93話:後期課題
後期授業はっじまっるよー!
だるぅ~。初日から私はベッドにひっついた。いやだ! 昼間まで寝てるんだい!
「もーっ。私も遅刻しちゃいますっ!」
そうだ後期からは侍女ルアも一緒に通うんだった。えへへ。ぽよぽよを押し付けられて抱え上げられたら元気でた。えへへー。
「ルアと一緒なら行くぅ」
「ロアーネも一緒ですよ」
「ロアーネはいらなぁい」
ロアーネがぺしっと飛ばしてきた小石のような魔法弾を、私はぽぽたろうでガードした。ふふん。
「遊んでないで、二人とも早く着替えてくださーいっ!」
すぽぽーん。私はネグリジェを脱がされた。ロアーネも隣で脱いだ。
こうして並んでみると、だいぶ背が追いついてきたぞ。背伸びしたら、んーっ。いやまだ届かないか。
しかし胸はいい勝負である。0対0の投手戦だ。
朝ごはんにハムエッグトーストをむぐむぐ食べて、再び今期もモランシア家の馬車にお世話になる。
後期初日は知ってる顔が半分くらい減って、知らない顔が増えた。
減った中にはヴァイフ少年や、アフロビリーや、ヤフン人のゴンゾーが含まれる。男連中はみんな前期だけで休学してしまった。ヴァイフ少年はクリトリヒに帰り中学校へ、アフロビリーとゴンゾーは同じ商会で働いている。
「ちょっと寂しいですね」
「んみゅ」
いつものメンバーはソルティアちゃんだけになってしまった。その代わりルアが加わりおっぱい平均値アップ。平均で見ればないよりのありとなった。これで女子グループが名乗れる。
後期の授業は引き続き、クルネス語に魔法基礎。ただ魔法基礎は各分野に少しずつ触れていくようだ。二年次に選ぶ専攻の準備のようなものだ。
そして実技の授業はというと。
「みなの得意とする属性の射出魔法が課題じゃ」
詰んだ。
私、属性、撃てない、アルね。
ルアとソルティアちゃんは、私を他所にきゃっきゃしている。
「ソルティアちゃんは何を撃ちますかっ?」
「私は土魔法にしますー。ルアちゃんは何ですか?」
「私は水魔法ですねっ。でも水って攻撃にはいまいちなんですよねっ」
「ですよねー。私も得意なのは水なのですけど、攻撃を考えると慣れるべきは土かなぁって」
ソルティアちゃんは狩人だもんね。得意な水よりも、次に得意な土を鍛えたいのだろう。
「ドロレス様はどうなさいますかっ?」
「私ですか? ふむ……」
あ、そういえばもう一人属性魔法が苦手そうなのがいた!
ロアーネは光魔法が得意だと言っていた。光の射出ってつまり照明だから、的撃ちできないだろう。どうするんだ?
「闇魔法でも撃ちますか」
「神官なのに!?」
思わず私はツッコミ入れてしまい、注目を浴びてしまった。
周囲が「神官?」とざわめく。ち、違うのじゃ……。し、しんかん……そう、新歓コンパ! だめだお持ち帰りされてしまう!
「冗談ですよ。まあ光の弾でも撃ちましょうか」
なんだ普通にあるのか光の弾。見たらなんか輝く魔力弾が的に当たってぱぁんと灯りが弾けるだけであった。地味?
ああでも、威力ガン上げしたらフラッシュバンみたいになりそうだな。閃光弾魔法って感じ。
光……光……?
私はちょっと、とある魔法を思いついた。
「レーザー魔法ってないの?」
「れーざーですか?」
誘導放出による光の増幅。要するに鏡でブルルルルと反射させまくって光を溜め込んでびゅるっと発射するのだ。
「やってみましょうか?」
今の説明でできるの?
ロアーネは自分の両手をおにぎりを握るかのように合わせて、ぱっと片手を離した。
すると、ちゅんと音を立てて的の一部が熱で融けた。
なんでできるの……?
「こほん。こんな感じですかね」
「ろ、ロアーネ様……今の魔法は一体なんじゃんて……?」
おじいちゃん教官がぷるぷるしてしまった。教官落ち着いて。ロアーネじゃなくてドロレス! ドロレス女史です!
レーザー魔法は置いといて、私は一体どうしよう。
「教官! 私属性魔法撃てないのですけど、どうしたら良いですか?」
「にゅにゅ姫か。ふむそうだな。君は壁を貫いた魔法を、的を貫かないように制御して撃ちなさい」
……え? まじっくあろーを!?
「む……みゅみゅ……まじっくあろー!」
私は漏らさないようにマジックアローを発射。しかしへなへなな魔法の矢はひょろひょろと飛んでぽとりと地面に落ちた。
ぬぅ!?
というかこれ、魔力弾と変わらなくね?
私もみんなみたいに土とか水とか飛ばしたい。
「教官! やっぱり私は精霊魔法をがんばります!」
「ふむ。植物を揺らせるのだったかね? しかしそれでは……」
私は足元の葉っぱをぶちりをむしり、手のひらに乗せた。そして私は語りかける。
「葉っぱよ! 飛べ!」
するとひゅるりら~と葉っぱは風に乗って飛んでいった。ふぅ。
「ダメでした教官」
「まあのんびりやりなされ」
むぅ。むしり取った葉っぱには精霊は宿っていないのか。人形は動いたのになぁ。あとソーセージも。
そうだ。ソーセージは射出できた。でもあの時以来、他のソーセージは動かなかったしなぁ。新鮮さが重要なのだろうか。
ふぅむ。
木陰で休憩していると、頭の上がぶるるんと震えた。最近バイブレーション機能を搭載したぽぽたろうだ。
「なんやなんや?」
ぶるるん。ぽぽたろうが意思表示をしている珍しい。
はっ! 私は閃いた。
ぽぽたろうは雪の精霊だから、私の言うことを聞くじゃん! よし!
私はぽぽたろうを手にして、魔法練習レーンに立った。
私は左足を上げ、投球モーションに入った。腕を大きく回し、左足を踏み出す。
「ふんぬっ!」
白い毛玉が飛んで的に命中! ストライク! どやっ!
ぽぽたろうは地面にぽよんぽよんと跳ねて、ぽふぽふと駆け戻り、私の身体を這い上がった。
「投げただけじゃよね?」
「いいえ」




