第81話 夏祭り part3
やっぱり運なんて最後まで続くわけ無い
結局俺の放った玉は狙っている所とは別の所に落ちてしまい、1列を揃えることができなかった
横では佐藤さんが慣れたように1列揃えたりとやっぱり経験は必要だと再確認した
そんなこんなで俺と佐藤さんはスマートボール屋から離れ、適当に腹ごしらえをする
花火が打ちあがるまでおそらく1時間ぐらい。
途中、隼人にメールしてみると、現在姫は金魚からヨーヨー釣り屋へ移動しているらしい
そんなに姫が釣り系が好きだとは思ってなかった…
「佐藤さん、上手いね。スマートボール」
「コツがあるんです。何打目かは落ち方を確かめてからやると1列揃うんですよ」
「あ~なるほどね」
そういえば、最初の方はあまり揃ってなかったっけ…
俺は近くのタコ焼き屋から佐藤さんのと俺のを買い、近くのベンチに座る
「どうぞ、スマートボールの極意を教えてくれたお礼に」
「あっ、ありがとうございます」
「いいえ。まだ花火まで時間あるね」
あと半時間少し。
隼人にメールを打ってみると向こうは向こうで楽しんでいるらしい
花火が始まるまでは適当に時間を潰せばいいだろう
それにしてもなんだろうか…タコ焼きを食べているからなのかも知れないが話が続かない
別に話にくいとかそういうのではない。ただ何を話せばいいのかが分からない
今思えば佐藤さんと話す時には千鶴が高確率でいたっけ…
「そういえば」
「は、はい?」
佐藤さんに話かけようとするとちょうどタコ焼きを食べようとしていたのか、もう少しで口の中に入る所でタコ焼きが止まっている
「あ、ごめん。食べながらでいいよ」
「す、すみません」
「んで、戻るけど千鶴ってまだ宿題終わってないらしいよ」
「え?そうなんですか?」
「あれ?てっきり知ってるかと…」
「…………あ、いえ。えっと…大変だなぁって」
「まぁ自業自得なんだけどさ。あいつももう少し自分の力で頑張ればなぁ…」
「でも、千鶴ちゃんはやればできる子ですよ。集中力はすごい」
「あぁ…猿みたいなもんだね。餌さえ良ければ頑張る」
今回の餌はなんだろうか…
隼人との1週間泊まりデートだろうか?
まぁ毎日してるようなもんだからご褒美にはならないだろうけど…
しばらく千鶴ネタで話をしていると急に会話が無くなる
特に嫌な沈黙じゃない。時間がゆっくりと流れていて心地が良い
しかし、そんな時間は長く続くことは無い
少しボーっとしていると俺の携帯がピリリっと鳴り出す。相手は…
「姫から電話なんて珍しい」
「そろそろ時間だって。今どこらへん?」
「今はタコ焼き屋の近くかな。姫は何か食べたか?」
「ううん」
「そっか。んじゃ早めに合流して食べ物買おう」
「うん」
「それじゃ最初の金魚すくいの所で待ち合わせ。すぐ行くよ」
「わかった」
プチっと電話を切り、残りの少し冷めたタコ焼きを食べる
そして、ベンチから腰を上げ、佐藤さんの方に振り向く
「そろそろ行こう、佐藤さん」
「……はい」
佐藤さんが立ち上がるのを見て、歩き出そうとすると後ろから佐藤さんの呼び止める声が聞こえた
「あ、あの…少しお話したいことがあります!」




