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第48話 パフパフ。

 

 修学旅行を途中で帰ってきてからもう4日経った。千鶴たちも昨日帰ってきた所だろう

 俺は隼人と朝ごはんを食べた後、暇つぶしにゲームをする

 隼人は俺の後ろでカメラの掃除をしているのか、さっきからパフパフと何が鳴っている

 そのパフパフの音が妙に気になった


「なぁ、さっきから何がパフパフ鳴ってるわけ?」

「パフパフ?……あ~これか?」


 隼人は自転車に付いているパフっぱフッとなる奴みたいな奴を見せてくる

 おそらく噴き出す風で埃を取るんだろう。俺は納得して、ゲームに目を戻そうとするとピンポーンとインターホンが家の中に響いた

 俺はゲームのスタートボタンを押して、一時停止をしてから玄関に向かう


「はいはい、今出ますよ~」

「「おはよう、智ちゃん」」

「早苗さんに姫?なんで?」

「なんで?って私が智ちゃんの家に来る予定があったからこの子も連れて来たのよ」

「いや、早苗さんが家に来る予定なんて聞いてないですよ」

「まぁまぁ、美人2人が来たんだから中に入れてちょうだい」

「別に良いですけど…隼人~~ちょっと来い~」


 俺は大声で隼人を玄関に来させる

 姫の乗る車椅子は軽いとはいえ姫の体重を合わせれば30キロ後半ある

 それを1人で廊下に持ち上げるのは無理だ


「もうちょいで完璧に掃除が終わりそうだったの……ど、どなたさん?」

「俺の親戚。この車椅子上げるから手伝え。お前後ろ」

「あ、ああ」


 俺と隼人は姫が乗る車椅子を廊下に上げると、姫は本当に耳を澄ませていないと聞こえないような小さい声で「ありがとう」と言って、さっさとリビングの中に入って行く

 すると隼人は頭の上に?が出ているような顔で俺の方を見てきた


「かなりの人見知り屋なんだ、勘弁してやって」

「いや、それは別に良いんだけど…誰?」

「俺の親戚」

「俺知らねぇよ」

「なんでお前が俺の親戚知ってんだよ…。てか、早苗さんとは一度電話してるだろ、お前」

「電話?…あ~あ~、あの人か!声が超綺麗だと思ってたけど、本当に綺麗じゃん!それじゃあの子は?」

「早苗さんの娘。名前は鞠乃だよ」

「でも、お前あの子の事を姫って呼んでたよな?」

「まぁいいだろ」


 俺はリビングの中に入り、テーブルの椅子を1つ退かす

 すると、姫はそこに車椅子を移動させ、その横に早苗さんが座る

 俺はお湯を沸かしながら話を聞く


「それでどうして今日はここに?」

「いやぁ…あのあと智ちゃんは元気かなぁって思ってね」

「この通り元気ですよ」

「そうね」


 湧いたお湯を入れてできたインスタントコーヒーを早苗さんの前に置く

 そして、もう1つはカメラの掃除をしている隼人のいる所に置いておく


「姫はこっち」


 冷蔵庫から出したオレンジジュースをコップの中に入れて、姫に渡す


「あ、ありがと…」


 まだ隼人が居るから緊張しているのか声が小さく、ものすごくチビチビとオレンジジュースを飲んでいて、隼人が時々こっちを見るたびにビクっと姫は震えていて、なんか可愛い


「そうそう、智ちゃんのおじ様から電話があったわよ。そろそろ帰るらしいわ」

「そうですか」

「あら?それだけ?」

「どんな反応が欲しかったですか?」

「ぱ、パパが!!!って感じかしら」

「無いですね。てか、それだけのためにここに来たんですか?」

「そんなわけないでしょ。智ちゃんためよ」

「俺の?」

「そう、智ちゃんの誕生日そろそろじゃない?」

「はい?」


 今日は10月をちょっと過ぎた日

 俺の誕生日は2月28日だ

 もう少しというかまだまだと言ったほうがいい

 でも、否定するのがめんどくさいからそのまま話を合わせることにした


「俺の誕生日がどうかしたんですか?」

「プレゼントをしようと思うの」

「それ普通言いませんよね?」

「だって、私たちが考えても智ちゃんが欲しいものなんてわからないじゃない?まぁ私は自分の身体でも良いんだけど」

「それだけは勘弁してほしいですね」

「でしょ?お姫のはどう?」

「俺が殺されそうです」


姫の方を見ると本気で俺を殺せるんじゃないか?ってぐらい顔を赤らめながら睨んでくる

言ったのは早苗さんなのに…


「てか、別に誕生日プレゼントなんていらないですよ?」

「ん~…でも私としては何かあげたいのよねぇ。…そうだ、私たちの家に住む?」

「はい?」

「誕生日プレゼントは私たちの家に住む権」


 それはどっちかって言うと罰ゲームになるんじゃないだろうか…

 俺は姫の方を見ると目があってビクっとされた。もしかしてこの提案をしたのは姫なのだろうか…


「早苗さん、悪いですけど俺はこの家気に入ってるので」

「残念ねぇ、お姫」

「な、なんで私に振るの」

「だって、お姫が言っ」

「わーわーわー」


 やっぱり姫が提案したらしい

 俺はコーヒーを飲みながら姫の方を見るとキッとまた睨まれてしまった

 早苗さんはその表情を見ながらニコニコして、如何にも可愛いでしょ?と言いたげだ

 俺は一応ニコッとだけ笑って無言の返事をしておく


「まっ、智ちゃんにも誕生日を祝ってくれそうな子がいるだろうし私たちが出る幕は無いのね」

「さぁ?そんなのいるんですかね?」

「いるでしょ。智ちゃんって私たち以外には良い人だから」

「…それは褒め言葉として受け取っておきます」

「うふふ、それじゃお姫帰りましょうか」

「え?」

「あら?お姫はまだ智ちゃんと居たいみたいよ」

「ち、違う!誰が智ちゃんなんか」

「なんかって言われた…」

「や、ち、違…うぅぅ…」

「うふふ、それじゃ帰るわ」

「はい、今度来る時は連絡ください」

「したら何時でも行っていいのね?」

「俺が暇であれば歓迎しますよ」


 俺は席を立って、姫の車椅子を押す

 そして、帰りも隼人を呼び、下してから早苗さんの車まで押していく

 その間、姫はずっと黙ったまま、こっちを見ようともしなかった




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