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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【10章】内政モノ編(14歳春~)
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229話:新たな計画

 柱に爪痕を大きく残した木造建築の麻薬(ナクナム)王ヌアナクスの屋敷から出て、猫人力車(ねこじんりきしゃ)に乗った。身体強化で体が頑丈な猫人の特性を活かした丘の街での交通手段だ。曲がりくねった道を北東へ向かう。

 オルヴァルト・ニャータウン駅の北口がオルヴァルト市。南口から丘を登るとニャータウン。そして東の線路沿いへ向かうと令嬢芋の畑があり、その先の森の入口に()尿処理場がある。研究所はその間に建てられた。現代的な鉄筋コンクリート製の白い箱で、モダニズム建築というやつだ。マイクラでいう豆腐ハウスである。

 蒼石炭(ネコラル)を真鍮で叩く甲高い金属音は外にまで響き、その碧い煙は他の場と違い煙突から出ていない。この施設では蒼石炭(ネコラル)排煙の危険性と、それを減らす研究、またはそれを利用した魔法結晶の生成の研究を行っている。私の魔力の土地で、うんちに蒼石炭(ネコラル)排煙を突っ込めば魔法結晶になることはすでに実証され生産は始まっている。そして私の魔力のない土地での研究がされている。

 研究所の玄関の前では警備員の猫人が二人ごろにゃんと寝そべって日向ぼっこをしていた。万全な警備体制である。

 一行は顔パスで研究所へ入り、職員が私たちを出迎えた。うむご苦労。


「万事問題ないか?」

「はいありません」


 問題あるかと聞かれて問題あると答える者はいない。しかし職員は「ただ……」と言葉を続け、ちらりと外のごろにゃんしてる猫人を見た。警備体制は万全ではなかった。

 それはともかく、最大の懸念材料を私は問う。ずばり、爆発しないか。


「研究所は爆発しません」


 私の心配を研究所の職員に伝えると、そう返されてしまった。

 しっかりと安全対策マニュアルが実施され、事故が起こらないように細心の注意を行っているという。万が一事故が起きても被害は広がらないようになっている。

 そもそも研究所はすでに実施されているババ・ブリッシュ法での魔法結晶生成施設とは別のものだ。ババ・ブリッシュ法は、私の魔力が注がれた土地でうんこに魔蒼炭(ネコラル)の排煙を突っ込んで魔法結晶を作るもので、それはすでに成功している。

 研究所はなぜ私の魔力が必要なのか、私の魔力以外の土地で魔法結晶を生成する方法はないか、また、うんこやネコラルを別の素材にした時の反応などを調べている実験施設だ。中には危ないことをしているに違いない。思いつきで制御棒を半挿ししたら無限にエネルギー生まれるかも! とかやってしまう可能性もある。立ち入り禁止のお漏らしである。

 だが、少なくとも今はその危険はない。

 魔法結晶を作るのに私の魔力が必要な理由はなんとなくわかってしまった。魔法結晶はダンジョンにできる。ダンジョンは世界樹の跡地だ。世界樹が寿命を迎え、根っこの穴がダンジョンとなる。魔法結晶は世界樹の魔力の場所で作られるのだ。私の存在が世界樹の精霊だとすると……納得できる理由だ。

 つまり……魔法結晶とは元々うんこなのかもしれん。えんがちょ!


「こちらでお待ち下さい」


 受付のお姉さんに応接間に案内され、私はソファにぽゆんと座った。

 やがて研究所の職員がやや面倒くさそうな顔を隠さず現れた。普段顔を出さないお偉いさんが視察に来た時なんてそんなもんだ。しかもそのお偉いさんは領主のぷにぷに少女である。

 そっけなく「どうも」と役職と名前を淡々と述べていく。私も顔と名前を覚えられないタイプなのでぼーっとその様子を眺める。時代が時代なのでみんなヒゲが生えてて余計にわからん。


「この研究所で不正はあるか」

「いいえ。ありません」

「ならよし」


 私はいきなり質問をぶっこんだ。もちろんこれも不正はあるか聞かれて「ある」と答える奴はいないわな。ぷにぷに少女なことを利用して面倒くさい工程はすっ飛ばす。肝心なのは領主である私が視察して健全に運営されているか確認をすることだ。これで用は果たした。

 お菓子食べよう。もぐもぐ。

 職員が研究について語りだすが、血糖値の高まりによって私はうとうとお昼寝モードだ。すやぁ。なぜお昼時の授業は良く眠れるのだろうか。そんな中、錬魔術(アヒルマ)と聞こえて目が覚めた。

 そしてドアをトントンガチャリと開けて入ってきたのは熊だった。熊人(ベアルグ)のヴァウストだ。彼を警戒した護衛のクマッチョが立ちはだかる。なんだか部屋に熱気が立ち込める。くまったくまった。

