ」

 それはよかった。

 絶叫マシーンに乗り込んだ後で『助けて』なんて言われても、さすがに対処できそうにないから。


 幸い、佐藤さんは言葉通り絶叫マシーンが大好きだったようだ。

 七種類あるジェットコースターを平然と全制覇した後、遅い昼食を挟んで急流下りに挑戦した。その後二人でゴーカートに乗り、サイクルモノレールで仲良くペダルを漕ぎ、ミラーハウスで無駄に迷ってうろうろして――日暮れまで思いっきり遊園地を堪能した。

 そして一番最後に、観覧車に乗った。

 帰りのバスの時間まであとちょっとしかなかったけど、佐藤さんがどうしても乗っておきたいと言った。僕もせっかく来たのに思い残しがあってはかわいそうだと、彼女に付き合うことにした。


 日が傾いて、広大な遊園地全体が淡いオレンジに染められている。

 僕らはその夕景をゴンドラから眺めていた。

 外からだと優雅に回っているように見えたけど、ゴンドラの中は上がっていく度に金属の軋む音がする。あんまり優雅な感じはしない。

「わあ……! すごくいい眺め!」

 てっぺんまではまだ全然ある。半分くらいしか上ってないのに、佐藤さんはもう歓声を上げた。

 座席のすぐ横にあるガラス窓に張りついて、楽しそうに外を見ている。

「このまま上ったら、向こうの山の頂上も見下ろせそうじゃない?」

「さすがにそこまでは無理だよ」

 青々と繁る夏山も夕暮れの色をしていた。

 僕はしばらく山を眺めてから、ふと気づいて真向かいの佐藤さんに尋ねる。

「前に来た時、観覧車には乗らなかったの?」

「うん。山口くんは乗った?」

「僕も乗ってないよ」

 あのメンツで観覧車なんて更なる閉鎖空間にこもりたくはない。それに男だらけで観覧車なんて面白くもなんともないじゃないか。

 向かい合わせに座る佐藤さんが、レギンスをはいた脚をぱたぱた揺らした。

「誰かがね、『観覧車は好きな人と乗るものだから』って言ってたの」

「宿泊研修の時に?」

「そう。誰が言ったのかは忘れちゃったけど……だからその時は乗らなかった」

 佐藤さんが窓から離れて、身体ごとこちらへ向き直る。

「私は、山口くんと乗りたかったの」

 はにかみながら言われた。

 僕はそんな佐藤さんの顔を黙って見つめ返した。お化け屋敷で泣いた跡なんてもうどこにも残っていなかった。今日一日でちょっとだけ日に焼けたような気がする。そしていつもの、可愛い佐藤さんだ。

 でも、いつもと少し違う気もする。

「……あのね、山口くん」

 佐藤さんは視線を膝の上に落として、それから語を継いだ。

「ちょっと恥ずかしい話をするとね、宿泊研修の夜、山口くんの話をしたの」

「僕の話? えっ、どういうこと?」

 意味が掴めず聞き返すと、佐藤さんは少しだけ顔を上げた。

 上目遣いに僕を見る。

「じ、実はね。夜に女子だけで一つの部屋に集まって、内緒の話をしてて」

 いわゆるガールズトークってやつだろうか。どんな話なんだろう、興味があるような、聞くのが怖いような。

 でも佐藤さんが僕の話をしたっていうなら、やっぱり聞き逃せない。

「ああ、定番だよねそういうの」

 僕はいかにも理解ある男子風に相槌を打った。

「女の子ってそういう時、どんな話するの?」

「えっと……男の子には微妙な話かもしれないんだけど」

 佐藤さんは言いにくそうに前置きしてから教えてくれた。

「好みのタイプをC組の男の子の中から選ぶとしたら、誰かって……」

 うわ。ガールズトークって意外とえぐい。

 いや男子もそういう話するけど。割と落ち着いてる印象があったC組女子の面々が、そういう品定めみたいなことするんだっていう衝撃は大きかった。って言うか怖いな女子。

「あ、あのね、『強いて言うなら』って流れになっただけなの。例えるなら誰か、みたいな」

 僕の反応を見てか、佐藤さんは慌てふためき出した。

「男子達を悪く言ってたわけじゃないから! むしろ皆、結構誉めてたと思う!」

「そ、そっか……」

 彼女の狼狽ぶりに、僕もあえて追及はするまいと思う。

 それに、僕が一番気になるのは佐藤さんがその時どう答えたか。この一点に尽きる。

「私はね、山口くんって答えたんだ」

 佐藤さんは、三年前の記憶を手繰り寄せるみたいに目を細めた。

「好みって言うと失礼な気がしたけど……あの頃の私は、私なんかが誰かを好きになったら迷惑だろうって思ってたから、本当は答えたくなかった。でも、強いて言うならで真っ先に思い浮かんだのが、山口くんだった」

 その頃の佐藤さんが僕をどう思っていたかは知っている。

 何でもできる、違う世界の人みたいだって思われてた。そんなことないのに。

 だから僕も複雑だった。ガールズトークで名前を出してもらえたなんて、本当なら喜ぶべきことだろう。光栄だよ、なんて笑っておくのが大人の対応なのかもしれない。

「勉強も運動もできて、誰とでも分け隔てなく話せる山口くんは、私の憧れだった」

 懐かしそうに話を続ける佐藤さんに、僕は黙って耳を傾けるしかなかった。

「だから、名前を出すなら山口くんしかいないって思った」

 ゆっくりと上がり続けた僕らのゴンドラは、ようやく頂点に辿り着こうとしていた。

「最近、そのことをふと思い出して、すごいなって思ったんだ」

 佐藤さんは窓の外に目をやる。

 一番高いところにあるゴンドラからは、地上の風景が随分遠く見えた。人は豆粒みたいに小さく、建物やコースターのレールはまるで模型のようだった。何もかも夕日の色をしていて、それがどこか物寂しく映る。

