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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【9章】宗教裁判編(仮)(13歳秋〜)
224/229

224話:プロポーズ

 閃きとアイデアは極限のリラックス状態から生まれる。私はいつものように庭で日向ぼっこに興じていた。うとうとしていると、私の幼女半生がぽわわ~んと最終話のダイジェストのように脳内に駆け巡る。

 私はハッとあることに気づいて目を開いた。


「もしかして世界樹なのでは」


 隣のソルティアちゃんはぽわわんとしている。私の突飛な言動に慣れすぎたのだろう。私はこうしてアイデア出ししていると独り言が増える。それはさておき。


「どう思う?」


 私はソルティアちゃんに聞いてみた。聞かれたソルティアちゃんは顔に?を浮かべている。これもいつも通りだ。


「実は私は世界樹なのでは」


 ソルティアちゃんは唇に人差し指を当て、小首をかしげた。セクシーである。そしてソルティアちゃんは「そうかも」と答えた。

 やはりそうか。そうだったか……。これで全て謎は解けた。私のオリジナル幼女は世界樹ちゃんだったのだ。

 まあ判明したからどうだという話だ。私の髪の毛から魔力が漏れまくってるのは周知の事実で、うんと出そうとするとお水が出るのも羞恥の事実だ。

 適当に思いついたわりに的を得てる気がする。エイジス教教徒は世界樹をぺたぺたと触り祈っていた。メイドさん方が私をなでなで撫で回すのも同じことだ。

 それに……竜姫リアは出会った時に言っていた。『あなたの種をちょうだい?』と。


「ああああ!」


 私は仮説に仮説を重ねて頭の中がスパークした。突然叫んだ私に、普段動じないソルティアちゃんがびびくんと驚いた。そしてよちよちと頭を撫でた。

 世界の謎が解けた。やはりこの世界はゲームの中の世界だ。

 私は再び庭に咲いてるクリスマスローズに「おおい」と呼びかけた。クリスマスローズはゆらゆらと揺れた。庭の丸っこくてあまり美味しくない実を付ける樹に「やあ」と呼びかけた。樹はわさわさと枝を揺らした。

 これは……翻訳機能(スキル)だ!

 マッシブリーマルチプレイオンライン(MMO)ゲームなら翻訳機能が付いているものだ。それをリアルに再現すると、異世界転生モノによくある翻訳スキルとなる。そして翻訳スキルとはと考えると、ここは魔法がある世界なのだから魔法の一種なのだろう。女神が与える魔法の一種、奇跡と言うべきかもしれない。それはどういう動作をするか、同種とのコミュニケーション魔法となるだろう。

 つまり、私が世界樹であって、植物であるから、翻訳魔法は植物にしか効果がなかったのだ!


「どや」


 私はドヤ顔で空を見上げた。お天道様の光で目がくらむ。ぷにぷに女神の反応はない。ここではネタバレなしということか。それとも見ていないのか。


「いや、こういうタイミングこそ出てくるべきじゃん!」


 私は空にツッコミを入れた。現実とはままならぬものである。あのぷにぷに女神、気まぐれすぎるだろ……。

 私の声が聞こえたのか、二階のリルフィの部屋の窓が開き、暗殺者メイドと共に、「なにごと?」といった様子で顔を見せた。私は笑顔で手を振った。リルフィもにこにこと手を振った。

 リルフィは今でもおちんちんが付いてる系美少女の義妹である。つまり男の娘だ。男子たるもの一度は女の子になる。二次性徴でホルモンバランスが崩れ、一時的に女の子になるのだ。女子も逆に男の子になる。男子はそれが過ぎたら声変わりが始まる。そう、リルフィも声変わりを始め、喉の異変は喉風邪だと思い込んでいる。

 リルフィが女の子でいるのも今の時期が最後だ。


「リルフィ、結婚しよう」


 私はプロポーズした。

 しかしリルフィは「また変なこと言い出して」と困惑した顔としゃがれた声で「姉さま、女性同士は結婚できませんよ」と言い返し、私のプロポーズは失敗した。



 なので、精霊姫教では女の子同士で結婚できるようにした。

 教祖でも偶像(アイドル)でもある私が言えば、できる。女の子同士の恋愛は尊い。本当かどうかはわからないが、それがおっさんである私の見解だ。実際は違うかもしれない。おそらく違うだろう。きっとドロドロしてねちょねちょしている。

 男同士の結婚は許可しなかった。ゲイ差別ではない。制度を悪用する可能性が高いからだ。

 よしこれで宗教的問題は解決した。


「ララ姉さまのことを敬愛はしておりますが……」


 しかし私は再び振られてしまった。そもそもリルフィは精霊姫教ではなかった。精霊姫教は悪人以外は「私は精霊姫教だよ」と宣言すれば精霊姫教になるくらいゆるいエイジス教ペタンコの一派だ。リルフィが精霊姫教を宣言するには、私との距離が近すぎた。

