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第69話 保健室の小さな窓

 

「ふぁぁぁ~…ねむ…」


 温かい部屋の中でストーブ近くにあるパイプ椅子に座りながら携帯を触る

 部屋の中にあるベッドの中では姫が少し苦しそうにしながら眠っていた


 今から数十分前。

 俺はある方法で保健室のカギを開けて、ここにいる


 そのある方法とは簡単なモノだ

 保健室の小さな窓が常に開けてあるのでそこから入っただけ

 ただ、その小さな窓は俺の身体がギリギリ入るぐらいな上に1m50cmぐらいの高さにある窓

 入るのも大変な上に下りるのも大変な窓だから泥棒でも入らないだろう

 そして、ここから入ると後々……


「あら?智ちゃんじゃない。どうしたの?」

「お帰りなさい、早苗さん。カギ締め忘れてますよ」

「そうね、あの小さな窓は開けっぱなしね」


 ニコニコしながら早苗さんは椅子に座り、俺の方を見てくる

 そして、机の中から1枚の紙を取り出し俺に渡してくる


「これ、覚えてるわよね?」

「いや、これは姫のためなんですからしょうがないでしょう」

「お姫のため?」

「熱出て、そこで寝てますよ」

「あら?そうなの?ありがとう。でもそれはそれ。これはこれよ」

「いや、自分の大事な娘ですよ?」

「そうね」

「それを助けた恩人に」

「言ったでしょ、それはそれ、これはこれって」


 悪魔だ…

 早苗さんが見せてくる紙は契約書

 俺がこの学校に入って半年が経った時だった


 俺が保健室で早苗さんと話している時にあの小さな窓のことを教えてくれた

 あの窓はカギが壊れていていつも開いている。だからもし自分がいないときに保健室に入りたかったら、あそこから入ればいい。と

 最初は俺自身ラッキーだと思ったけど、人生そんな甘いもんじゃない。

 良いことには裏がある。

 あそこの窓から入った時、ある契約が“勝手”にされていた


 俺があの窓から入った場合、早苗さんの言うことを1つ絶対に聞くこと。


 これがあそこの窓から入った時の代価。

 だからあまり入りたくなかった…


「ん~どうしましょ。まさかこんなに早く来るとは思わなかったわ」

「………もしかして、教えてもらった時からこうなること予想してたんですか」

「ええ。お姫がここに入るのは当然だと思ってたから、こんなことになるかなぁって思ってたわ」

「分かってたなら」

「だから教えてあげたんでしょ?それでこうしてお姫のために使ってくれた」


 何から何までお見通しらしい

 早苗さんは鼻唄を歌いながら紙に「智ちゃんにやってほしいランキング」と書いて10位から次々と書いていく

 少し気になったんだが4位の「智ちゃんと○○」ってのはなんなんだろうか…

 内容が気になるけど聞くとダメな感じがしていて聞けない


「できたわ。智ちゃん、この中から選んでちょうだい」


 智ちゃんにやってほしいランキング1~10位まで書かれた紙

 10位 料理を作ってもらう

 9位 1日家のことをしてもらう

 8位 一緒にお買い物

 7位 お姫のお風呂を覗いてもらう

 6位 1日中、私とずっといる

 5位 私とベッドで寝る

 4位 智ちゃんと○○


 やっぱり4位が気になる…というか、7位と5位は絶対に避けたいところだ

 そして1~3位も…


 3位 私とお姫とお風呂に入る

 2位 これからずっと私たちと暮らす

 1位 私の夫になる


 だ。

 1~3位なんてあり得ない。

 早苗さんはニコニコしながら1位の所に指を置いている

 これを選んでほしいと言った感じなんだろうか?

 この中で一番安全なのは6・8・9・10位だろうけど、裏がありそうで危険だ

 だから…


「あ、俺そろそろ戻りますね」


 ここは戦略的撤退が一番いい

 俺はすぐに椅子から離れ、ドアを開ける

 そして、手をパッとあげて保健室から消えた




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