第74話 明るい未来。
この前の早苗さんとの会話で何かが取れたのは大きかった
今まで普通の世界が少しだけ明るくなったような気がする
「智!なにたそがれてんのよ!さっさとここ教えなさい」
せっかく人が明るい未来に希望を抱こうとしていたのに、このバカは相変わらずこの時期になってもバカらしい
今は7月の初旬
俺達、学生には学期末テストという大イベントが待ちかまえている
といっても、俺達3年生の期末テストなんて簡単に設定されている。理由は受験勉強に支障を出さない為。なんともまぁ、進学校らしい理由だ
そのおかげ?というべきなのか指定校推薦で大学進学をする俺にとっては嬉しいことでもあり、毎日授業で集中的に当てられているからテスト勉強なんてことも前日で済む
しかし、このバカ。千鶴にとってはそんなこと関係ないらしい
「お前さ、大学受験するんだろ?」
「するよ。しなさいって言われてるし」
「どの程度の大学行くわけ?」
「どの程度ってのは分からないけど行ける所に行くつもり」
「ふ~ん、隼人には?」
「言ってるよ。隼人も頑張れって応援してくれてるし」
「あそ」
「智は?」
「俺はここからちょっと行ったK大」
「そんなこと聞いてないってば、高校3年にもなって彼女作らないのって話」
「は?話が違いすぎるだろ…」
「だってさ、智は1人ぐらい居てもいいかなぁってぐらいの顔だよ?」
「別にそれがどうしたって話だな。ほら、さっさと勉強しろ」
千鶴の持っていたペンを奪って、分からないと言っていた問題の所にヒントを書いていく
しかし、ある程度まで書くと持っていたペンを奪われて机をバンっと叩かれた
「今は私が話してるんだけど?」
「な、なんだよ」
「ちょっとこれ真剣な話だから」
「…はぁ?」
千鶴の目には「本気です!」と書いてあるかのように俺を睨んでくる
この千鶴が何を聞きたいのか分からないけどここはちゃんと聞いておいた方が身のためになりそうだ
「智ってさ、中学からずっと彼女いなかったでしょ」
「お前が一時的に」
「あんなの無効よ」
「んじゃいないな」
「なんで?」
「なんでって…告白されなかったし」
「させようって気あった?」
「そんなもん知らん」
してくれるならしてほしいのが男の性。普通はそうだと思う
「正直言わせてもらうと、なんで智のこと好きになるのかさっぱり分からないんだけど中学の時もそれなりに居たわけよ。なのになんで智には彼女ができないの?って気になって勉強できないわけ」
「……今のは告白?気になって勉強もできないほど俺の事」
「玉、1つ潰すよ?」
「…ごめんなさい」
微妙に笑顔でなんてことをいう女なんだろう…
結構長く友達として付き合っていたけどこんな千鶴は初めてみる
千鶴はさっきから真剣な顔つきで俺を睨みつけ、ファミレスだと言うのに俺たちの周りだけ静かな時間が過ぎていく
「千鶴が何言いたいのか分からないけど、告白してくれるならしてほしいのは男だろ。
それで答えがYESかNOかはその時考えるし、付き合いたいと思ったらOKする。それが普通だと思うけど?」
「あんた普通じゃないじゃん」
「化け物認定されても嬉しくないんだけど」
「はぁぁ…なんでこんなバカを……まぁいいわ。とりあえず、ここ教えて」
「ヒント書いたから自分でやれよ。それ以上教えたら答えになる」
「だから智はモテないんだよ…」
千鶴は人を小バカにしたような目で俺を見てため息をつく
さっきモテてるみたいな事言っていたのになぜこんなことを言われないといけないんだ…
俺も大きなため息を吐いてからテーブルの上に置いてある店員さんを呼ぶボタンを押して少し早めの晩御飯を頼んだ




