第76話 不安要素のあるお母さん?
今回は鞠乃(姫)視点です。
なんだか最近の智ちゃんの様子がおかしい
テストをやり終え、終了時間までの間、最近の智ちゃんのことを考える
最近の智ちゃんの様子はなんだか明るいというか何に対しても頑張ろうという感じを感じる
もちろん、小さい時もそういうのはあったけど私の知る限りじゃ今のような智ちゃんは無い
「おつかれさまでした、後ろから集めてください」
前で先生がテスト用紙を集めるように言うと、前にテスト用紙を回す
そして、さっきのが最後の期末テストで皆は疲れたように大きくため息を吐く
そんなに難しい問題でも無かったからそんな疲れるようなもんでもないのに…
今日はお母さんの所へ行ってから車で帰る予定のため、帰る準備をしていると何人かの友達が近くに来た
「鞠乃ちゃん、どうだった?テスト」
「ん~いつも通りかな」
「いつも通りってことは90点以上?」
「それは分からないけど…」
「鞠乃ちゃんなら絶対そうだって!ほんと良いなぁ…頭良くて…」
私を囲む友達は皆、羨ましそうに私を見る
私としては皆が体育をできる事の方が羨ましい…いけると思うのにお母さんがそれを許してくれない。
友達は今回のテストのあの部分が分からなかったなど言いながら私に質問してきて、私が答えると言った感じに話をする
すると同じクラスの豊永くんがこっちに歩いてきた
「なぁ藤堂、今回のテストどうだった?」
「…いつも通りだけど」
「今回は俺も自信あるんだ、勝負しようぜ」
「別にいいけど…」
私はこの豊永くんが苦手だ…
何かに付けて話かけてくる。特に勉強系のことを。
豊永君は「今回は負けないぜ」と言いながら男子のグループの中へと入っていく
「豊永ってさ、絶対鞠乃ちゃんの気あるよね」
「え?」
「うんうん。あいつ絶対鞠乃ちゃんの事好きだよ」
周りの友達がコソコソ話をするように話す
あの豊永君が私の事を好きなんてことがあるんだろうか…
「鞠乃ちゃんはどう?豊永って顔は良いと思うよ、頭も鞠乃ちゃんには敵わないけどそれなりに良いし。お似合いだと思うなぁ」
「私も私も。鞠乃ちゃんとお似合いだと思うよ」
「そ、それは無い無い……だって」
「ん?私は何?鞠乃ちゃん」
「ま、まさか…すでに彼氏がいるとか…」
「な、無いよ。そんなんじゃないよ。私、豊永君の事何とも思ってないし」
これ以上ここにいると変な話に行きそうで、私は謝りながらお母さんのいる保健室へと向かう
保健室に向かう途中、智ちゃんのいる3年生の教室の方をチラッと見ると智ちゃんが女の人と話している姿が見える
智ちゃんはめんどくさそうにしながらも、どこか楽しそうに話していた
「………お母さんの所いこっと」
智ちゃんには声を掛けず、素通りする
そして、お母さんのいる保健室のドアをノックしてから中に入ると机に座って何か作業をしているお母さんが顔を上げた
「おかえり、お姫」
「うん」
「もうちょっと待ってね、もう少し時間がかかるから」
「うん。大丈夫」
いつものことだけど、お母さんはどうしてこんなに早く帰れるんだろう…
普通、養護教諭は遅くまでいるようなイメージがあるんだけど…
私は何故か本棚に置かれている3年生の教科書を手に取る
自分の知らない公式などを見ると少しわくわくしたりするけど、この教科書を見てもわくわくしてこない。もしかしたら前にここで読んだことがある教科書だからかもしれない
ペラペラとページをめくりながら公式を見ていく。やっぱり見たことある公式ばかりだ…
「お姫、今日は智ちゃんは?」
「知らない」
「うふふ、何かあった?」
「何も無いけど」
「また智ちゃんが別の女を弄んでたのね…智ちゃんは誰にでも優しいからモテるわよ、あの子に惚れた子は大変ね」
「…ふーん、どうでも良い」
「うふふ、そうね。お姫と智ちゃんは特別だもの」
「だから関係ないって言ってるでしょ」
ニヤニヤしながらお母さんはトントンっと紙を束ねる
そして、クリップで止めるとカバンの中に入れる
「さぁて、帰りましょうか」
「うん」
いつも通り、お母さんから車のカギを受け取ると先に駐車場へと向かう
その間にお母さんは職員室に行って、色々することがあるらしい
車に乗ってキーを回す。そして、エンジンを掛けてお母さんを待っているとすぐに来た
「さぁて、お昼は何にしましょうか」
「なんでもいいよ」
「ん~、それじゃ適当に買って家で食べましょうか」
「うん」
車を運転しながら校門を通る
「あら?智ちゃんに隼人くんね。楽しそうに女の子に囲まれて…」
ここから見える限りじゃ女の子に囲まれてる智ちゃんもまんざらでも無い感じ
なんかムカついてきた…。それと隼人さんが自慢していた彼女の後ろに立っている女性がなんだか気になる
「いいわね~、私も男に生まれてたらあんな風に一度は女の子に囲まれたいわ」
「…お母さん、それ娘としてはあまり聞きたくないよ」
「大丈夫よ、お姫がその中に居れば一番最初に告白させてもらうから、ね」
お母さんはウィンクをして、笑いながら車を運転する
なんでお母さんはいつもこんなことを言うんだろう…もしかして本当に娘としてじゃなくて…その……対象として見てるのか不安になってきた…
でも、これでもお母さんだし…でも、こんなお母さんだからこそあり得る…智ちゃんにだって襲うとか襲わないとかよく言ってるし……なんだか不安になってきた…




