第56話 入学試験
冬休みも無事に明け、あっという間に俺たちの通う高城学園の入学試験日になった
俺は早苗さんの頼みで早苗さんの家へと向かい、勝手に玄関を開けて大声で呼ぶ
「姫~迎えにきたぞ~」
「うるさい!人の玄関で叫ぶな!」
姫の部屋から大きな声で返事が返ってきた
今日は身体の調子が良いらしい
俺は玄関に座って姫の準備が整うのを待つ
10分ぐらいするとようやく準備ができたのか姫が部屋から中学の制服を着た姫が出てきた
「………」
「な、なに」
「姫もこうしてみると本当に中学生なんだなぁってさ」
「バカにしてるの?」
「いや、素直に可愛いって褒めてるんだよ」
普段、家に居る姫はパジャマかジャージかジーンズ系を履いている姫を見てるからなのかスカート姿の姫は新鮮に感じる
それに少し短くしていて、ハイニーソックスを履いている辺りはまさに漫画のツンデレがそのまま出てきたみたいだ
「そ、そんなじろじろ見ないでよ」
「体調は大丈夫?」
「大丈夫」
「まぁ何かあったら向こうに早苗さんいるし大丈夫だろうけど、しんどくなったら試験辞めてもいいから」
「それじゃ受からない」
「それでも」
「いいの!今日は絶対大丈夫だから!」
姫がここまで意地になるのも珍しいけど、そこまで高城学園に行きたいんだろう
早苗さんもいるから他の高校より安心だし、姫の頭なら他の高校は物足りないだろうから
俺は玄関に置かれている車椅子を広げて、姫に乗るように言うと「いらない」と言いそのまま家を出た
それから俺たちは駅に向かって高城学園がある駅まで乗り、学校の前まで歩く
しかし、駅から学校まではキツイ坂になっているため、体力のない姫には少し辛い
「ふぅ…はぁ…はぁ…」
「大丈夫?」
「大丈夫!」
「ゆっくりでいいから。開始時間までまだまだあるし」
季節は2月
まだまだ寒い風が吹く中ではいくら体調が良い姫でもキツイ
姫は白い息を吐きながらゆっくりゆっくり歩き、やっとの思いで校門前まで来た
「お疲れ様」
「…はぁ…はぁ…ここが智ちゃんが通ってる所…」
「姫も来年来る所だよ」
「…うん」
「ほら、試験会場まで行こう」
「うん…」
校門をくぐるとさすがの姫も緊張し出してきたのか、辺りをキョロキョロしては目をギュッと瞑ったりして緊張をほぐそうとしている
姫の試験会場となっているのは俺たちが普段使っている教室で、偶然にも俺の席が姫の席になっていた
「姫は俺の席で受験だな」
「…智ちゃんの」
「大丈夫だよ、綺麗に使ってるから」
「……うん」
試験前に机に落書きしたのは全部綺麗に消したし、机の中に入れている物も全部靴箱の中に入れている
変なものは中に入っていないはずだ
俺は姫に「頑張れ」と言って教室の中に入って行くのを見守る
そして、俺は保健室へと向かって歩いた
「こんにちわ、早苗さん」
「ようこそ、愛の巣へ」
「姫、調子いいみたいですよ」
「やっぱり昨日のカツ丼がよかったのね」
早苗さんはウンウンと頷きながら何かの書類に書いていく
普通は保健室でも体調の悪い人が試験を受けることがあるのだが、今回そういう人は応接部屋で行われている。理由はここの保健室が離れすぎているためだ
そして、早苗さんがここに居る理由は姫のため
もし、姫の体調が悪くなった場合、ここに運ばれるようになっている
もちろん、普通の生徒ならこんな特別扱いは無理だが、そこは早苗さん曰く「私は先生方に信頼されているの」らしい
これだけの顔なら男性教師には人気だし、美人だからって飾ってないし女性教師にも人気だろう
「それにしても…智ちゃんってよくここ通ったわね」
「あ、バカにしてます?」
「そういうわけじゃないわ。ただ今年の進学組の受験者数が153人よ?そこから1クラスに絞ってるんだから」
「俺らの時はもっと少なかったですよ。40人ぐらいだったかな」
「智ちゃんの時の受験者数は78人よ。そこから25人に絞られてるんだからビックリね」
「そ、そんなにいたんですか?」
「ええ。合格者数は31人ね、だから6人は他の高校行っちゃったみたい」
「へ、へぇ…」
まさかそんなに受験者数がいたことにビックリしたが、もっとビックリしたのがその中に宗太がいたことだ…
あんなバカな癖にどうやって進学組に入ったんだろうか…ここは一般入試しかないから内申は関係ない…ということは裏金だろうか…
そんなバカなことを考えながら俺は早苗さんと話しながら姫の試験が終わるのを待った




