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第83話 夏祭り end

最初は隼人視点です。

・・・・・の地点から智樹視点に移動します。

 理紗ちゃんと智樹のグループと合流して、すぐ気が付いた

 この2人の間のなんとも言えないような壁みたいなのがどこか消えている

 ちょっと前まで理紗ちゃんが近づこうとすると智樹が距離を取ろうとしていた。それは実際の距離ではなく精神的な感じで。

 だから、理紗ちゃんが一歩を踏み出しにくかった。

 これは俺の勝手な予想だけど、智樹は理紗ちゃんの気持ちに気が付いていたんだと思う

 智樹は中学の時も密かにモテテいたのに告白をされなかった。今回のように智樹が絶妙とも言えるような距離感で女の子と接していたから。

 どうしてそんなことをしているのか俺には理解できないけど、とにかく告白されないようにしていたのは明らかだった。


 だから、今回理紗ちゃんの告白の機会を作るのには大変だった

 花火を見ている時、こそっと理紗ちゃんが「告白失敗しちゃいました」と笑いながら言ってきた

 その笑顔には悲しみなんて無い、むしろスッキリしたような顔でこっちまで笑顔になってしまうような笑顔。


「もう智樹は吹っ切れた?」

「えっと、それはちょっとまだですけど次には進めるような気がします」

「そっか。千鶴も喜ぶと思うよ。まぁ智樹には鉄槌が下されるだろうけど」


 パンチの1発や2発は確実にイっちゃうだろう


「ありがとうございました。機会を作ってもらって」

「俺は理紗ちゃんの味方だからね。千鶴いなかった俺が理紗ちゃんに告白してるかな」

「あはは、千鶴ちゃんに怒られちゃいますよ?」

「あ~…ここだけの話ってことで」

「あはは、はい。分かりました」


 花火も真っ青な笑顔

 これは本気で千鶴がいなかったら俺が惚れていたかもしれない…

 まぁ俺の中では千鶴が1番だけど、理紗ちゃんには幸せになってほしい

 もちろん、智樹にもだけど。


 智樹は花火を見ながらボーっとしていて、その横では鞠乃ちゃんがチラチラと智樹を見る


「あの2人はどうなるんでしょうか?」

「さぁ?長い付き合いだから大変だろうね」

「私、ちょっと鞠乃ちゃんに嫉妬しちゃいます…」

「ん?」

「祠堂君にとっても大切にされてるから。あ、大丈夫ですよ、もう」

「分かってるよ。まぁちょっと智樹は大切にしすぎてる気がするなぁ」

「鞠乃ちゃんの気持ちに気が付いてるんですかね?」

「たぶんね。でもあえて避けてる…というより鞠乃ちゃんも智樹の事を分かってるから一歩を踏み出さないようにしてるのかもね。時々出そうになってるけど」


 でも鞠乃ちゃんは半歩を出しても、絶対に一歩を踏み出さない

 智樹が行動を起こさない限り、この2人の関係はこのまま平行だろう。

 …ちょっとだけイタズラしたくなってくる。

 もしここで俺が鞠乃ちゃんとラブラブみたいなことをしたらどうなるだろうか…智樹は嫉妬して怒るんだろうか?それとも自分の気持ちを隠しとおすつもりなんだろうか……いや、その前に俺が鞠乃ちゃんに殺されるかもしれない…

 というか、そんな野暮なことはしちゃいけないな…この2人の関係は智樹に任せるしかない。そんな気がする。

 長い間、この不自然な関係を作ってきた智樹と鞠乃ちゃんだけがこの関係を崩すことができる

 俺でもない、千鶴でもない、理紗ちゃんでもない。俺たちは観察者だ。この2人の間に訪れるであろう、青春を見届けさせてもらおう。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 告白。

 それは成功すれば天国

 失敗すれば地獄


 ずっとそうだと思っていた。

 だから今回、佐藤さんの気持ちに気が付いてから、どうやって告白されずに。と言うことを無意識に考えていた

 しかし、その行為は事を先延ばしにするだけじゃなく、佐藤さんの気持ちまで踏みにじる行為だと言うことも理解していた。だからずっと俺は最低な事をしている…



 笑顔で佐藤さんに手を伸ばし、早く行こうと勧める

 しかし、佐藤さんの覚悟は揺らがなかった


「好きなんです」


 真っすぐと俺の目を見て、ハッキリと言う

 これ以上、佐藤さんを苦しめてはいけない…

 心ではそう思っているのにどうしても口にしたくなかった、それはたぶん佐藤さんの事が自分の中で大きいからだと思う

 でも、付き合えない。佐藤さんと付き合うことは自分の気持ちに嘘を吐くことになる

 それに傷つけたくない人もいる


「ごめん…なさい…」


 重い口を開け、自分の気持ちを言う

 これで佐藤さんとの関係は切れた…


「……ありがとうございます。本当の事を言ってくれて」

「え?」


 佐藤さんは悲しい顔もせずに笑顔で俺にお礼を言ってきた

 俺にはその笑顔の意味が分からない、俺に悲しい顔を見せたくないから?それとも告白自体が冗談だった?


「本当は薄々気付いていたんです。今年に入ってから、付き合うのは無理なのかなぁって」

「………」

「鞠乃ちゃん、でしたっけ?あの子の事が好きなんですよね?」

「………どうしてそんな笑顔でいられるの?」

「そうですね、確かに悲しいですけどそれよりもスッキリして気持ちいいんです」

「気持ちいい?」

「はい、この気持ちは一生伝えられないと思ってので。でも千鶴ちゃんや隼人さんが色々協力してくれて今、こうして告白できました。だからスッキリしてます。だから祠堂くんにも笑ってほしい」

「…はは、俺には分からない気持ちかもしれないね」

「きっと分かりますよ。私も昔はこんな気持ちになるなんて思っていませんでしたから」


 佐藤さんは夜空を見上げた後、照れたように俺を見てきた

 本当に俺にも来るんだろうか…スッキリとした気持ちになれる日が…



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