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第55話 死闘の先に。

 

 文化祭

 それは学生が初めて自分たちが考えた商品でお客からお金を取り、他クラスより如何にお客を引き寄せられるかという商売戦争が行われるイベントだ

 もちろん、俺たちもその戦場へ立ち向かい、勝者としてここの打ち上げ会場にいる


「では、見事利益を出したとしてカンパーイ!!!」


 宗太がみんなの代表として、カラオケの舞台の上で乾杯をする

 俺たちの文化祭はおでんを作った

 そのおでんが普通なら買わないだろう…という値段で次々と売れていき、1日目、2日目と大盛況だった

 おでん自体はかなり美味しいものに仕上がっているし、季節的にも温かい物が欲しい季節だ

 だから、あんなに大盛況だったんだろう


 俺は端っこに座りながら次々と歌う人を見て、ポテトをつまむ

 20人近くもいると中々歌うタイミングが見つからない上にさっきから宗太が歌いまくっているため、他の人に回らないのが現状

 もちろん、千鶴も歌いまくっている

 隼人が帰ってくるまでずっと仮の彼氏とカラオケで時間を潰していただけあって、さすがの歌唱力

 みんなも千鶴の歌が聞きたくて曲を入れているすらある


「めっちゃほーりでー」


 ただ歌う曲が古いのはなんでだろうか…

 今の音楽界に関しては分からないから俺は助かるが千鶴自身、新しい曲を知らないんだろうか?

 不思議に思いながらポテトをつまんでいると、曲を歌い終わった宗太が俺の横に座った


「おつかれさん」

「いやぁ…歌った歌った。智樹は歌わないのか?」

「別に今はいい」

「ふ~ん…んじゃちょっと時間くれるか?」

「何?」

「いや、ここじゃ」

「了解」


 俺と宗太は席を立ち、出口の方へ行こうとすると歌っている千鶴がマイク越しに話かけてきた


「どこ行くの?智」

「あ?連れション」

「あんたは女子か」


 部屋の中が爆笑の渦になりながらも俺たちは部屋を出て、ロビーの方へ向かう


「で、何?」

「いや、木嶋さんの事なんだけど」

「ふ~ん」

「やっぱり俺…諦めるわ…。あの隼人って奴に勝てる気しないもん…

 木嶋さん、あの人と会ってから幸せそうだし…」

「そうですか」

「…もう少し頑張れとか言わないのか?」

「最初に言ったじゃん。千鶴は止めておいた方が良いって」

「……でも、ちょっとでも木嶋さんのこと好きになってよかったよ。やっぱり人を好きになるって大切だって思ったし」

「青春してんなぁ」

「だろ?今度付き合う人は本気で俺が好きになった人にするわ」

「そりゃ頑張ってください。んじゃ部屋戻るか」

「ああ。あ、そういえば智樹はどうなんだ?」

「何が?」

「好きな人とか居ないのか?」

「今はいないな」

「ふ~ん…理紗とかどうなんだ?」

「佐藤さん?あ~………清水が狙ってるだろ」


 俺は素直に答えたつもりだったが宗太が欲しい答えでは無かったらしく、ため息を吐かれ肩に手を置かれる


「んじゃさ、もし清水が狙って無かったらお前はどうするわけ?」

「はぁ?なんでそんなこと?」

「んじゃもし、もしものことだぞ?もし、理紗がお前に告白したらどうする?」

「それ聞いて何になるんだよ…」

「気になって寝れないんだもん」

「はぁ…いいんじゃない?佐藤さん可愛いし性格も良いし。ただまぁ今は清水を応援するけどな」

「……ま、今はそうか…あ~~~青春して~」


 宗太はバカみたいに大きな声で叫びながら部屋の中に入っていく

 俺もその後を追うように中に入って、思わず佐藤さんの方に目が行ってしまう

 そして、ちょうど佐藤さんと目が合ってしまい、すぐに目を反らす

 あのバカが変なことを言うからちょっと意識してしまったみたいだ。俺は近くにいたクラスメイトに「用事ができた」と言って部屋から出て、肌寒い風で頭を冷やしながら家へと向かった



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