「あの頃憧れだった人を好きになって、今でも一緒にいるなんて……」

 佐藤さんも景色と同じように、夕日の色に染められている。

「運命ってこういうことを言うのかなって」

 彼女がそう言った時、僕の心臓が音を立てて跳ねた。

 運命という言葉を口にした、目の前で夕日を浴びる佐藤さんが、いつもより大人びた顔をしているように見えたからだ。

 お化け屋敷で泣いてしまった彼女とはまるで別人みたいな顔つきだった。過去を懐かしみ、今の幸せを噛み締める表情がきれいで、思わず見入ってしまった。

「変、かな。私がこういうこと言うの」

「い、いや、そんなことないよ」

 問われて僕がかぶりを振ると、佐藤さんは胸を撫で下ろしたようだった。

「私もね、普段はそういうのあんまり思わないようにしてるんだ。何もかも運命って決まってたら、そこから飛び出せないような気がするから。でもね」

 ゴンドラが軋んで、上がってきた時と同じようにゆっくりと下降を始める。

「人生って予想もつかない素敵なことが起きるんだなって……山口くんにだけは思うよ」

 素敵なこと、か。

 その言葉の方が、ガールズトークで名前を出してもらうよりよほど光栄に思う。

「だからね、山口くんと観覧車に乗りたくなったの」

 佐藤さんがじっと僕を見つめている。

 夕日の色を映した瞳はきらきら光っていて、だけど彼女が遊園地の話を持ちかけてきた時とはまるで違う印象を受けた。それは夕日のせいだろうか。

 それとも、佐藤さんがあの日より二十歳に近づきつつあるからだろうか。

 たった数日間でこんなにも違う顔をするなんて、女の子ってすごいな。目が離せない。

「ありがとう、誘ってくれて」

 僕がお礼を言うと、佐藤さんはくすくす笑った。

「そんな、ありがとうは私の方。付き合ってくれて嬉しかった」

 その表情をもっと近くで、よく見ておきたくなって、僕はゴンドラの中で立ち上がった。

 ゴンドラが軋む音を立てて傾き、すぐ隣に腰を下ろした僕を、佐藤さんが驚いた顔で見る。

「や、山口くん、いいの?」

「何が?」

「だって、こっち側に二人で座ったら、ゴンドラ傾いちゃうんじゃない?」

「そうかもね。でも僕は、佐藤さんの隣がいい」

 さっきまでの大人の顔はどこへやら、佐藤さんが動揺に目を泳がせる。

「外から見たら、並んで座ってるってばれちゃうんじゃないかな……」

「何かまずいかな。こんなふうに座ってる人、僕ら以外にもいると思うよ」

「そ、そうかな」

「だって観覧車は、好きな人と乗るものなんだろ?」

 僕の言葉に、佐藤さんはしばらく黙っていた。

 でも僕が彼女の手を握ったら、ためらいながらも僕の肩に頭を乗せてくれた。ゴンドラが地上に辿り着くまでの間、僕らはそうやって寄り添い、外の景色なんてろくに見ずに過ごした。

 少なくとも僕は、佐藤さんしか見てなかった。


 帰りのバスでも佐藤さんは僕に寄りかかっていた。

 いっぱい遊んで疲れたからだろう。彼女はすごく眠そうで、だけど懸命に寝まいとしているようだった。

「せっかく山口くんといるのに、寝ちゃうなんてもったいないよ」

 その台詞とは裏腹に、目はとろんとして瞼は酷く重そうだった。

「いいよ、寝ても」

「駄目、もっと山口くんと一緒にいたいよ……」

 そう言ってくれるのは嬉しいけど、眠いのを我慢するのは辛いだろう。

「心配しなくても、ずっと一緒にいるからさ」

 僕は彼女の耳元で囁く。

 運命かどうかなんて、僕にもわからない。そういうものを信じる性分じゃないからだ。でも僕らの人生はようやく二十年になろうかという頃合いで、運命なんてものを実感する機会はむしろこれからやってくるのかもしれなかった。

 そして佐藤さんがそう思ってくれてるなら、僕はその思いを大切にしたい。

「ありがとう……」

 呟いて、佐藤さんが目をつむる。

 安心した寝顔のような表情で、ぽつりと続けた。

「山口くんって、やっぱり優しいね。すごく頼れるし」

「そう思ってもらえて嬉しいよ」

「山口くんなら絶対……何があっても、悪魔に頼ったりしないなって思う……」

 寝言みたいに言い残し、佐藤さんは寝息を立て始める。

「……そんなの、当たり前だよ」

 彼女が寝たのを確かめてから、僕はこっそり吹き出した。現代日本で悪魔崇拝なんて馬鹿げてる。そもそも呼んでも来ないだろう。

 仮に呼んだら来るものだとしても、そんなものに頼ったりはしないけど。


 佐藤さんは僕の手で幸せにする。ずっと前からそう決めてるんだ。

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