第53話 テスト用紙。
「さぁ見せてもらうわよ」
「い、嫌!絶対嫌!」
「お姫ちゃんのカバンはそれかなぁ~?」
「く、来るな!来るな!」
「いっしししし。抵抗は無駄わぁ…えいっ!」
「あっ!!!ダメ、み、見ないで!!」
この親子は本当に仲が良い…いや、よすぎるぐらいだ
姫が必死でテスト用紙の入ったカバンを守ろうとしたが元々力のあまりない姫は簡単に取られる
でも、姫は必死で抵抗を見せようと車椅子から立ち上がり、早苗さんからカバンを取ろうと頑張っていた
「返して!返してってば!!」
「むふふふ~、このチャックを開ければぁ」
「や、や、見ないでってば!」
「じゃじゃ~ん!お姫のテスト用紙~」
「見るなぁぁぁ!!!」
早苗さんはカバンの中から数枚の紙を取って俺の方へ見せびらかしてくる
それを姫は必至で取り返そうと頑張るけど、疲れが出始めた
「か、返してってば!かえ…げほっげほっ」
「むふふふふ~。それじゃさっそく…」
「早苗さん、それ以上姫で遊ばないでください。ほら、姫も落ち着いて」
「見るなぁ!!!」
「わかった。わかったから落ち着こうな?ほら、まず座ろう」
バタバタと抵抗を見せた姫だが、無理やり車椅子へ座らせる
姫は俺を睨みながらもかなり苦しそうに息が切れているから、見ているこっちがしんどくなりそうだ
俺は楽しそうに姫のテスト用紙を見ている早苗さんから用紙を奪い取り、カバンの中に入れて姫に返す
「ああ~…せっかく取ったのに」
「嫌だって言ってるのに見るのはダメです」
「私はお姫の母親よ」
「母親でもです。本人が嫌がってるのに見たってしょうがないじゃないですか…それに見られて恥ずかしい点数でも無いんだし…」
姫のことだ。どうせ80点とかそこらへんだろう
俺なんてそんな点数取れば舞い上がる所だけど、常に95以上の姫にとっちゃ90以下なんて恥ずかしいラインだ。小学校なんて90点で恥ずかしがってたぐらいだし…
「まぁ数学90、英語90、国語85、理科80で恥ずかしがっちゃうお姫も可愛いからいいわ」
「うぅぅ…もうお母さんなんて大っきらい…」
「どうしよう、智ちゃん。嫌われちゃったわ」
「知りませんよ…。姫、別に恥ずかしがる点数じゃないって。俺なんてそんな点数取ったらすげぇ嬉しくなるもん」
「智ちゃんは本気でやろうとしてないからでしょ」
「うっ…ちょっと傷ついた…」
自分では真面目にしているつもりなんだけど…
「そうねぇ、智ちゃんもちゃんと勉強すればできる子よね」
「…もう俺の話はやめてください。マジで凹みますから」
「で、でも、智ちゃんは優しいから…それだけは良いと思う」
「………」
「………」
「な、何…2人して私の顔見て…」
姫は俺と早苗さんが黙ってしまったのが気に入らないのか、少しだけ顔を赤くしながらもむっとした表情で俺たちの方を見てくる
そして、俺と早苗さんは顔を見合わせ、お互いの目を見ると同じ事を思っていると確信した
姫がデレた…
それからの姫はツンツンの方になってしまい、何故か俺が姫に説教を受ける・早苗さんは面白がりながらお酒を飲み、たまに姫にちょっかいを出して時間が過ぎていった




