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第82話 夏祭り part4

佐藤さん視点です。

 「好きです!私、祠堂君の事が好きなんです」


 やっと言えた…

 ずっと言えなかったことがやっと言えた

 薄暗い明かりの中、顔がものすごく熱く感じる

 目の前にいる私の好きな人は大きく目を開いていてビックリしているみたいだ


 祠堂君の事を好きになったのは1年生の夏休みに少し入る前の事だった

 私が授業の間の休み時間の間、好きな本を読んでいると急に祠堂君が声を掛けてきてくれた

 会話自体は普通の会話。読んでいる本の感想や他のお勧めの本。そんなどこにでもあるような会話だったけど、私には特別だった。

 小さい時からあまり男の人が得意で無かった私が祠堂君と話す時は緊張せずに話せていた。

 それはどうしてか分からない。だけど、それ以来少しずつ祠堂君と話していると彼に惹かれていく自分に気が付いてしまった

 それからだと思う。今までは緊張せずに話せていたのに祠堂君を意識するとドキドキと心臓が慌ただしく動き始める。そして、これが人を好きになるとすぐに気が付いた。

 周りの友達もすぐに私の変化に気が付いたのか、ニコニコしながら「やっと理紗にも春が来たかぁ」と嬉しそうに話していた


 そして2年生になった時、千鶴ちゃんに出会う

 最初はビックリした。だって千鶴ちゃんと話す時の祠堂君はいつもと何かが違ったから

 私やクラスの人と話す感じじゃない。

 2人の間には何かがあるって思うと締め付けられるような痛みを感じていた

 そして、極めつけは夏休みに入る前の出来事。そう、千鶴ちゃんがクラスの女の子に苛められそうになった時。何もできな臆病者な私をよそに祠堂君は千鶴ちゃんの彼氏だと言った。

 その言葉を聞いた時はもうこの世の地獄なんじゃないか?ってぐらい落ち込んだけど、千鶴ちゃんはすぐに「あんな奴の彼女なんてゴメンだね、私とあいつはそんな関係じゃないよ。ただ私を庇っただけ」と少しイライラした声で話してくれる。そして、勉強合宿の時に千鶴ちゃんが自分の事を話してくれて、最後に「応援するから頑張ってね」と言ってくれる。

 それからは千鶴ちゃんが一杯動いてくれた。千鶴ちゃんの彼氏の隼人さんも動いてくれた。


 だから、だから私は今日言えたんだ。


 祠堂君はしばらくして一瞬悲しそうな顔になり、すぐに笑顔になる

 だけど、その笑顔はいつも私に見せてくれていた笑顔じゃない。作られた笑顔


「佐藤さん、行こう。隼人も姫も来てるよ」


 何も無かったことにするのかな…私の告白は何も無かったって…

 祠堂君は笑顔で手を差し伸べる

 答えはもう分かっている。だけど、祠堂君の言葉で、声で答えは聞いていない


「好きなんです」


 この言葉が祠堂君を困らせているのは分かる

 だけど、今だけは…今だけは私の事を考えてほしい、私以外の人の事は考えずに祠堂君が考えてくれた答えを言ってほしい。

 真剣な目で祠堂君を見つめる。

 私は祠堂君に酷いことをしている。祠堂君の笑顔が崩れる


「…………」

「答えを聞かせてください。私は祠堂君の事が好きです」


 理由は分からないけど好きという度に祠堂君は悲しい顔をする

 そして、泣きそうな目で振り絞った声で祠堂君は言ってくれた


「ごめん…なさい…」



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