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第59話 バレンタイン

 

 姫の合格祝いも無事に終わり、数日が経つ

 そして、男なら誰しもが少し期待するイベントの日が来た


「はよ」

「智樹か…はよう」

「なんかテンション低いな」


 靴箱の前でテンション低いのは宗太だ

 自分の靴箱の前で何を躊躇っているのか扉を開けずに立っていた

 俺は靴と教科書以外入っていない靴箱の中から今日の授業の教科書を取って、ついでに宗太のも開けてあげる

 すると、ドサドサと可愛く包装された箱が5個落ちた


「………凄いな、相変わらず」


 去年は3つだったけど、今年は5つ

 どうしてこんなバカがモテるのか謎で仕方がない

 俺は落ちた箱を拾って宗太に渡してから教室に向かおうとすると廊下で早苗さんと出会った


「おはようございます」

「おはよう。今日時間あるかしら?」

「夜ですか?」

「お昼でもいいわよ。保健室に来てちょうだい」

「んじゃお昼に行きます」

「そう。それじゃ待ってるわ」


 それだけの会話で早苗さんは職員室の方へと歩いていく

 俺の予想ではたぶんチョコだろう。去年も早苗さんが姫の分も渡してくれた


 俺は2つゲットしたと思いながら教室の中に入ると少しいつもと違う雰囲気が漂っている

 何か男子勢がむんむんというか、キョロキョロしたり急に外に出たりしている


「なんかあんの?」


 俺より先に来ていた千鶴に話かけると大きなため息を吐いた


「今日バレンタインだからでしょ」

「いや、それは知ってるけど」

「まぁ智も期待してればいいんじゃない」

「お前からチョコをか?」

「バカじゃないの」

「だろうな」


 カバンの中から教科書を机の中に入れる

 そして、もう1度周りを見渡して見ると清水が教室の中に入ってきた

 どっちかって言うとなんか緊張している感じだけど、佐藤さんからチョコを貰ったんだろうか…

 そんなことを思っているとちょうど佐藤さんも教室の中に入ってきて、俺の前の自分の席に座った


「理紗ちゃん、おはよ~」

「うん、おはよう」

「はい、これ友チョコだよ」


 千鶴と佐藤さんが友チョコを渡しあっているのを見ていると2人が急にこっちを見てきた


「欲しいでしょ。チョコ」

「まぁもらえるなら」

「理紗ちゃん、あげなよ。私隼人の分しか作ってきてないから」

「え、え?」

「ここであげないと智は今日1個もチョコもらえないことになっちゃうよ」

「いや、もらえるから」

「お母さんからでしょ」

「いないし。別で住んでんだから」

「あ、そっか。じゃ誰から貰うの?もしかして2次元とか…」

「無い無い。小さい時にお世話になった人に」

「へぇ~私にはどうでもいいことだ」

「お前に話した俺がばかだった」


 ため息を吐きながら身体を向きを変え、カバンの中から小説を出して読む

 その間も周りでは友チョコを食べてる千鶴とかがいて、あま~いチョコの匂いが教室の中に充満していた。


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