 その脇からひょっこりと現れたのは薄幸系美少女アイシアだ。銀髪に赤い瞳で白兎のような清楚系の彼女は「ごきげんよう」と可憐に挨拶をした。私は思わずわぁいと駆け寄ろうとしたが、侍女ソルティアちゃんに止められた。そうだ、アイシアはソルティアちゃんとガチ戦闘した間であった。そして私は思い出す。可憐な見た目のアイシアの中身は男だ。おええ。清楚系美少女の中身が男とか気持ち悪い。

 私も「ごきげんよう」とカーテシーで返した。


「あら、久しぶりですのに大きくなっておりませんね」


 そこは「大きくなった」と言うべきだろう。残念ながらさほど大きくなっていない。女神の因子を持つぷにぷに天使シリーズたちを見たところ、どうやらロリぷにのまま大きくなれないようだ。まあ若干大きいのは教皇テア、そしてなぜか小柄の女性程度に背丈があるのがアイシアだ。ちなみに西洋人基準なので小柄でもそれなりに高い。隣のソルティアちゃんも結構高い。背伸びでも太刀打ちできない差がある。髪の毛で体を持ち上げて対等といったところだ。うにょん。


「ところでなぜここに?」

「ふふ。もちろん研究のためですわ」


 研究所で研究する。当たり前だ。何をだと聞く必要もないだろう。ここは蒼石炭(ネコラル)を用いて魔法結晶生成所に併設された研究所だ。蒼石炭(ネコラル)に精通した錬魔術士(アヒルメスタ)を呼ぶことはおかしくない。

 しかし、彼女たちがここに来たのは最近のこと。そして粉飾が確認されたのも。さらにママンが私をここへ送り出した本当の理由……。


「粉飾の犯人はあんたか」

「そうですけど?」


 ですけど、じゃないんじゃが。当たってるんかよ。認めるのかよ。

 私はしゅるりと髪の毛をアイシアの身体に回し、拘束した。確保ォ!


「あらあら。日も暮れていないのに大胆ですこと」


 アイシアは拘束されながら体をよじり、しなを作った。おええ。私は気持ち悪くなり、思わず髪の毛の拘束を離した。心なしか髪の毛くんたちも、しなしなしている。

 私の拘束を逃れたアイシアはぽすんと相向かいのソファに腰掛けた。

 私はソファでごろんちょした。


「釈明は?」

「ここで造られた魔法結晶が市場に流せないのは知っておりますでしょう」


 私はこくりと頷いた。本当は知らない。


「ですから、わたくしの懐に入れて差し上げましたわ」


 どういうことやねん。ぷにぷにシリーズはみんな言葉が足りん。なぜかみんな私が全て知ってるし理解できると思いこんでやがる。(かしこ)ぶった弊害だろう。


「なるほど。そういうことか」


 私は全てを理解した振りをした。まあ私がわかっていてもわかってなくても関係ないことだ。アイシアが錬魔術(アヒルマ)で何かやってんなーってことだけわかっていれば十分だろう。そこへ私が巻き込まれることはない。


「その通りですわ。貴女を月へ送る。そのための計画でございます」


 なんか知らんうちに思いっきり巻き込まれてた。アポロ計画始まってた。

 私を月に送るってあれか。エイジス教の裏の悲願である女神をぶっ飛ばすとかいうやつか。痛いのはダメなのじゃ! 頭の中でぷにぷに脳内女神がぷんすこした。ぽぽたろうを抱えた脳内ロアーネも隣でぷんすこしていた。なんか脳内ロアーネ久しぶりに見たな。消失したかと思ってた。アイシアとの因縁で再び目覚めたか。とりあえず頭の中でやかましいので、女神とロアーネはぽぽたろうの白いもふもふの中に埋め込んでおく。

 つか、エイジス教が女神へのお仕置きを企んでても、私に話した時点で全部情報が本神(ほんにん)に漏れてるんだよなぁ……。


「そのために人工ダンジョンを作るのですわ」


 人工ダンジョン!

 私はがたんと音を立ててソファから立ち上がった。立ち上がったときに(すね)を机にぶつけて悶絶した。ああああああ。医療班が駆けつける。大事ない。傷は浅いぞ。くすん。

 しかし痛みよりアドレナリンが駆け巡り打ち消した。だって人工ダンジョン。何かこうものづくりしようかなと思いつつ何もアイデア無かったところへだよ。これってもう女神のお導きじゃん。ダンジョンづくりものって割と好きなんだよね。ドはまりはしないけどさ。たまに良質なのがあったら嬉しいみたいな。

 それにニャータウンの観光業にも目玉が欲しいと思っていたんだ。人工ダンジョンレジャーいいじゃない。冒険心を煽るような。遊園地みたいな。

 そうだテーマパークだ!

 閃いてしまった。猫人テーマパーク。犬人や熊人のキャストを置いてもいい。そして精霊姫教の山車(だし)でパレードをするのだ。先駆けてつくるぞディズ……んんっ……ダジョニーランド!

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