第58話 合格発表
姫のツンツンした態度も今日はさすがに俺に出す余裕が無いらしい
今日は姫の高城学園合格発表日
俺と姫と早苗さんは校門の前に立って、人だかりができている掲示板の所を遠くから見る
「自分じゃないのに緊張しますね…」
「そうねぇ。私も少し緊張するわ」
「………」
姫に至っては声も出せないほど緊張しているらしい
手の中にある受験票を大切そうに持っているけど、その手は少し力が入っている
俺も合格発表の時は不安でいっぱいだったっけ
「姫、大丈夫だよ。姫なら合格できる」
「…そ、そうだよね…全部書いたし」
「うん。姫はできる子」
「う、うん…私はできる子」
「そう、できる子。姫は賢い、天才、そして最高に可愛い」
「智ちゃん、バカっぽい」
「酷い…」
でも、姫の緊張が少し緩んだっぽい
姫は少しだけ笑って、掲示板の方へ足を進める
俺と早苗さんもその後を追って一緒に掲示板を見る
姫の受験番号は10084だ
俺、姫、早苗さんは集中しながら姫の番号を探していると最初に見つけたのは早苗さんだった
「あ、あったわよ。お姫」
「………早苗さん、そういうのは見つけても口にしちゃ駄目です」
姫の方を見ると完全に怒っている感じだ
そりゃ自分が受けた試験の合格を自分より先に見つけられて、教えられたんだからムカつく
でも、すぐに合格したという現実が押し寄せてきて怒っていたのにニコニコし出し、俺に飛びついてきた
「智ちゃん!受かった!!」
「っと。だな、さすが姫だよ。おめでとう」
「うん!うん!」
ピョンピョン跳ねる姫を受け止める
これだけ喜ぶ姫も珍しいけど、横でニヤニヤしている早苗さんには少しムカッとする
でも、そんなことで姫の喜びを遮るのは嫌なので姫と一緒に喜びあった
「それにしても智ちゃんもお姫もそろそろ離れない?」
「え?あ…は、は、離れてよ!バカ!!!」
「ぃって!」
どこからそんな力が湧いてくるんだろう…
俺は姫にドンッと押されて尻もちを付く
そして、姫はすぐに早苗さんの所へ行き周囲の目から隠れる
「ってて…これからどうするんですか?」
「そうね、お姫のお祝いでもしましょうか」
「別にいらない」
「照れなくてもいいわよ。智ちゃんも作りたくてしょうがないって顔してるもの」
「してません」
「あら?作りたくないの?」
「姫のお祝いなら作りますよ」
「ほら、智ちゃんもこう言ってるし作ってもらいましょ」
早苗さんはニコニコしながら姫の背中を押して車の方へ歩いていく
俺は姫の合格を嬉しく思いながらメニューを考えて、2人の後ろを付いて行った




