第80話 夏祭り Part2
夏祭り
今日ばっかりは普段静かなこの町も賑やかになる
色んな所からやきそばの匂い、タコ焼きの匂い、綿菓子の匂い…色んな匂いが充満していて食欲をそそる
でも、食欲のまま……いや欲望のままに行動をすると財布の中身が………
「ん」
「ちょっとは遠慮しない?」
「ん」
「ん…って……ひ、姫?あのぉ~」
これで10回目、合計2000円の損害だ
そして、2000円の損害の中に10匹の金魚という収入も得た
「あぁ~……姫、金魚は10匹も持ってるんだからもう辞めない?」
「嫌、智ちゃんみたいに5匹取るまでやる」
「それならもう10匹…」
「それはこのおじさんのご厚意だから」
「ご厚意でも10匹…」
「お兄ちゃんも大変だね!お嬢ちゃん、やりたいだけやりな!!!」
金魚すくいのおじさんは愛想よく姫にポイを渡す
そして、俺にはお金を請求する。このおじさんは商売上手だな………
「智樹、鞠乃ちゃんは俺が見ておいてやるから理紗ちゃんと好きな所行ってこれば?」
「ん?別に嫌ってわけじゃ」
「まぁまぁ、理紗ちゃんもここに居続けるのは嫌だろうし、な?」
確かにここに来てから俺たちは姫の行動に付き合わされてるから好きに動けていない
まぁ俺はそれでもいいけど。
「姫、俺達ちょっと他周ってくるけど良いか?」
「え?……………うん、別に良い。早く行ってくれば」
ぷいっっと金魚がいる方を見る
隼人は姫の横にしゃがむと金魚をすくう極意を教えるとか言って楽しそうにおじさんにお金を払った
「佐藤さん、行こっか」
「え?いいんですか?」
「姫には隼人が付いてるからね。行こう」
隼人の肩を軽く叩いてから金魚すくい屋から離れる
佐藤さんを夏祭りに誘っておいてほっておくなんて迷惑の何物でもない
少しでも楽しんでもらわないと
「佐藤さんはどこか行きたいところある?」
「えっと…わ、笑わないでくださいね?」
「ん?」
佐藤さんは恥ずかしそうな顔をしながらある場所へと向かう
「…こんなのあったんだ」
何回かこの夏祭りに来ているけどこんな奥まで入ったことも無く、ましてやスマートボール屋があるなんて知らなかった
周りは中年のおじさんが多く、おそらく懐かしさから来ているんだろう
「佐藤さんっていつもこれやるの?」
「はい。普通のゲームはあまり得意じゃないんですけどこれはできるんですよ」
「ふ~ん」
数色ある打った球を1つのラインに綺麗に色をそろえれば商品が貰えるというゲームに得意不得意はあるんだろうか…と思いながらもさっきから佐藤さんは上手く色を合わせているのに俺は1つも思い通りに打てていない
「お嬢ちゃん上手いねぇ、おじさん脱帽だよ。ほら、彼氏さんもしっかり頑張りな!」
おそらく彼氏さんとは俺の事なんだろうけど、ここは流す
もちろん、佐藤さんの彼氏だってのは光栄なのもある。しかし、彼氏ではないし、何より今はこの1打で1列が揃うのだ。集中しなければならない
自分の指先に全神経を集中してボールを打った




