第28話 大浴場
「智、ここ教えて」
「自分でやれ」
今日も勉強尽くめ
朝の9時から夕方の5時まで昼食の時間を抜けば、7時間ちょっとはやっているだろう
あと2時間もすれば夕食が始まり、1時間休憩し、そしてもう1時間勉強。
最後の1時間は今日中にやらないといけない課題をやる時間なので、ちゃんと頑張って勉強していれば休憩時間となる
俺は今のところ、すべての課題を済ませていて、この調子なら最後の1時間はやらなくて済みそうだ
「智、ここ…」
「選択問題ぐらい勘でやれ」
「間違ってたら怒られるじゃん」
「はぁ…そこA、次C、次D、次Aな」
「え、え?A、C、D、B?」
「最後Aな」
「おっけ。さんきゅ」
「どういたしまして」
こんな簡単な問題で躓く千鶴は今日寝られるんだろうか…
今日は先生も夜まできっちり付き合うとか言っていたから1時間じゃ済まないかもしれない
「智、ここは?」
「お前なぁ…佐藤さんに教えてもらえ」
「薄情者…理紗ちゃ~ん」
これで少しは静かになる…
腕を伸ばし、もう一回集中しようとすると宗太がチラチラ見てくるのを感じる
なんとなく目を合わせてみると向こうはビックリしたように目線を外した
それからは時々、宗太のいるところから視線を感じたが目線を合わさずに過ごす
そして、夕食もしっかりと食べ、最後の勉強時間が始まった
「さて、お前ら今日の課題ぐらいはしっかりとやりとげろよ!特に!木島と神門!昨日もお前らは最後まで残ってたんだからな!しっかりやれ!」
「うぅぅ~…いじめだよぉ…」
横ですでに泣きそうな(嘘泣き)顔で先生の方に媚を売ろうとしているが先生には効かず、むしろ「さっさとやれ!」を怒られていた
俺はそれを横目に先生の所へ歩いていき、話かける
「せんせ~、今日の課題全部終わってんですけど」
「お、そうなのか?見せてみろ」
俺はドサッと先生の前に今日の全課題を出す
先生はそれをぺらぺらと捲っていく
周りの皆は俺の行動に驚きながらも、早く休みたい一心で自分の残った課題を終わらせていた
「ん~…本当に終わってるなぁ…まぁいいだろ、祠堂、休んでいいぞ」
「ど~も」
俺は自分の筆記用具をカバンの中にかたずけていると横にいる千鶴が睨んできた
「なんだよ」
「これ」
「何?課題は自分でやれよ」
「あはははは」
「んじゃ頑張って」
「このバカやろー!」
「木島!ちゃんとやれ!!」
「うぅぅ…はぃ…」
やっぱり千鶴はバカなんだろうか…
俺はそんなことを思いながら自分達の部屋に戻り、先に1人で大浴場へ向かう
この旅館は俺たち以外いないのか大浴場は俺しかおらず、広いお風呂を独り占め
これほど有意義な時間は無いだろう
しばらく、ゆっくり浸かり、あまりの気持ちよさに鼻唄まで出始めた頃、バタン!とお風呂の扉が開く
「げ、宗太…」
宗太は俺と目が合うと視線を外してきた
目線外されるのはどうでもいいんだけど、自分の鼻唄まで聞かれていたかと思うと顔が赤くなってくる
「課題終わったのか?」
「ああ…」
「そ、んじゃ俺は出るかなっと」
「あ、智樹…ちょっといいか?」
「んあ?別にいいけど、何?」
一旦出ようとしたのを、再びお風呂に浸かり宗太の方へ身体を向ける
宗太は髪を洗いながら話し始めた
「……この前言ったこと」
「この前?」
「お前と木島さんが犯…」
「おぉ!宗太に祠堂!もう入ってんのかよ!ずりーぞ!!!」
宗太が話そうとすると他のクラスメイト達が課題を終わらしたのか次々と入ってくる
宗太は露骨に嫌な顔をして入ってくるやつらを見るが、俺が風呂場から出ると周りの雰囲気に飲まれ元の宗太に戻り、一緒にはしゃぎ出した