 そしてリルフィを直接髪の毛の有線接続で洗脳するのは私の中の善の女神が「それは面白くないのじゃ」と言ってくる。

 つまり、詰みである。

 かくなる上は……私の中身がおっさんであることをカミングアウトして、男になるしかない! むきん。私は男らしくマッチョポージングした。ぷにん。

 ソルティアちゃんが冷ややかな目でこちらを見ているので、だらんと腕を下ろしておしとやかに足を揃えた。だめだ、いまさら美少女人生を捨てることなんてできない。

 こうなったら、リルフィに男の子になってもらうしかない……。おちんちんが付いた女の子にそんなひどいこと言えるわけがない。

 私はにゃむにゃむと嘆いた。

 美少女生を受けこの世界に来た時は、安寧な生活を求めるためにパパに媚を売った。義娘としての健全なるパパ活は家族となる上で無駄ではなかった。ママには嫌われていると思っていたが、魔力放出できない体質により、魔力だだ漏れの私を避けているだけだった。家族の絆を壊すようなことなんて、私にはできない。

 それはさておき、ソルティアちゃんが何か私に言いづらそうに指をもにょもにょさせている。

 どしたの?


「あの~。シビアン兎の魔石の件なのですけど~」


 シビアン兎の魔石はソルティアちゃんの故郷の山で取れるものだ。その魔石は魔力を流すとブルブルと震える。それを選別せずまとめて輸入し、マッサージ機を製造している。マッサージ機として使うには振動が強い良質な魔石が必要とされ、粗悪な魔石はオルビリアの倉庫に山となっていた。


「弱いブルブルの活用法を奥方よりにゅにゅ姫に意見を求められていまして~」


 開発部で適当に新商品考えればいいんじゃね? と思うところだが、一応マッサージ機の企画は私が立ち上げてたものなので、私に「どうするの? 何かつかうの? 適当に使っていいの? 棄てるの?」と聞いているのだろう。

 弱いブルブルの活用法……そんなのエッチな玩具しかないでしょ!

 私の頭の中が閃光魔法(フラッシュバン)を受けたように真っ白になり、「えっちなのはダメなのじゃー!」とぷにぷに女神の声が聞こえてきた。18禁制限を受けてしまった。仕方がない。私の言動は宇宙規模で配信されているからな。あの、でん●ろう先生でもピンクローター制作動画は出していないだろう。


「じゃああれだ。歯ブラシ」

「歯ブラシ……ですか?」


 ソルティアちゃんはきょとんとした。魔法があるこの世界では、貴族の虫歯はまず存在しない。金があるなら教会の清浄の魔法で殺菌殲滅できる。なので歯ブラシを改良と聞いてもピンと来なかったのだろう。そもそも歯ブラシをブルブルさせて意味あるのと思っている。私も前世で電動歯ブラシを買うまではそう思っていた。

 ブルブルを研磨に使うようなすぐ思いつくものはすでに商品化されているが、歯ブラシにくっつけるのはまだ存在しないはず。


「しかし歯ブラシだけで全て消費するのは難しいか……」


 魔石を使うには魔力がいる。

 平民で電動歯ブラシを使うには別途魔力供給源、つまり魔法結晶がいる。粉のような小粒な魔法結晶でもランニングコストが高くなり、平民向けではなくなる。ベイリア首都リンディロンみたいに街中の建物でネコラルカンカンして蒸気機関して碧い魔力の霧に覆われてたなら別なのだろうが。


「まあ歯ブラシの毛をブルブルさせる商品開発するように伝えといて」


 まあ全部は消費されないだろうけど、ある程度は倉庫の圧迫が減るだろう……。



――だが、開発部はその伝えた通りの毛を直接ブルブルさせた。

 途中これはちゃうなと、ちゃんと想定通りのヘッドを振動させた魔動歯ブラシは開発され商品化されたが、それとは別に毛をブルブルさせる研究は進められた。

 研究の結果、織り機で魔法抗力繊維を編み込む際に弱い振動を与えると品質が向上することが判明。安いシビアン兎の余った魔石は代替機構が作られるまで大量に消費され、倉庫の在庫は空となった。

 が、倉庫問題解決はぷにぷに精霊姫にわざわざ伝えられることはなく、ぷにぷには「またのんびりと引きこもって商品開発でもしようかな」とぷにぷにしているのであった。完。

内政編へつづく


136話に

>その日より精霊姫教の教義に「女性同士の婚姻を認める」が加わった。

とすでにありました。きっとぷにぷも忘れてるのでそのままにします。

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― 新着の感想 ―
ずっと書き忘れてたけど、地の文の言い回しが好きなのじゃ。
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