第79話 夏祭り part1
「千鶴が監禁された」
昼食を食べている途中、隼人がいたって真面目な顔で言う
「ふ~ん…あっそ」
「おいおい、それだけ?」
「それだけってどうせ宿題出来なかったんだろ?」
だいたい予想は付く。
今まで勉強なんてまともにしようとしなかったあいつが大学に行くと親に宣言してしまって、期待させてしまった。しかし、現実は所詮努力をしないバカはバカから抜けられず、夏休みの宿題が大量に残ったままだったんだろう。
「普通もっと驚くだろ?」
「別に。てか、今日の夏祭りどうするつもりなんだ?」
「どうするってそりゃ行くだろ?俺とお前だけで」
「なんで男2人で行かないといけないんだよ…」
「お?なんだその発言。女の子と行く予定でもあるのか?」
「別に無いけど……あ~姫がいるな」
「鞠乃ちゃんか……ん~……」
「隼人、姫苦手だっけ?」
「いや、苦手ていうより好きな方だけど…鞠乃ちゃん以外にいないわけ?」
「は?」
「いや、だから、もっとこ~なんだ……理紗ちゃんとかいるだろ?クラスに」
「理紗ちゃん?…あ~、佐藤さんね。色々あるだろう?それに用事だってあるだろうし」
俺らみたいに暇な人じゃないのは分かる。
今頃受験勉強とかしていそうだし、その邪魔はしたくない
俺は昼食を食べ終わり、茶碗などを流し台に持っていく
そして、適当に皿を洗っていると隼人が茶碗を持ってきた
「さっき、メールしてみたんだけど良いってさ」
「は?」
「いやさっきの理紗ちゃんの話」
「あぁ…てことは俺とお前と佐藤さんで行くのか?」
「そっ。楽しみだな」
何がそんなに楽しみなのかよくわからないけど隼人は嬉しそうな顔をしながらリビングに置かれているソファに座るとカメラをいじり出す
俺は隼人の茶碗を洗ってから、ゲーム機で時間を潰そうとすると家のインターホンがピンポーンと家中に響く
「はいはい、どなたですかっと…って早苗さんですか…」
「はい、そこ。嬉しそうな顔しちゃ駄目よ」
「いや、してないです」
ニコニコした早苗さんが招き入れても無いのに玄関の中に入り、靴を脱ぐ
そして、同じように姫も靴を脱ぐと何も言わずにリビングの方へと歩いて行った
「あの…今日はなんの用なんでしょう?」
「智ちゃん、今日は何の日か分かる?」
「さぁ?早苗さんの誕生日では無いのは確かですね」
本当に早苗さんの誕生日なら今頃俺は早苗さんの家に居る
もし、忘れていたなんて言ったら何させられるか分からないからだ
「智ちゃん、今日はね。夏祭りの日よ」
「そうですね」
「ということは?」
「ということは?…なんですか?」
「智ちゃん、察しが悪い男の子は嫌われるわよ」
「はい?」
「まぁ今のがわざとだったらそれはそれで良いかもしれないけど」
「はぁ……なんですか?夏祭りなら他の連中と行く予定ですけど」
「あら?そうなの?」
ほんの少しだけ残念そうな顔をしながらリビングの方へ入って行き、テーブルの椅子に座る
姫は俺がやろうとしていたゲームを起動させていて、隼人とやっているみたいだ
「で?誰と行くのかしら?隼人くんと2人きり?」
「んなわけないでしょ、俺と隼人と同じクラスの佐藤さんです」
「あぁ~、なるほど。うふふ、面白そうね」
「来ますか?別に俺は良いですよ。皆で行ったほうが楽しいですし」
「でも、私が行ったら何か奢らないとダメでしょう?私は遠慮しておくわ」
「そうですか、残念です」
「あ、でもお姫は連れて行ってあげて。あの子夏祭り行くの楽しみにしているから」
眩しい笑顔で言われたら断れない…まぁ断る理由なんて無いから軽く頷くけど…
ここはとりあえず姫の意思も聞いておいた方が良いだろう
「姫、今日夏祭りだけど一緒に行く?」
「…2人?」
「いや、俺と隼人と俺のクラスメイトの人」
「……智ちゃんと隼人さんいるなら行く」
「お、鞠乃ちゃんに俺好かれてる~…って嘘ぉ!」
隼人が嬉しそうに姫をからかおうとすると、姫が本気を出したみたいだ
今やってるのは対戦型のテトリス。元々隼人に勝ち目があるとは思えないけど、姫が本気を出した途端形成は一気に傾き、隼人の敗北が決定した




