第52話 完治。
月曜日
佐藤さんは風邪を治して学校に来た
「おはよう、佐藤さん」
「あはよう。あの、昨日はありがとうございました」
「ん?あ~、いいよ。ほとんど千鶴がしたんだからお礼なら千鶴にしてやって」
「もちろん。でも昨日の飲み物のお金とかは」
「お、おはよう。佐藤」
「……おはよう、清水君」
清水がオドオドしながら佐藤さんに挨拶をしにきた
結構清水なりに頑張っているみたいだ
「そういえば、清水も佐藤さんも同じ長渡駅なんだな。ってことは同じ中学?」
「え?」
「そうだけど…智樹はなんで佐藤さんの家知ってるの?」
「千鶴が言ってたから。でも、同じ中学なのになんで下の名前で呼ばないんだ?」
「え?えっと…僕と佐藤は違うクラスだったから」
「ふ~ん。まぁ別にどうでもいいんだけどさ。とりあえず清水はその重そうなカバンを自分の席に置いてこれば?」
「あ、うん。じゃ」
あいつのカバンはいつもパンパンだけど何が入っているんだろうか…
俺は本当に不思議で堪らなかったが、途中で佐藤さんとの会話が切れたため話を戻す
「えっと…話は戻るけど、あれは別にいいよ。いつもノート見せてもらってるお礼だと思って」
「で、でも…」
「んじゃ来年のバレンタインでもチョコちょうだい。それでいいから」
「え!?…あ、うん。絶対に」
「ありがとう。千鶴は俺に絶対に渡さない奴だからさ。毎年チョコ2個しかもらえないの」
「2個も?」
「親戚の人とその娘からね。一緒に住んでた時があったから」
「そ、そうなんだ……えっと…あの…」
「ん?」
「その…へ、変なこと聞いてもいいですか?」
「答えれるモノなら」
「えっと…その…」
佐藤さんは言おうか言わまいかと悩んでいて目がキョロキョロしている
何か恥ずかしいことでも聞きたいんだろうか?俺のスリーサイズとか…は無いな…
少しの間、佐藤さんが何を言うか待っているとHRの始まるチャイムが鳴り、先生が教室の中に入ってくる
すると、佐藤さんは小さなため息を付いて俺に謝って前を向いた
放課後、俺はなんとなく保健室へと足を運ぶ
特に理由は無いが家に帰っても隼人がいるだけだし、少し早苗さんに会ってないと思ったからだ
「こんばんわ~」
「あら、智ちゃん。最近調子はどう?」
「まぁまぁです」
「そう、よかった。それでどうしたの?放課後に来るなんて…あ、恋の悩み?」
「あっても早苗さんには相談しないので安心してください」
「あら残念。てっきり私のことが好きだと思ってたのに」
「勘弁してください。それより相変わらず暇なんですか?」
「まぁやることは全部やったから暇ね。部活が終わるまで帰れないし」
「そうですか」
「そうだわ、智ちゃん今日私の家に来ない?」
「はい?」
「今日、姫のテストが返ってくる日なのよ」
「だから?」
「あの子の点数見てあげて。きっと恥ずかしがるわ」
「………その恥ずかしがる姿が見たいんですね…」
「そう。可愛いわよ?あの子の顔を真っ赤にして抵抗する姿」
「…親としてその発言は危険すぎます」
「で?どうなの?智ちゃんは暇なの?」
「まぁ暇と言えば暇ですけど…」
「なら決定ね。部活が終わるまで寝てていいわよ」
「襲わないでくださいよ」
「襲ってほしいなら襲うわよ?」
「勘弁してください。では、おやすみなさい」
俺は保健室のベッドに身体を埋めて、警戒しながらも深い眠りの中へと入って行った




